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英語圏大手メディアの"沖ノ鳥島"報道1

(報告:常岡千恵子)



  2005年5月20日、対中国強硬派の急先鋒、石原慎太郎・東京都知
事が沖ノ鳥島に上陸、シマアジの稚魚を放流したり、自らシュノーケルを
着けて潜水し、海中の様子を調査するなど、派手なパフォーマンスを展開
した。

  中国が"岩"と呼ぶ、この日本最南端の"島"をめぐる論争は、日中関
係悪化の象徴的現象のひとつでもあり、海外にも伝えられている。

  日本政府があくまで"島"と主張する沖ノ鳥島は、海外の第三者の目に
どう映るのか、英語圏大手メディアの報道の要約をご紹介しよう。


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『ウォールストリート・ジャーナル』(米)  2005年2月16日付
      −礁か岩かで、困難な立場に置かれる日本
          問題水域の権利主張のために、慈善団体が沖ノ鳥島の利用法を模索

 愛国的なプロジェクトを支援する慈善団体、日本財団のヤマダ・ヨシヒ
コ氏は、東京から1100マイル南の、紺碧の太平洋に孤立する無人の珊
瑚礁、沖ノ鳥島の経済的活用法を模索している。

  日本は長年、沖の鳥を"島"とし、その領有権とともに周辺200海里
の排他的経済水域(EEZ)の権利を主張してきた。

  ところが、昨年4月、中国が突然、沖の鳥を"岩"と見なすと言明した。

  中国の関心は、沖の鳥の位置にある。すなわち、台湾有事の際に、米軍
のグアム基地から出動する軍艦が通過すると予測されるルート上に位置
しているのだ。
  中国はこの海域での調査に力を入れているが、これは、有事の際に中国
の潜水艦が米軍の空母を迎撃できるようにすることを目的としていると
され、日本は中国によるEEZの侵害だと激しく抗議している。

  しかし、米国をはじめとする海洋法や領土問題の専門家たちは、中国の
主張が有効だと語る。
  1982年に制定された国連海洋法条約は、居住者がいるか、もしくは
自立的な経済活動が行われている島の周囲にだけ、EEZを設定できると
している。
  だが、沖ノ鳥島はずっと無人であり、環礁全体の中で、マットレスぐら
いの大きさの2つの巨礫(注:直径256ミリ以上)が辛うじて海面に突
き出ているだけだ。

  日本の立場は、大西洋上に突き出た無人の花崗岩、ロコール島の周囲に
EEZの設定を試みた、英国の立場と似ている。英国政府は、1990年
代に他国の反対を受け入れ、ロコール周辺のEEZ設定の主張を取り下げ
た。
  ハワイ大学の海洋法専門家、ジョン・ヴァン・ダイク教授は、沖の鳥周
辺のEEZ設定には説得性がない、と語る。

  日本は、沖の鳥の消滅を防止するために惜しみない努力を払ってきたが、
経済活動の創出にはほとんど何もしていない。
  日本は2億5000万ドル以上もかけて、2つの巨礫を台風から保護す
るため、それぞれ厚さ83フィートのコンクリートの堤防を築き、さらに
小さな巨礫にチタニウムを被せ、波による侵食を食い止めている。

  日本財団のヤマダ氏は、有人の珊瑚礁研究施設や、刑務所建設などの提
案を吟味した。

  日本の官僚や政治家は、日本財団の努力を歓迎している。
  石原都知事は、ヤマダ氏に、この水域を漁場にするために5憶ドルを出
すと約束した。

  国土交通省も、ヤマダ氏の提案が何であれ、許可すると述べている。
  同省のカドユ・カツノリ氏は、民間からの提案を歓迎すると語った。

  北京の大学教授は、「これは日本政府の、新たな数ある強行軍的アプロ
ーチのひとつにすぎない」と語る。

  これまでのところ、ヤマダ氏は、2つのプロジェクトに出資しようと決
めている。
  ひとつは、有人の灯台を設置することだ。

  もうひとつは、沖の鳥を少しずつ広げて、島民の居住を可能にするプロ
ジェクトである。
  珊瑚の育成を促進し、さらに有孔虫を集めて砂を作り、島自体を大きく
する計画だ。

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  読んでのとおり、日本のメディアが独自取材で伝えないこと満載の記事
である。

  まず、2005年初頭から活発化した沖ノ鳥活用法模索の裏で、日本財
団という愛国チックな団体がさかんに動いていたこと。

  そして、沖の鳥が軍事的に重要な水域に位置し、日本によるEEZ設定
は米海軍に利益をもたらすこと。

  加えて、沖の鳥を"島"とする日本政府の主張が、国際的に分が悪いこ
と。
  日本政府が国際機関に調停を依頼しないのは、外務省が何と言い訳しよ
うと、どうやらこのへんにあるようだ。

  大人の国連安保理常任理事国の英国は、他国の批判を受け入れて柔軟に
対応したが、日本政府はこのまま意地を張り続けるのだろうか?
  ま、米政府に圧力をかけられているんだとしたら、やはり日本政府は、
産経新聞路線を続けるしかないのかもしれない。
  何てったって、産経新聞には、米政府がついてるんだから。

  産経新聞と米政府の蜜月ぶりは、こちらを参照↓
米政府のブイブイ対日メディア攻勢4
米政府のブイブイ対日メディア攻勢5

  さらに戦後日本では、米政府がCIAを通じて日本の右翼を操作してき
た経緯があり、日本財団が活発に動いていたというのも、妙に納得できる。
 そういえば、2005年2月に日本政府が所有することになった尖閣諸
島の魚釣島の灯台も、1978年に、右翼団体が設置したんじゃなかった
け?

 どうやら、右翼と体制が、堂々と接近しつつある様子・・・・・・

続く