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英語圏大手メディアの自衛隊報道 5

(報告:常岡千恵子)


 2005年秋に在日米軍再編の中間報告とりまとめが予定されてい
るせいか、最近また自衛隊の報道も増えてきた。

 この再編で、日米一体化の加速が予想されるが、実は自衛隊の訓練は、
一足先にその方向へ進んでいるようだ。
 というわけで、今回は、2005年春からのちょっと気になる自衛隊
の訓練についての米メディアの報道をご紹介したい。

 まずは、緊張高まる東シナ海の上空における、日米共同訓練の報道の
要旨をお伝えする。

。。。。。。。。。。。。。

AP通信(米)             2005年5月3日配信
  −内外の懸念にもかかわらず、より強力な軍事的同盟国になる日本 


<東シナ海上空にて>  外洋の25000フィート上空で、翼に日の丸をつけた4機の日本の F15が、米空軍の空中給油機に接近し、バレエのようなデリケートな 動きをする。  1機ずつ空中給油機の給油ブームの稼動範囲内に入り、その位置で停 止飛行し、それから急降下して消えていく。  米軍のプランナーは、これが(日米の)未来像だと述べた。 すなわち、海外展開を準備し、情勢不安の地域の平和維持の責務をわ かちあう、信頼できる日本の盟友との、深く絡み合った関係、というこ とだ。  米軍のクルーにとっては、空中給油訓練は、日常である。  ブーム・オペレーターのマイク・ウェブスターは、「技術レベルは同 じ、機体も同じ。基本的に、われわれの仲間と訓練しているのと同じで す」と語り、唯一の違いは言語だが、英語でやり取りしているという。    これが、ワシントンで"インターオペラビリティ"と呼ばれる、軍事 の最優先事項である。  イラクその他で軍を投入している米国は、同盟関係を強化し、同盟国 からできるかぎりの支持を得る必要がある。  そして第二次世界大戦後、日本はアジアで一番の米国の同盟国であり 続けた。  だが、日本軍の強化という考えは、この地域ではよい反響をもたらさ ない。  先月末、2週間の空中給油訓練が行われた最中に、主として、中国人 数百万人を殺害した日本の戦時の侵略や、日本の国連安保理常任理事国 入りをめぐり、日中関係はここ数年最悪の状態に陥っている。  日本国内での、コンセンサスもない。  もっと大きな問題は、そもそも日本が軍事大国になるべきか、という ことにある。  第二次世界大戦後、米国の進駐軍が日本軍を解体し、「武力による威 嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを 放棄する」とした憲法の制定を後押しした。  ワシントンはすぐに、アジアの共産主義に対抗するために同盟国の建 設が必要なことに気づき、日本は1954年に自衛隊を創設した。  この決定を憲法違反として糾弾する声もあったが、(日本)政府は、 この軍隊は専守防衛なので、違憲ではないと主張した。  この主張を通すことは、難しくなりつつある。  憲法改正で自衛隊を軍隊にすることを提唱している小泉首相は、さら に枠を広げて、イラク南部に数百人の日本兵士を派遣し、東南アジアに も津波救援のために派兵した。  早稲田大学の山本武彦教授は、日本政府は、主として中国と北朝鮮の 脅威を感じているので、自衛隊を強化したいのだと語った。  長い間、核兵器の開発と空母の取得はタブーとされてきた。  しかし、防衛庁は2001年に13000トンの対潜哨戒ヘリコプタ ー用の飛行甲板のある、駆逐艦を購入すると発表した。  反対者は、これを軽空母と呼んでいる。  ところで、日本が米軍のF15に空中給油する日も、遠くないかもし れない。  2年後には、日本最初の空中給油機が、名古屋に配備される。  嘉手納基地の第909空中給油飛行中隊の指揮官クリス・コモウ中佐 は、「彼らには、なるべくわれわれがやれることができるようになって ほしい」と述べ、「彼らはよりビッグに、ベターになりたがっており、 われわれも彼らを助けたい。いつか、日本の空中給油機に米軍のF15 を給油させることができたら、クールじゃないですか?」と語った。  日本初の空中給油機クルー候補のテストッパイロットのアキヨシ・シ ンヤ1等空尉は、2つの重要な目的があると指摘した。  日本の戦闘機の滞空時間を長くして、領空侵犯機への対応をより迅速 にすること、そして、騒音被害が激しい人口密集地での、潜在的に危険 な離発着の回数を減らすこと。  空中給油訓練に参加したアキヨシ1尉は、空中給油機が日本の戦闘機 の攻撃範囲を広める恐れがあることを認めた。  だからといって、日本が必要だとと感じることを中止するべきではな いと述べた。  彼は、「近隣諸国は敏感です」と認め、「しかし、彼らには、これが日 本の国土防衛だと語り続けなければなりません。われわれは、われわれ の戦闘機を、それ以外の目的に使用するつもりはありません」と語った。 。。。。。。。。。。。。。  日米共同空中給油訓練の様子を伝えた記事だが、現場ではすでに日米 一体化がかなり進んでいることがわかる。   自衛隊のアキヨシ氏は優等生的コメントを発したが、米空軍中佐は、 "よりビッグに、ベターに"という、イケイケドンドンの自衛隊の本音 をポロリと出しちゃった?  そして何より、当時日本の全国紙はほとんど伝えなかったが、実は、 あの中国の反日デモたけなわの時期に、日米がわざわざ東シナ海上空で、 中国を挑発するような行動を取っていたことになる。  もし時期はずらせなかったとしても、訓練は太平洋上空でも、可能だ ったはずだよねぇ。

続く