ヒマヒマなんとなく感想文|

特定秘密保護法下の「ゼウスの法廷」

(加藤健二郎 2013.12)


 主演は庶民的な民間人女性だが、舞台はエリート裁判官の人生とその周辺であ る。日本では裁判官と検察は一体化している最高権力機関といわれている。最高 権力機関のエリートたちは決して楽してふんぞり返った生活してるわけではな く、庶民よりも激務で、自分よりさらに上の権力に怯えていて思想の自由も奪わ れている。その権力最高峰の職場の日常や裏側を知るには、ドキュメントや内部 告発だけに頼るより、このような映画のほうが良いかもしれない。

 高橋玄監督の前作「ポチの告白」も観たが、前作よりも、この「ゼウスの法 廷」は、現実に起こりうることへのこだわりに徹底しているので、最後まで緊張 感をもって観れる。「司法職経験者に、こういうことは法廷内で可能か?」など の確認をとって、法廷に詳しい専門家に突っ込まれないように仕上げたという。

 エリート裁判官という、一般民間人とは大きく違う世界観の中で生きてる人 の、チグハグ感の表現が、良い味を出してる。監督によると、このチグハグ感を 醸し出す現場は大変だったらしく、チグハグ感が行き過ぎて、撮影現場スタッフ 約200人が一瞬で「シーン」となったこともあったそうだ。その現場談など も、メイキング作品とかどこかのトークイベントや舞台挨拶などで公開してもら えると楽しみだね。

 編集作業に約1年かけた作品でありテンポ感もなかなか良い。しかもその1年 の歳月のおかげで、劇場公開(2014年3月8日)が、特定秘密保護法施行と 微妙にバッティングしそうなのがラッキーだ。特定秘密保護法で、映画内のかな りの部分が、黒塗りになったり、音声「ピー」になったりすればするほど価値は 高くなることでしょう。いや、そんなことしたら、特定秘密保護法が、国防のた めのものではなく、国内権力機関にとって不都合な真実を隠蔽するためのものと バレバレだから、エリート官僚はそんな墓穴堀りしてくれないっか。そういう点 においては、日本の官僚は優秀だから。そして、この映画とは関係ないが、もう 1つの官僚の優秀さもお忘れないように、下々の国民諸君。

2013年12月13日の試写会にて。 ドアの前に立つのが高橋玄監督。

高橋玄監督とカトケンの初見は6年前の共謀罪イベント

映画『ゼウスの法廷』


続く