活動ゴジラ・怪獣関連特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観+α

特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観

『スター・ウォーズ』サーガの変節と米帝国主義の肥大 3-6



 だが、そのルーカスご執心のCGにしても、効果的に使われているかといえ
ば、そうでもない。
 全編に合成のないカットが見あたらぬほど、むやみやたらとCGを濫用し、
ここまでくると食傷気味だ。

 たとえば、都市の風景では、必ずおびただしい数の乗り物が空中を行き交っ
ている。これらの乗り物は、いつでもどこでも、同じようなパターンで、道路
のように定められた空間内を整然と飛行しているが、場所によって無法地帯を
作るなど、変化をつけてもいいだろう。

 だが、それよりも気になるのは、共和国首都コルサントでの屋内シーンだ。
 コルサントの建築物には、なぜか一様に大きな窓があり、外の景色が見える。
当然、外を行き交う乗り物の流れも遠景の一部として目に入るのだが、まるで
いつも背景につきまとうショウジョウバエのようで、うるさくて目障りだ。
 しかも、どの部屋も大きな窓がついた設計で、コルサントには窓のない建物
がないのか、と考えてしまうほどである。
 ちなみに、ルーカスは、旧三部作に新たにデジタル技術で修正や追加を施し
た特別編を製作した。たとえば、『帝国の逆襲』の特別編では、1980年のオリ
ジナル作品で壁になっていた部分に、わざわざCGで窓やバルコニーを作り、
市街の風景や動く乗り物などをはめ込んだ。
 ルーカス自身は、画面に壮大な広がりが出たとえらくご満悦なのだが、そこ
に外の風景を見せる必要性が感じられなかったり、かえって臨場感をそぐ結果
になった場合すらある。
 例としては、空中都市の建物の中で、レイアたちがハン・ソロを救出するた
めに廊下を走るシーンや、敵兵と交戦するシーンが挙げられる。緊迫したシー
ンなのだから、むしろオリジナルの壁のままの方が、閉塞感が出て効果的なの
だが。

 つまり、せっかくの最新鋭のCG技術も、ただやみくもに使うと、マイナス
になることもあるのだ。
 どんな技術にでもいえることだが、適材適所、メリハリをつけて用いないと、
効果をフルに発揮しない。

 しかし、ルーカスは、『エピソード2/クローンの攻撃』で、まるでイラク戦
争でハイテク兵器をひけらかす米軍のように、これでもか、とCGを見せつけ
る。
 それは、この作品の中で、何の自制もなく、ライトセイバーをブンブン振り
回す、ジェダイ騎士団の姿とも重なる。
 小手先の技ばかりにとらわれ、ストーリーを語るという根本的な作業をおろ
そかにした本末転倒なその姿勢は、再三指摘してきたように、新三部作のヒロ
イン像にも顕著に現れている。
 ズシリと重い銃を両手で抱えながらブッ放していた旧三部作のレイアと、水
鉄砲のように軽いオモチャのような銃を片手で振り回し、パキュン、パキュン
と撃つ新三部作のパドメ……。
 この二人の落差は、サーガの変節を象徴するものである。

 どうやら、フォースという恐るべきパワーを思いのままにし、これに溺れて
暗黒面に踏み出したのは、アナキンだけではないようだ。
 CGというフォースを手にしたルーカスもまた、喜びのあまり正常な判断力
を失い、暗黒面に転落してしまったのではないだろうか。

つづく