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小泉ニッポン!"外務省の広報活動"劇場

(報告:常岡千恵子)


 前回まで、わが日本国外務省の"広報活動"の成果をあますところな
くお伝えしてきたが、な、なんと、本連載にも登場した、在米日本大使
館公使の北野充氏が、『諸君!』2006年10月号に写真付きで堂々
ご健筆を揮われた。

 ひょっとして、本連載が発掘した"スター"?

	  
 『諸君!』2006年10月号

 175ページと176ページで、本連載で取り上げた『インターナシ
ョナル・ヘラルド・トリービューン』への寄稿文を公表なさっていらっ
しゃるのだが、相変わらず、韓国に親しみを感じる日本人の割合の最新
データを逸していることにお気づきにならないのか、それとも"黙殺"
していらっしゃるのか、いずれにせよ、寄稿文を訂正するそぶりはない。


 北野充氏による寄稿とその誤り↓
 http://www.higashi-nagasaki.com/e_pub/EE2006_06_z01_15.html
 http://www.higashi-nagasaki.com/e_pub/EE2006_06_z01_16.html


 北野氏は、2006年1月の寄稿で、2004年までの韓国に親しみ
を感じる日本人の割合を引用しているが、実は日本政府は、2005年
12月に、その数字が低下したことを発表していたのである。

 事実隠蔽を自覚していらっしゃらないのか、あるいは、日本国民には
バレないという油断から一般誌で広報活動を公表されたのかは定かで
はないが、この記事の文面に滲み出ている高揚感は、ちょっとタルン
ドル証拠?

 ま、北野氏らの熱心な広報活動の成果が、いかほどのものであるかは、
本連載でずっとお伝えしてきたとおりである。

		  

2006年6月29日付『日本経済新聞』夕刊2面

 日本国外務省は、海外メディアへの投稿や寄稿だけでなく、海外の民
主主義国家政府をギョギョギョ!とさせるような"広報活動"も行って
いる。

 正常な民主主義国家においては、メディアは国民の代表として政府を
チェックする役割を担う機関である。

 正常な民主主義国家においては、メディアが自国の軍隊が海外でどの
ような活動を行っているのか、チェックするのは当たり前なのに、日本
は自衛隊の取材を規制するだけでは飽き足らず、成熟した民主主義国家
である英国政府にまで、誠に恥ズカシイ要請を行った。

 "強いニッポン!"とは正反対の隠蔽体質を改善しないと、国際社会
における"名誉ある地位"が遠のくばかりか、"恥ずかしい国へ"にな
ってしまう。



 さて、次は、おフランスにおける日本国外務省の広報活動をご紹介す
る。
 筆者はフランス語はチンプンカンプンであるが、幸いにも、フランス
語に堪能な知人に仏有力紙の記事を翻訳してもらった。

 以下に、その要約をご紹介する。

。。。。。。。。。。。。。

『リベラシオン』(仏)          2006年8月22日付
     −「フランス5」のドキュメンタリーに抗議する日本 



  この1ヵ月来、在仏日本大使館が、きわめて控えめなやり方ではある
が、「フランス5」による、ドキュメンタリー『日本、過去の亡霊(この
冬、ARTEで放映済み)』の放映を中止させようと試みた。

  日本人外交官が、この公共放送局に数回に渡って電話をかけ、さらに
経営陣に対して、竹島(韓国語名はドクド)の領土問題、戦犯の栄誉を
たたえる靖国神社の問題、ニッポンの教科書改修主義に関する、彼らの
言うところの「間違い」を指摘する手紙を送った。

  このドキュメンタリーは、結局、予定通り、8月18日(金)に放映
された。

。。。。。。。。。。。。。

  あらあら、つい、従順な日本のメディアを相手にするような感覚で、
国内と同じように圧力をかけちゃったんだろうけど、民主主義先進諸国
のメディアは、日本のメディアほど、たやすく屈しない。

  また、民主主義先進諸国の政府は、日本政府ほどメディアの"統制"
に血道を上げない。
  日本政府の行動が民主主義国家の政府として常軌を逸しているから
こそ、このような裏工作が有力紙のネタにされてしまうのである。

  欧米の民主主義諸国は、表面上は日本とさして変わらぬように見える
が、欧米の思考やシステムは、陰でコソコソ動くのが主流の日本とは、
根本的に違う。(陰でコソコソ靖国行くのは、いかがなものか?)

  その意味では、日本は米国やオーストラリアと、価値観を共有してい
ないし、"脱亜入欧"していない。
  日本政府と日本のメディアの関係は、米国やオーストラリアのそれよ
り、むしろ中国のそれに近いのかもしれない。


 オージー・メディアの反撃↓
 http://www.higashi-nagasaki.com/e_pub/EE2006_06_z01_29.html


  システムが違うという事実を認識すれば、もう少し相手を観察して効
果的な対応もできるのだろうが、日本政府は、とかく欧米が日本と同じ
だと信じたい願望が先走りするのか、日本国内で通じるやり方をそのま
ま海外で押し通したあげくに相手の顰蹙を買ってしまう、というパター
ンが典型のよう。

 大日本帝国時代、日本の植民地支配が、欧米の植民地支配より現地の
人たちに嫌われちゃったのも、このへんに原因アリ?

  米国の戦略理論家のサミュエル・ハンチントンが『文明の衝突』に記
したように、日本の文化や思考は独特だ。
  日本流をナマのかたちで押し出すと、外国人に理解されずに、孤立し
がち。

  外交の専門家なら、せめてハンチントンの本ぐらい読んで、日本人が
陥りやすい罠を自覚していただきたいものである。
  ただ、上っ面を追っただけで読んだつもりになってちゃダメで、内容
を咀嚼することが大切だ。

  日本国外務省さ〜ん、第二次世界大戦以来最悪の評判に見舞われてい
る私の祖国を、私たちのカネを使ってこれ以上貶めるようなマネは、
できるだけ避けていただければありがたいんですけど〜〜〜

  現状でも、じゅうぶん国際トンチンカンなのに、日本政府は、さらに
"日本の文化・伝統"に埋没しながら"国際進出"に邁進するという、
逆方向のベクトルを一気に同時噴射させるような超アクロバティック
な芸当に挑戦してるような……

続く