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小泉ニッポン!"東アジア一人ぼっち"劇場 6

(報告:常岡千恵子)


 前回までで10月分の小泉首相靖国神社参拝の外紙報道のご紹介を
終わらせようと思っていたが、1本ご報告し忘れた分析記事があるので、
今回は、その要旨をご紹介したい。

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『バンコク・ポスト』(タイ)      2005年10月22日付
   −分析/ 日中関係;進展の好機を台無しに
 10月17日の秋の日の2つの国の物語は、現状よりも未来を明かす
        

 
 10月17日朝、豊かな巻き毛をなびかせた痩身の日本人男性が、リ
ムジンに乗り込み、古い戦争神社に向けて東京の街を進んだ。

 雨の中、彼のリムジンが、東京の長く憂鬱なラッシュアワーを穏やか
な音を立てて進んでいた頃、中国の青空の下では、もっと速くて明るい
旅が進行していた。

 5日間宇宙に滞在していた2人の中国人宇宙飛行士が、予定通り地球
に帰還したのだ。

 一方の国が科学の崇拝と未来の夢に注目したのに対し、もう一方の国
では、その首相が、国家神道への敬意と信仰を再確認するという、内向
きで後ろ向きな事柄が注目された。
  国家神道とは、選ばれた戦没者の魂が連続的参拝に値する神に変わり
うるとする、迷信的カルトである。

 この日、中国の指導者たちは大空を見上げ、前向きに未来を受け入れ
たが、日本の首相は、国内でさえも物議を醸すほど軍国主義的な神社で
頭をたれて祈った。そして200人の政治家たちが彼に続いた。

 小泉氏のタイミングの悪い参拝の数日前、朝日新聞が参拝を止めるよ
う呼びかけ、同僚政治家および元首相たちも近隣諸国の感情に配慮する
よう懇願し、大阪高裁も違憲との判決を下したあとだった。

 他人の意見に耳を貸さずに政治を成功させる、ジョージ・ブッシュ米
大統領を手本にしたようだが、日本の首相は、彼の最も甚だしい過ちを
堅持することを選択した。

 この、秋たけなわの日の両国の物語は、日本が恐るべき経済的競合者
であり大半の重要指数で中国をリードしている、という現状より、未来
の方向性を示している。

 いわれのない侵略と陵辱と強奪のかつての犠牲者は、誇りを持って前
を向き、その元加害者は、自身の恐ろしい過去についての危険な白昼夢
をごまかす、後ろ向きの信奉に固まっている。

 小泉氏の忠実な部下である町村外相は、これはキリスト教徒が教会に
行くのと同じようなものだと述べた。

 だが、ちょっと待ってほしい。
 小泉氏がふつうの社寺仏閣や、無名戦士の墓を訪れることには、誰も
反対していない。
 問題の核心は、なぜ彼が、日本で最も軍国的な神社を参拝しているの
か、である。

 公にファシスト指導者たちを讃えることにより、彼は現在のドイツの
指導者がナチのヒーローを参拝するような許しがたい、忌むべき物議を
醸し、悪意の渦を巻き起こしている。

 神舟6号の円滑な成功は、中国全国民のモラルを昂揚させる。

 経験豊富な日本でさえもまだ果たしていない、中国の有人宇宙飛行の
偉業は、過去の悪しき記憶をより深みのある大局観に納めることを助け
る。

 しかしながら、日の丸を掲げた侵略者によって、祖父母の世代が殴ら
れ、陵辱され、奴隷にされた記憶が残る中国や韓国などでは、靖国神社
参拝による挑発が招く潜在的な痛みを、軽んじることはできない。

 小泉氏は、ほとんど中国をけしかけ、ずるく喧嘩を売るか、あるいは
少なくとも、中国の幸福を妨害するために力を尽している。
 まるで、10月17日の東京の雨雲を北京の青空に移して、中国のパ
レードを台無しにしようとしているようだ。

 新たに獲得した自信と能力で、中国が、狡猾な小泉氏が仕掛ける靖国
のジンクスのような挑発を振り払い、そこにあるものを見極めることを
望む。
 これこそ、日本の凋落の証拠なのである。

 日本の分析家が最初に日本の凋落を認めたのは、クリントン米大統領
の2期目に、この米国の昔からの同盟国を飛び越えて、直接中国政府を
相手にしたときだ。

 そしてブッシュ・ジュニアが、日本を無視せず中国に対して強硬な態
度で臨むことを約束して政権に就いたが、米国の偵察機が海南島で事件
を起こし、最初の危機が訪れた。

 小泉氏の支配下で不名誉な過去にしがみついた日本は、アジアで広く
友人を失い、ロシア、韓国、北朝鮮や、隣人の大国の中国、さらには遠
くて小さなシンガポールにまで、はねつけられている。

 危険なほどに孤立し、ますます理解しがたい状況に、攻撃的な小泉氏
は米国に接近し、お馴染みで心地よいが、完全にアナクロニックな冷戦
型安全保障のリンクを必死で復活させようと、現代のイラク侵略戦争の
愚行を受け入れた。

 だが、小泉氏が東條時代の日本に向けてセンチメンタル・ジャーニー
を行おうと決めたその週に、一連の米政府高官が訪中したことは、クリ
ントン時代に明白だった日本の孤立が、さらにハイレベルに進行したこ
とをほのめかしている。

 国家とは、その国民個人個人が感情的で情熱的であるように、自分に
満足し、大きなコミュニティーに所属していると感じているときは、屈
辱に対して強くなるものだ。
 中国の上昇ムードが、間違いであれ意図的であれ、小泉氏の着想とタ
イミングの悪い参拝がつくりだした挑発より、長く持続することを願う。

 敗れた戦争と大義にこだわる一部の政治家が、憎悪の政治と歴史的糊
塗の泥沼にはまっている日本は、自分自身を傷つけている。
もしこれが続くようなことがあれば、中国が、元敵国かつ現在の経済
的ライバルに追いつき追い越す速度を早めることはあれ、遅らせること
にはならない。

 過去60年間、日本は、戦前への罪悪感や戦後の寛容さにより、平和
憲法を受け入れ、アジアの近隣諸国に寛大な援助を行ってきた。

 しかし、公式謝罪となると、暴力団とつながりのある右翼の怒りや、
海外への経済的補償の重荷を恐れてか、日本はいまだに口が重い。
 60年は躊躇するには長い時間だが、今からでも、教科書に事実を記
載したり、政治家が右翼との関係を断つなどの清算をすれば、日本は驚
異的に国際的関係を改善し、日本政府の外交政策をより現実的な軌道に
乗せることができる。

 日本政府は、日本人を抑圧し何百万人もの外国人を殺したファシズム
が議論の余地なく悪いことであり、言葉と行動において許容されても復
活してもいけないものだということを、世界に対して、とくに近隣諸国
に対して、そして何よりも自らを確信させる必要に、かつてないほど迫
られている。

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 2005年に日本が国連常任理事国入りに手を上げたとき、支持して
くれなかったアジアの国々の、ホンネが出てる??
 やっぱ、小泉ニッポンは、"姑息で品格がない"とみなされている様
子。

 さて、2005年10月31日、小泉首相は内閣改造を行ったが、新
内閣についての代表的な海外英文メディア報道の要旨をご紹介したい。
 尚、改造そのものについての記事の内容は、どの国の英文メディア(中
国・韓国を除く)も、だいたい似たりよったりだった。

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『シドニー・モーニング・ヘラルド』(オーストラリア)
                    2005年11月1日付
     −小泉の後継者予想の切り直し



 劇場型政治の達人である日本の小泉首相は、昨日発表された新内閣に
後継者を入れたが、具体的な人選は明らかにしなかった。

 この内閣改造は、今後6ヶ月間、日本の政治を支配することになる小
泉氏の後継者の予測ゲームのスタートである。

 経済と市場のムードが、小泉氏の改革課題にポジティブに反応したが、
多くは彼の後継者に依存している。
 
 後継者候補の一人、新官房長官の安倍氏は、記者会見でテレビ露出の
多い高位のポストを与えられた。
 今回の改造で入閣したその他の候補者には、日本最大手のセメント会
社のひとつを所有する裕福な実業家で外相に任命された、65歳の麻生
氏がいる。

 麻生氏は、日本と、中国や韓国やロシアなどの近隣諸国との関係が危
ぶまれ、米国が在日米軍再編で影響力を示している時期に外相に就任し
た。

 改造には、中川経産相が農相に変わるという、意味深い側面がある。
 中川氏は、最近、日本の石油開発会社に試掘権を与え、中国政府をい
らだたせた。
 3人目の候補者は谷垣財相で、留任する。

 だが、昨日の注目を集めたのは、51歳の安倍氏である。
 右翼の実力者かつキャリア政治家の彼は、無反省な靖国神社参拝者だ。
 
 一部の出版社が行っている、日本の戦史を誇れるものに書き換える運
動を支持する安倍氏は、自身は介入を否定したものの、韓国の従軍慰安
婦についてのテレビ番組の内容を抑制するように示唆した。
 彼は、北朝鮮による拉致被害者の家族を援助することで人気を高め、
北朝鮮への経済制裁を支持してきた。
 
 米国やオーストラリアとの関係は、小泉氏とブッシュ氏とハワード氏
の親密な関係のおかげで、良好なものとなった。

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『ストレーツ・タイムズ』(シンガポール) 2005年11月1日付
     −小泉、内閣改造でタカ派を指名
    強硬派が、日本と近隣諸国との緊張をさらに高めるだろう



 日本の内閣改造で、政界の名門出身の麻生太郎氏と安倍晋三氏を含む、
タカ派数人が、重要ポストを与えられた。

 小泉氏は、彼らのような政治家にその能力を証明させる機会を与える
約束をしたが、専門家たちは、この新ラインアップが他の候補者を妨げ
ることはない、と述べた。

 いずれにせよ、後継者候補リストを挙げているのは、小泉氏ではなく、
メディアである。

 だが、この2人の強硬派の任命は、日本とアジアの近隣諸国の緊張を
さらに高めることになるだろう。

 故吉田茂首相の孫である65歳の麻生氏は、外相として、日本と中国
と韓国の関係を修復する仕事に直面している。

 麻生氏は、10月17日の小泉氏の靖国神社参拝を「いいこと」だと
擁護した、と伝えられた。
 靖国神社は、多くのアジアの国々で、過去の日本の軍国主義のシンボ
ルとみなされている。

 4月22日、小泉首相の靖国神社参拝と日本の教科書によってなされ
ているという(歴史の)糊塗に抗議するデモが中国で行われた直後、麻
生氏は閣僚としてただ一人靖国神社を参拝した。
 彼の参拝は、ちょうど小泉氏がジャカルタで、緊張緩和のため、中国
のフーチンタオ主席と首脳会談を求めているときに行われた。

 一方、51歳の安倍氏は、偶然にもA級戦犯容疑者だった故岸信介首
相の孫で、官房長官という、力のあるポストを与えられた。

 小泉氏よりタカ派と見られている安倍氏の急上昇は、疑いなく近隣諸
国を警戒させる。

 昨日の記者会見で、安倍氏は、中国と韓国の怒りを買うリスクがあっ
ても、靖国神社を参拝し続ける、と言った。

 小泉氏は、もう一人の候補者、谷垣禎一氏を財相に留任させ、元経済
政策策定者の竹中平蔵氏に重要閣僚ポストを与え、小さな政府を目指し
て改革を推し進める意思を示している。

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 いずれも、安倍氏のタカ派ぶりに注目している。

 そして、2005年11月中旬のブッシュ米大統領の訪日やAPEC
が近づいてくると、アジア地域全体の分析や論評が増えてきた。
 
  まずは、米大手紙が掲載した、米保守系シンクタンク外交政策研究部
代表による、米国の対日戦略の要旨をご紹介する。

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『ウォールストリート・ジャーナル』(米) 2005年11月7日付
     −米国の新戦略的対日関係:クリストファー・プレブル筆



 米国は、静かながら効率的に、新たな戦略的対日関係の構築に動いて
いる。
 とくにアフガニスタンとイラクの両方で戦争中の米国は、現在の米軍
の負担の一部を分担するよう日本を説得する必要に追われており、新た
な関係は級強敵に双方が懸念する課題、とりわけ北朝鮮の核計画、台湾
海峡の緊張、中国の軍備増強などに、より効果的に対応するであろう。

 今月、ブッシュ米大統領が、共通の安全保障目標を強調するために訪
日する。
 その一環として、日米の交渉者は、沖縄の海兵約7000人を移転さ
せることで合意した。

 日本側は、これまで国内の反対で不可能だった、日本の領海内の米軍
の原子力空母の配備を許可した。

 これらの具体的課題より重要なのは、これらの合意の底流にある戦略
的論理である。
 沖縄の海兵の一部を移転させることで、米国は、日本は自らの安全保
障についてより大きな責任を負うというシグナルを送った。
 日本はこの責任を受け入れ、また、詳細は定められていないものの、
米国との共同行動を計画し米国とより一体化することに合意した。

 これらの交渉は、日米の政策策定者たちの東アジアへの安全保障への
アプローチが、より成熟し分別のあるものになったことを表している。
 日本は近年、直接の本土防衛から枠組みを広げ、この地域の安全保障
への関心を増大させている。

 この変化は、日本により重要な国際的役割を与えることに消極的な
人々が米国にいるにもかかわらず、起こった。
 米国のあるシンクタンクは、米国が冷戦時代の義務から撤退すれば、
世界のリーダーとしての米国の地位が危うくなると主張した。
  また、生来軍国的とされる日本社会を恐れ、在日米軍は、日本が積極
性を増し軍国化することを妨げる"瓶のフタ"と見る者もいる。

 しかし、ブッシュ政権は、新しい日本帝国が生まれることへの恐れは、
非合理でアナクロニックだと理解している。
 メディアは、小泉首相の靖国神社参拝や、第二次世界大戦の日本の犯
罪を軽視しているようにみえる教科書の採択を書き立てているが、日本
が過去に支配した国々、つまりタイ、韓国、フィリピン、とくに中国に、
巨額の援助を与えてきたことは、わずか少ししか伝えられていない。

 日本企業も、これらの国々との間に広範な絆を築いてきた。
 これらの投資は、日本がアジアの近隣諸国との友好的・平和的関係に
重きを置いてきたことを示唆する。

 日本は、自らの防衛の全責任を追うことにおいて、経済的に有能であ
り、また現在、政治的にも準備できているようだ。
 一部の日本人は、日本の防衛を米国に任せることを続けたいと思うだ
ろうが、より多くの人々が、憲法改正など、進んでいろいろなオプショ
ンを考慮している。

 同様に重要なのは、米国の製作策定者たちが、日本のより自主的な防
衛・外交政策を認めることだった。
 日本が遠く離れたパトロンの望みどおりに、防衛を従属させると見る
のは、もはや賢明ではない。

 多くの軍事的海外任務に直面した米国と、軍事的自主性への主張を強
めだした日本。
ブッシュ政権は、両国がより公平な安全保障の分担を行う、新しい政
策を形成したと、賞賛されるだろう。
 新たな戦略的関係は、東アジア及びこれをさらに越えた国々が直面す
る、大いに切迫した安全保障上の課題に対処するための、より永続的か
つ信頼の置ける礎を提供するだろう。

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 なぜ米政府が日本を持ち上げているのか、そのホンネが透けてみえる
論評だ。
 よーするに、自衛隊は米軍と一体化して、東アジアの地元だけじゃな
く、米国のために世界中で汗を(そして血も)流してね、ということ。
 でも、米国が世界一の覇権国家であり続けたいなら、これまでどおり、
それ相応の犠牲を払わなきゃねぇ。

 それにしても、発展途上国の軍人なら、"払いがいいから"と、喜ん
で国連PKOやその他の危険な任務に出かけていくかもしれないけど、
生活水準の高い日本の国家公務員に、命の安売りを期待するとは!

 欧米先進諸国の国連PKO参加は、すでに全体の1割を割り、貧しい
発展途上国が下請けしている状態だが、これと同じようなことを日本に
対して、とくに米国の利益のためだけに求めるとは、ちょっとバカにし
てる?

 自衛隊のみなさんも、最初のうちは大喜びで実戦に励むだろうけど、
そのうち欧米先進諸国の軍隊同様、"割りに合わない"ことに気づいち
ゃうかも。
 
  国連PKOの実態はこちら↓
	  ・自衛隊を迎える国連PKOの実態1自衛隊を迎える国連PKOの実態2


  他方、日本社会について「生来軍国的とされる」とし、米国内にもま
だ日本を疑っている人たちがいる、と書いているのも興味深い。
 これまでご紹介した、一連の米メディアの靖国報道には、その懸念が
露骨に表れているし、今後ご紹介していく海外の報道は、ますますその
傾向を強めているからだ。
 日本のメディアも、ようやく2006年に入って、ブッシュ政権もそ
の方向に傾いている、と伝え始めたし。

 やっぱり、靖国は、いじっちゃいけないタブーだったのだ。
 とにかく、あの戦争は、50カ国以上を敵に回した、国家的大失敗な
のだから。
 高度経済成長をもたらした先人たちは、そのことを熟知していたから
こそ、靖国を封印して戦後日本を見事に再建させたのだ。
 この"日本の伝統"こそ、墨守するべき"成功への教訓"ではないの
か。

 小泉首相の神通力は、日本人には通じても、国際社会には通用しない
のである。
 あの戦争時の、独善的な日本の指導者たちのように。

 ところで、米政府は、靖国問題にも口出ししているようだし、この論
票が指摘するように、日本が防衛の責任を引き受ければ、日本の自主外
交を認めてくれるとは、到底思えないんだけど・・・。

 さて、お次は、米国の著名日本文化研究家による、ブッシュ米大統領
への提言の要旨をご紹介する。

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『フィナンシャル・タイムズ』(英)
                   2005年11月16日付
    −ブッシュが、近隣諸国について小泉に話すべきこと
              エドワード・サイデンスティッカー筆



  小泉首相は就任直後に、自らを改革首相だと主張した。
  しばらくの間、彼が何をいかにして改革するのか、わかりにくかった。
  だが彼は、ついに郵政民有化に焦点を絞った。

  郵政民営化法案は参議院で否決され、彼は大胆にも衆議院を解散し選
挙に打って出た。
 彼の自民党は、圧勝した。

 この驚くべき勝利から、彼の就任から数年後、日本国民の間で、彼は
天才だという評判が広まった。
 
 外交面において、小泉氏は、ブッシュ氏と馬が合うようだった。
 日本の対米関係には、暗い雲はみじんも見当たらない。
 二国間には、重要な懸案事項もない。
 本日の、ブッシュ氏の大歓迎された短い訪日は、深刻な会談というよ
り、ピクニックに近い。

 しかしながら、日本の重要な相違は、中国と韓国の間にある。
 両国とも、小泉首相の靖国神社参拝に憤っている。
 この神社は、日本のために死んだ者たちを慰霊している。
  問題は、彼らの中に"戦犯"が含まれていることだ。
  彼らが"戦犯"と呼ばれるべきかどうかは、疑問が残る。

  20世紀半ばのこの戦争中に在位した故天皇ヒロヒトは、第二次世界
大戦後、何の罪も問われなかったので、1946年に処刑された、いわ
ゆる"A級戦犯"は"戦犯"と呼ばれるべきでないのかもしれない。

 戦争犯罪の有罪判決を受けた者は日本の最高指導者によって栄誉を
与えられるべきではないとの、中国と韓国の見解は、理解できる。
 小泉氏は、参拝を止めることによって、容易にこの苛立ちを終わらせ
ることができたはずだ。
 多くの人は、気にしないはずだ。
 なぜ、彼はそうしないのだろう?
 天才には欠点があり、頑迷さは彼らに共通のものだ。

 自民党は半世紀もの間、日本を支配してきた。
 今年、この寒々とした状況が変わるチャンスがあったように見えた。
 一部の人々は、郵便局と郵便貯金よりも、この国に二大政党制を与え
るという重要な課題があると考えた。
 半世紀以上の独立と民主主義(のようなもの)の間に、日本には、2
つの非保守政権があった。
 しかしながら、これらは短く、特殊な状況下にあった。
 今、おそらく、その時が到来した。
 とはいえ、それがずり落ちて行くのが、選挙運動中に知覚できた。

 米国とその大統領は、小泉氏の関心を引こうと気を揉む必要はない。
 小泉氏が近隣諸国、とくに韓国に注意を払わなかったのは、問題を招
くかもしれないが、これは小泉氏の失態である。

  彼は自分たちを見下しているのではないかという韓国の疑いは、おそ
らく正しい。
 この問題は新しいものではない。
 1950年代に朝鮮戦争が勃発したとき、私はまったく関心を示さな
い日本人に、驚愕したものである。
 朝鮮戦争は他人事であり、"誰か"、つまりブッシュ氏の先輩が対応す
るものだという態度だった。
 おそらく、それは悪い取り決めではなかった。

 もしブッシュ氏に世才があるなら、慎重に靖国参拝問題を議題に上げ
るだろう。
 日本が韓国に対して本当に関心を持ち始める日に、韓国は米政府との
関係に目を向けるだろう。
 中国は、独自に対応できる。

。。。。。。。。。。。。。

 長年日本に住んでいる、日本文化研究家の目にも、小泉首相の行動は
理解しがたいものに映るようだ。


続く