。。。。。。。。。。。。。
『ワシントン・ポスト』 2005年9月13日付社説
−日本の新しい政治
政治ショーとしては、日曜日の日本の選挙は、どの国の基準でも目覚
しいものであろうが、とくに、政治が味付けされていないご飯と同じぐ
らい地味になりがちな日本で、このようなことが起こったことは、印象
深い。
小泉氏は、映画スターのようなルックスと、多くのテレビ映えする女
性を含む候補のチームを出馬させた手腕と、政治的ギャンブルに賭ける
気迫のおかげで、圧勝した。
だが、日本の長期的プロジェクトである、競争力と多元性を持つ政治
の育成に、どれぐらい利益をもたらすかについては、明らかではない。
プラスの面として、小泉氏は、有権者へのアピールで、自民党の派閥
に象徴される既得権益に勝てることを示した。
マイナスの面は、小泉氏が1年で辞任し、派閥が復活するかもしれな
いということだ。そして、日曜日の選挙は、民主党に大きな打撃を与え
た。
今、日本が事実上の一党支配政治に戻るリスクがある。
経済改革の行く末も、同様に不確実だ。
小泉氏が、郵便貯金改革を成立させることはほぼ確実だ。
この無駄なシステムを廃止することは、大きな一歩で、日本の株式市
場が小泉氏の勝利にこう反応を示しているのも、驚くにはあたらない。
だが、首相の提案した改革は、郵政システムをゆっくりとしか変えな
い。
彼が、日本の医療改革や年金改革を含む、ほかの経済課題に取り組む
かどうかは、誰にもわからない。
最後に、日曜日の選挙は、日本のさらなる軍事的積極性への布石にな
る可能性があり、米国はこれを複雑な心境で見定めるべきである。
すでに小泉氏は、イラク派兵が行えるように、日本の平和憲法の解釈
を変えた。
彼は、ブッシュ政権のミサイル防衛開発に参加するために、日本が長
年禁止してきた武器輸出を実質的に解禁し、中国の軍備増強に対して強
硬なスタンスを取ってきた。
日本の経済規模と、日本がグローバルかつ地域的な安全保障により大
きな貢献をすべきことを考えると、これらの政策自体は、歓迎すべきも
のだ。
だが、小泉氏は同時に、1930年代と1940年代の日本の侵略の
シンボルから離れることを拒み、近隣諸国、とくに中国に、日本の新た
な積極性に対する懸念を抱かせている。
小泉氏が政治上の華やかなギャンブルを行うことは、世界でもっとも
緊張した地域のひとつにおける不安定なバランスでギャンブルを行う
こととは、別の話である。
。。。。。。。。。。。。。
この社説は、2005年9月14日付『日本経済新聞』朝刊8面で簡
単な要旨が紹介されているが、なぜか一番最後の、日本の軍国化を懸念
する部分が、スッポリ抜け落ちている。
編集に"基準も判断もない"と主張する読者広報室の言葉とは裏腹に、
やはり恣意的なものを感じざるを得ない。
そして同じく2005年9月13日付『ニューヨーク・タイムズ』も、
『ワシントン・ポスト』同様、日本の軍国化への危惧を表す社説を掲げ
た。
すなわち、米二大有力紙が、そろって日本の軍国化への懸念を表明し
たのである。
以下にその要旨をご紹介する。
。。。。。。。。。。。。。
『ニューヨーク・タイムズ』 2005年9月13日付社説
−日本の選挙における、いいこと一点
日本の有権者が、政治指導者に、日曜日に小泉首相に与えたような、
徹底した個人的勝利を与えることは、まれである。
残念なことに、日本郵政公社の金融サイドの民営化は、小泉氏の離任
後10年以上も経た、2017年まで予定されていない。
そして、日本の改革を目指す民主党は、改革を促進する役目を果たし
たかもしれなかったにもかかわらず、強い野党になるという希望を持ち
ながら、この選挙で壊滅したようだ。
12日間の選挙運動期間中、郵政民営化が事実上、唯一の争点だった。
これが、小泉氏に、日本の伝統である軍国主義的ナショナリズムを無
分別に採用する道を与えた。
彼が軍国主義者が祭られている神社を参拝し、より積極的な軍事政策
を支持したことは、当然ながらアジアの世論を警戒させた。
中国などのナショナリストな民衆扇動者が、彼の行動を利用して、暴
力的な反日感情を煽り立てた。
日本は、郵政民営化や二大政党制民主主義に加え、近隣諸国や貿易パ
ートナーとの、より建設的な関係を必要としている。
日曜日の選挙では、最初の項目だけが前進した。
。。。。。。。。。。。。。
日本政府が日本の"国際的な役割"を推進している今、日本の大手メ
ディアは、現政権にとって都合のよい、そして国民にとって心地よい海
外情報ばかりを伝える傾向を加速させている。
だが、このままいくと、あとで大きなしっぺ返しに見舞われる危険性
が高くなる。
その最大の被害者となるのが、われわれ国民であることは、60年前
に実証済みである。
日本は戦後、サンフランシスコ条約で東京裁判を受諾することを約束
し、ようやく国際社会に復帰できたという経緯があり、その東京裁判を
否定する靖国神社を首相が参拝するということは、日本政府が連合国
48カ国に対して、サンフランシスコ条約を取り消すというシグナルを
発してしまうことになるのだ。
このため、以前ご報告したように、小泉首相の靖国神社参拝は、欧米
メディアも厳しく批判している。
海外英文メディアの靖国参拝批判のおさらい↓
・海外メディアの"靖国神社"報道1
・海外メディアの"靖国神社"報道2
・海外メディアの"靖国神社"報道3
・海外メディアの"靖国神社"報道4
・海外メディアの"靖国神社"報道5
・海外メディアの"靖国神社"報道6
・海外メディアの"靖国神社"報道7
・海外メディアの"靖国神社"報道8
さらに、確かに米国は中国を警戒しているものの、中国との戦争を望
んでいるわけではない。
イラクに加え、これ以上厄介な問題を抱えたくないはずである。
最近の米中の動きをみると、2005年9月には、ファロン米太平洋
軍司令官が訪中し、ニューヨークで米中首脳会談が行われ、2005年
10月にはラムズフェルド米国防長官、2005年11月にはブッシュ
米大統領が訪中する見通しだ。
なんのことはない、米中は、けっこうよろしくやっているのである。
つまり、いつまでも子どものように意地を張り続けると、65年前み
たいに、日本はまたまた、つまはじきにされてしまうかも。
小泉首相よ、これでもガリレオを見習って、"それでも靖国を参拝す
る"?
|