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安倍晋三氏の"国際性"

(報告:常岡千恵子)


 2006年9月26日に、日本初の戦後世代総理に就任することが、
ほぼ確実となった安倍晋三氏。

 "国際社会への進出"に意気込む安倍氏だが、海外英文メディア(中
国と韓国は除く)の安倍評は、そのタカ派的思想や歴史認識に疑問を
抱くものや、海のものだか山のものだかわからぬ謎の人、というものが
多い。


 他方、"国際社会への進出"にノリノリの安倍氏は、これまで著作活
動にも精力的に取り組んできた。
 そして、政権成立前に華々しく国際デビューを飾るハズであった。


2006年7月11日付『読売新聞』朝刊1面
 北朝鮮のミサイル・テスト騒動の最中に、世界最多部数を誇る大新聞 の一面トップに華々しく躍り出たニュース。  『読売新聞』は、この記事以外でもこの寄稿について2度報じた。  なのに、待てど暮らせど、一向にこの大論文は発表されない。  そうするうちに、朝日新聞社が発行する週刊誌『アエラ』2006年 8月14−21日号24ページで、「投稿話は立ち消えになった」と報 じられ、2006年8月29日付『朝日新聞』朝刊4面で、安倍氏が寄 稿を断念したと報じられた。  そもそも『読売新聞』が他に先駆けて報じたニュースであるのに、落 とし前をつけぬとは、何たる無責任!!  そこで、2006年9月初め、『読売新聞』読者センターに電話して みると…… 。。。。。。。。。。。。。 Q: 7月11日の一面に、安部長官が、外交理念をまとめた論文を近  く米国の外交雑誌に発表すると書かれているんですけれども、8月が  終わっても全然そういう話が出てこないので、その後、どうなったの  かと思いまして…… A: 紙面に載ってないと、まだ出ていないという結論になる可能性が  高いです。ちょっとお待ちくださいね。 その後、それが出たという具体的な記事はないですね。 確かに7月11日の続報は、いっさい出てないですね。 Q: 『朝日新聞』が、これは立ち消えになったと伝えているんですが、  もしそうであれば、一番最初に一面で取り扱われたのはそちらなので、  なぜ続報を出さないのかをお伺いしたいんですけど。 A: わかりません、それは。 Q: ふつう、立ち消えになったとか…… A: ただ、立ち消えになったというのは、紙面に続報がありませんので…… Q: では、待っていれば出てくるということですか? A: なんらかのかたちで出る可能性は、ゼロではないと思います。 Q: もし『朝日新聞』の立ち消えという報道が正しいのであれば、一  番最初に出したのはそちらで、いかにも安倍さんが国際的に受け入れ  られているみたいなイメージを強くするような記事だと思うので、そ  の後、やっぱりダメになったということは、しっかりお載せになるべ  きだと思うのですが。 A: わかりました。そういうご指摘があったことは、全文は書けませ  んが、要旨は日報にまとめますので、必ずそれは、お約束します。 ただ、読んだ担当部がどう反応するかは、相手に任せていますが。 Q: ああいう理論が国際的に通用するかどうかは、あやしいので、や  ると言っておいて、やっぱりダメだったというのがないと、誤解を与  えるような気がします。 A: はい、わかりました。ありがとうございます。 。。。。。。。。。。。。。 これ以降2006年9月19日現在、『読売新聞』は、安倍氏の投稿 話の結末を伝えていない。  せっかく指摘してあげても続報を掲載しない、『読売新聞』の"国際 性"も、大いに疑ってしかるべき?  『読売新聞』のちゃらんぽらんな国際報道↓  >>小泉ニッポン!"東アジア一人ぼっち"劇場20  そして、安倍氏の理念が詰まっているといわれる『美しい国へ』。  この本は、安倍氏自身の"国際性"を強調するかのように、さまざま な海外の要人の発言を引用しているが、超有名なケネディ大統領の就任 演説もそのひとつ。 『美しい国へ』120ページ  で、念のため、この超有名な一節の原文をたどってみると・・・  この文章を素直に訳すと、 「自由の存続と成功を確保するために、我々はどんな代価をも払い、どん な重荷も担い、どんな困難にも立ち向かってすべての友を支援し、どんな 敵にも対抗することを世界に知らしめよう」 になる。  いや〜ん、安倍バージョンは、「自由の確保とその"勝利"(原文は success)」やら、「いかなる困難にも"進んで"(原文はmeet any hardship で、このような表現はない)直面し」やら、「いかなる敵とも"戦う" (原文はoppose)」やら、原文よりブッソウ!!!  この"超訳"が、米国に留学し、ビジネスマンとしてニューヨークに 駐在した"国際派"の安倍氏の語学力の賜物なのか、それとも"闘いた い!"という潜在的願望に駆られた結果なのか、それともかの有名な演 説の一節もロクに知らぬにもかかわらず、読者をナメてかかり、ちゃら んぽらんに引用してしまったものなのかは、不明である。 ひとつ確かなのは、原文を歪曲して、自分に都合のいいように伝えて いること。  そ〜いえば、北朝鮮のミサイル・テスト騒動の際も、安倍氏は無自覚 に"先制攻撃"を唱え、世界をビビらせたっけ。 無自覚に原典を曲解しがちな日本の"軍事通"↓ >>小泉ニッポン!”果敢の先制攻撃”劇場1  安倍氏の"先制攻撃"発言がホワイトハウスをビビらせたと伝えた、  オーストラリア紙(オーストラリアは、キビシイなぁ〜)↓  >>小泉ニッポン!”果敢の先制攻撃”劇場4 もし、この超訳が無自覚のものだとしたら、それこそ安倍氏は現実を 客観的に把握できない人間ということになるし、バレないと思ってやっ ているなら認識が甘すぎる人間ということになる。  いずれにせよ、現実と願望を取り違えては、70年前と一緒。 東京裁判でも明示されたように、日本の指導者にあっては、無意識・ 無自覚の者が多きゆえ、くれぐれも妄想の淵にはまらぬよう、気ヲ締キ シムルベシ!!  意識がズレがちな日本政府↓  >>小泉ニッポン!"外務省の広報活動"劇場  それにしても、故ケネディ大統領は、いい迷惑だろうなぁ〜〜  でも、悲しいかな、死人に口なし。  "国際派"の安倍氏って、けっこう海外にも故人にも礼を欠いてる?

続く