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ヨーダの果敢な奮闘もむなしく、分離主義者の指導者・ドゥークー伯爵は、 まんまと逃げ去った。だが、クローン軍の活躍で、事態は一応収拾する。 オビ=ワンは、クローン軍のおかげで一件落着したと安堵するが、ヨーダは クローン戦争の始まりを予言する。共和国では、今回の一件をきっかけに、強 大なクローン軍を保持することになった。 一方、アナキンとパドメは、夕陽に包まれたナブーの湖畔で、ひっそりと結 婚式を挙げる。 『エピソード2/クローンの攻撃』は、銀河共和国をめぐる騒乱を背景に、秀 でたジェダイの資質を持ったアナキンが、暗黒面へと踏み出す過程を描いた、 壮大な物語である。しかしながら、前作を超える最先鋭の特撮を駆使した、息 をのむほど美しく精緻な映像の連続を、素直に楽しむことができない。 その最大の原因は、役者の演技にある。前作『エピソード1/ファントム・メ ナス』では、クワイ=ガンがジェダイの威厳を保ち、全編を引き締めていた。 演技の点で大きな問題を抱えていたのは、パドメ・アミダラぐらいだった。 |
ところが、クワイ=ガン亡き後の展開を描いたこの作品では、メインの登場 人物全員が、あまりにも軽すぎて、感情的にストーリーに入り込めないのであ る。 アナキンとパドメについてはすでに詳述したが、オビ=ワンもクワイ=ガン とはまったく比較にならないほど浮ついている。この映画では、オビ=ワンに ジェダイの尊厳が託されているのに、彼はその重い役割を担いきれていない。 それどころか、旧三部作に登場する、いかにも老騎士然とした品格のあるオ ビ=ワンとの落差に、戸惑うばかりである。若気の至りといえばそれまでかも しれないが、ここまでギャップが大きいと、アナキンからダース・ヴェイダー への変身よりも、オビ=ワンの豹変に関心が向いてしまうほどだ。次回作では、 この落差をどう埋めるつもりなのだろう、と。 彼の英語のアクセントも、気になるところだ。若き日のオビ=ワンは、大衆 的な発音で話す。ところが、旧三部作のオビ=ワンは、上流階級のアクセント で厳かに語る。サッチャー元英首相がかつて発音矯正の特訓を受けたように、 彼もこれから、上流階級のアクセント修得の修行でもするのだろうか。 また、名優とされる出演者たちも、なぜかこの映画ではダイコン役者に見え てしまう。 メインの登場人物全員がここまで無表情で無機的だと、周囲を驚異の特撮映 像で飾れば飾るほど、空疎な感じがするのだ。 |
さらに、繰り返し指摘してきたように、人間描写が浅すぎる。とくに、パド メは、ストーリーを牽引する重要な役柄でありながら、着せ替え人形に終始し、 エネルギーがまったく感じられない。 ルーカスは、この作品で致命的なミスを犯した。 実は、当初は、映画の冒頭部分で、パドメが元老院で強大な共和国軍設立に 反対を唱えるシーンが予定されていた。しかも、撮影も合成もセリフの録音も すでに完了していたのである。 市販のDVDに、削除されたシーンとして納められた映像を見ると、このシ ーンが、いかに必要不可欠なものだったかがわかる。 なぜなら、そこにはパドメの政治家としての信念が描かれていたのだ。 完成作品を観たかぎりでは、パドメの政治的立場すら判然としないが、もし このシーンが生かされていたら、彼女が武力を否定し、情熱的に政治に打ち込 んでいることが、伝わっただろう。そして、彼女が命を狙われる理由も、明確 に説明がつく。 ところが、ルーカスは、映画のテンポがもたつくという理由で、あえてこの シーンをカットしたのだ! これこそ、彼がパドメの内面に関心を抱いていないことを示す、動かぬ証拠 である。パドメばかりか、彼は他のキャラクターの人間像にも興味がなさそう だ。 CGの魔力に溺れた彼は、ITに浮かれ騒ぐ米国社会のように、文字どおり 目先の事象に心を奪われ、物語を語ることを忘れてしまったようである。 |
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