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ところで、日本の大手メディアも報じたように、2005年10月24 日付『ワシントン・ポスト』(米)に、米コラムニストのロバート・ノバ ク氏による小泉首相インタビューが掲載された。 『産経新聞』が絶賛した、その内容の要約をご紹介する。 。。。。。。。。。。。。。 『ワシントン・ポスト』(米) 2005年10月24日付 −中国の”日本カード” なぜ小泉は靖国神社参拝を強調しないのか 靖国神社参拝の3日後、小泉首相は私のインタビューに応じた。 あの戦争の勝者は、とくに中国は、激怒した(だが、米政府はそうでは ない)。 この日本のリーダーは、冷静に、「どうして行ってはいけないのか、理 解に苦しむ」と述べた。 中国にとっては、理解しやすいことで、外相会談をキャンセルした。 選挙で予期せぬ圧勝を果たした小泉首相は、鋭い皮肉のような感じで応 酬した。 彼は、靖国神社参拝は長期的に"重要な問題ではない"とし、「60年 前の戦争のせいで」中国が「日本を脅威に感じている。だから、彼らが、 日本を囲い込みたがっていることは理解している。日本をライバル視する 見方が強まり、中国内に"反日"の感覚を作り出すことが中国指導者にと って有利なのだと思う」と語った。 中国と日本が同時期に大国であるのは、今が初めてだ。1億2千7百万 人の日本人は、13億人の中国人のことを心配している。 日本の外交官は、中国人の靖国参拝の怒りを中国政府が"日本カード" として利用していると見ている。 一般の日本人の見解は、石原慎太郎東京都知事が反映しているのかもし れない。 彼は私との夕食の席で、中国の軍事的台頭を心配してみせた。 小泉首相もこれを危惧し、「中国の軍備増強に気をつけなければならな い。もっと透明性を高めなければならない」と語った。 以上が、先週、日本の外務省が小泉首相の靖国神社参拝を知らされた背 景である。 靖国神社の大きな問題は、東條英機を含む戦犯を合祀していることにあ る。 だが、隣接する戦争博物館は、シーファー米大使のような親日米国人を も困惑させる。 ここには、日本は中国侵略と真珠湾奇襲を強いられ、西洋の帝国主義か らアジアを解放したという、別の歴史観が示されている。 敗者の歴史観ではあるが、2005年の課題には無関係のように思える。 小泉氏は、60年間一度も攻撃したことのない日本が"軍国主義"に陥 る危険性を否定した。 そして、東條英機の名には言及しなかったものの、「特定の人物を崇め るために参拝しているのではない。むしろ、戦争で命を落とした何百万も の人たちに敬意を表するために参拝している」と語った。 また、日本を訪れる中国人は、「この国に軍国主義がないことがわかる だろう」、「長年の教育で、中国には、日本には60年前の体制がまだ存在 している、日本は中国に敵対的だ、という強い意見がある。これは、現実 とはほど遠い」と述べた。 米国の政策立案者たちの見解では、米国が日本と組んで中国に対抗して いるかぎりは、(日本の軍国主義は)現実離れしたものであり続ける。 日本政府が米国を信じず、再軍備して自力で防衛をすることに決めたと きが、米政府にとっての悪夢だ。 これが、ブッシュ政権が、靖国神社について騒ぎ立てない理由である。 。。。。。。。。。。。。。。。 2005年10月26日付『産経新聞』2面は、米国の著名なコラムニ ストが「米政府は騒がないことが正しい」と書いた、と喜んでいるが、こ れは米国の政策立案者の意見であり、ノバク氏は、"騒がないことは正し い"と書いていない。 しかも、日本が米国の支配下にあるなら靖国もOK、という米国の政策 立案者の意見は、つまり、日本が米国のポチでいるかぎりは、多少の粗相 も許すってことで、"強い日本"を主張する『産経新聞』にとっては、屈 辱のはず。 それに、日本が中国にビビッてる、っていう内容だし。 さらに2005年10月27付の一面コラム"産経抄"には、「中国の 怒りの表明は北京政府の『カード』にすぎないと紹介している」とあるが、 これは、日本の外交官の見解として伝えているだけだ。 確かに、これまでご紹介した論評や社説よりは批判色は少ないけど、遊 就館についても、米国人にとっては困惑させる展示だとしているし、小泉 首相の全面的な応援ではない。 この程度のコラムであんなに大はしゃぎしちゃうのは、あまりにも手前 勝手な解釈にすぎるような気もするけど、新聞として大丈夫なのかなぁ・・・? ま、それだけ、小泉首相の味方をしてくれる海外メディアが少ない、って ことなのかもしれない。 ただ、後で触れるが、『ワシントン・ポスト』本体の報道は、参拝に批 判的だ。 また、米有力紙『ウォールストリート・ジャーナル』は、小泉改革と"強 い日本"を支持しているが、これについても後で触れることにする。 そして10月末日、米国の有力週刊誌『ニューズウィーク』2005年 10月31日号が、な、なんと、「なぜ日本は友達がいないのか?」という 表紙を掲げた。 ところが、同じ週に出た『ニューズウィーク日本版』2005年11月 2日号の表紙のタイトルは、本家の表紙とは正反対! あららら、これはいったい、どういうこと・・・? それぞれの目次を見てみると、本家版『ニューズウィーク』には、「主 導的役割を失いつつある」と題する記事が一本だけ。 本家版をチェックすると、「A Very Lonely Japan(とても孤立した日 本)」という記事だけしかない。 ところが『ニューズウィーク日本版』では、本家版には存在しない、「靖 国反日はまぼろし」とする記事が、一番大きな特集記事として掲載されて いる。 そして、本家版の記事の翻訳である「友達のいない孤独な日本」という 記事が小さく扱われ、その後にはご丁寧にも、これまた本家版にはない、 「本当に悪いのは中国のほうだ」とする香港人が書いたコラムが加えられ てる! 『ニューズウィーク日本版』を読めば外国人の視点がわかる、と信じて いた愛読者も多いだろうが、実はこんなに日本を庇っていたのだ!! ここで忘れてはならないのは、世界各国の『ニューズウィーク』読者は、 あくまでも日本版より発行部数の多い、本家版『Newsweek』を読んでい る、ということである。 『Newsweek』のサイトには、日本の国会議員は、米国の視点や情報を 2つの媒体から得ており、ひとつはCNNで、もうひとつは『ニューズウ ィーク日本版』だと書いてある。 http://www.newsweekmediakit.com/newsite/asia/local/nihonban.shtml 日本の国会議員のみなさ〜ん、『ニューズウィーク・ニホンバン』を読ん だからって、米国の論調を正しくゲットしていると、思わないでくださ いねぇ〜! 本家版は、靖国反日はまぼろしだ、なんて言ってませ〜ん! これからは、できれば、本家版『Newsweek』をチェックしてくださ〜い!! 以上の例や、前出の『産経新聞』の例、さらに、2005年の日本の国 連安保理常任理事国入り報道(なれっこないのに、日本の大手メディアは なれそうなこと言ってたよね)、2006年トリノ冬季オリンピックの超 楽観的な事前報道もそうだけど、日本の大手メディアは、日本の国際的地 位を客観的に伝えられないんじゃないか、と心配してしまう。 偉大な記者さまたちの身びいきな愛国心も結構だけど、現実の外の世界 は厳しいのに、調子のいいことばかり伝えて、日本国民を勘違いさせてど うしようというんだろう? 現実を直視せず、見栄ばかり張っても空しいだけなんだけど、これって、 "集団的虚栄心の暴走"?? |
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