インフラ海外拠点イラク

英語圏大手メディアの自衛隊報道 4

(報告:常岡千恵子)


 そして、太田発言の数日後に、『シドニー・モーニング・ヘラルド』が
世論調査を発表。以下にその要約を紹介する。

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『シドニー・モーニング・ヘラルド』 2005年3月16日付
     −ハワード(首相)、不人気な決定も必要だと語る



  連立政権の支持率が野党労働党のそれを下回った結果を受けて、ハワー
ド首相は、イラクへのオーストラリア軍増派決定が不人気だったことと、
経済の不調が政権に打撃を与えたと認めた。

  選挙後5ヵ月を経た世論調査では、労働党支持率が52%、連立政権支
持率が48%。

  この調査は、オーストラリア軍450人のイラク増派を決定した後に行
われ、この増派に関しては、賛成が37%、反対が55%であった。

  ハワード首相は、イラク増派はしないという公約はしていないと語り、
状況が変わったと述べた。
  彼は、この決定が不人気で、世論調査に反映されたことを理解している
が、「政府は、時には不人気な決定をしなければならない」と語った。

  野党の指導者は、「オーストラリア国民は、選挙前の公約をたがえるよ
うな政府に反対するのだ」と述べた。

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  太田群長の発言が、なんと、ハワード政権に実害を及ぼしてしまったの
だ!
  同じ日に配信されたAAPの報道によれば、連立政権支持率が野党支持
率を下回ったのは、7ヵ月ぶりだという。

  繰り返すが、ハワード首相は、自国民の反対を押しきってまで、小泉首
相の依頼に応じ、オーストラリア軍増派を決定したのである。
  たとえ日本との自由貿易協定締結の下心があったとしても、もともと日
本の軍隊に対するアレルギーが根強い自国民の意に反する決断を下す行
為は、それなりの冒険だったはずだ。

  それに、外交の基本はギブ・アンド・テイク、外国が好意でタダで日本
にサービスしてくれることは、あり得ない。
  外国が日本のために動いてくれる時は、何かしら下心があって当然なの
だ。
  そもそも日本も、日米同盟強化のために、自衛隊のサマワ派兵を行って
いるのだから。

  にもかかわらず、相手国の内情も察さずに、不用意な発言を漏らしてし
まった太田群長は、日本の外交オンチぶりを曝け出しているといえよう。

 たとえオーストラリア軍が宿営地の周囲に張り付かなくても、治安維持
を担当してもらうということは、守ってもらうということだ。
 他国軍に治安維持を担当してもらわなければ、自衛隊は活動できないの
である。

 それを理解していれば、もう少し別の言い方で話せたはずだが、どうや
ら自衛隊の諸君は、大局的な視点に欠けるようである。

  太田群長の例を見てもわかるように、日本は、情報収集・分析・発信に
おいて、決定的に遅れている。
 とくに発信においては、まるで子供が意地を張るように、一方的でトン
チンカンなことが多く、これを欧米式の"主張"だと勘違いしている傾向
も見られる。
 
  こんな調子で国連安保理常任理事国入りの野心を抱くとは、お笑い種も
いいところ。
 もっと洞察力をつけ、物事が円滑に進むように、うまく立ち回れなけれ
ば、とてもじゃないが、常任理事国は務まらない。
これでは、自衛隊がオーストラリア国民の顰蹙を買っても、文句は言え
ない。

  自衛隊の諸君、軍事の基本とは、まず相手を知ることなり! 
  この失敗を肝に銘じ、国際化に向けて大いに精進されたし!!

  現代においては、情報戦も重要戦略のひとつなり。また、国際平和業務
の指揮官たる者、よき外交官たらねばならぬ。
  ベーカー前駐日米大使を手本に、決して幼稚な失言を吐くことなく、
しなやかにメディア戦略に取り組むべし!

  ベーカー前駐日米大使の巧みな大人の外交辞令は、こちら↓
        http://www.higashi-nagasaki.com/g_a/G53-102_5.html
        http://www.higashi-nagasaki.com/c/C2005_03_4.html
        http://www.higashi-nagasaki.com/c/C2005_03_5.html

  ついでに、米政府の沖ノ鳥島や尖閣諸島に対する本音は、こちら↓
    http://www.higashi-nagasaki.com/c/C2005_03_8.html
    http://www.higashi-nagasaki.com/c/C2005_03_9.html


  それにしても、他国の政権に被害を与えた、自衛隊の"舌禍事件"を隠
蔽する日本の大手メディアは、不気味としか言いようがない。

  もし、オーストラリア国民が日本に対して不信感を抱き、反発を表した
としても、日本国民には何のことだかサッパリわからず、日本国民の間に
感情的な被害妄想が広がるだけである。
  これでは、"いつか来た道"と何らかわりはないではないか!!

  たとえサマワ取材が不可能でも、各社オーストラリアに支局を置いてい
るはずだから、知らぬ存ぜぬの言い訳は成り立たない。

  どうやら、日本では、自衛隊の海外活動に対する批判は、タブーとなっ
ているようだ。
 これも、日本の"国連安保理常任理事国入り"に関係しているからかも
しれないが、国連安保理常任理事国には、世界各国を相手にリーダーシッ
プを取り、かつ責任を果たす役割が課せられている。

 政治的リスクを冒して自衛隊に手を差し伸べた友好国に対し、迷惑かけ
て知らんぷり、では済まされない。

 民主主義国家のメディアの使命は、政府の失敗を伝え、主権者の国民に
適切な判断材料を提供することなのだが、日本では事情が違うようだ。

  失敗の隠蔽ばかりに執着するセコイ日本に、はたして常任理事国の資格
があるのだろうか?




続く