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さて、刑場では、凶暴な怪獣たちが、オビ=ワンとアナキンとパドメを襲っ た。三人が怪獣たちの攻撃をかわすと、今度は彼らにドロイド部隊が向けられ た。 その時、ジェダイ騎士団がスタジアムに現れ、三人に加勢する。 本来ならば、胸のすくような山場なのだが、失笑を禁じえない。集団で応援 に駆けつけたジェダイ騎士たちが、えらく滑稽なのである。さまざまな種族の ジェダイ騎士たちが、思い思いにライトセーバーを振り回し、中にはカンフー 風に戦うジェダイ騎士までいて、荘厳な静のイメージにはほど遠い。ジェダイ の剣法には型などないらしく、てんでんバラバラだ。 これでは、崇高な騎士団というよりは、まとまりのない粗暴なチャンバラ軍 団といったほうが正しかろう。 |
ジェダイ騎士たちとパドメは健闘するものの、ドロイド部隊の圧倒的数量に はかなわず、追い詰められてしまう。 そこへ、ヨーダがカミーノ星で製造されたクローン軍を率いて、さっそうと 登場。クローン軍は圧倒的な強さを示し、ドゥークー伯爵は逃亡する。 オビ=ワンとアナキンは、伯爵を追うが、二人とも元ジェダイ騎士の伯爵に 太刀打ちできず、ピンチに陥る。 すると、ヨーダが姿を現し、伯爵と対決。伯爵は、ヨーダの元弟子で、二人 の力は拮抗していた。 先述したとおり、ここでヨーダが大活躍するのだが、あまりに突拍子もなく て、腹の皮がよじれてしまう。 大げさな表情で、伯爵とのフォース合戦に臨むが、決着がつかない。そこで、 ライトセイバーで勝負することになるのだが、ヨーダはこともあろうに、ディ ズニー・アニメのキャラクターよろしく、めまぐるしく回転しながら宙を舞い、 小さなライトセイバーを目いっぱい振り回すのだ! まるで、この映画を象徴するかのような、軽やかな、否、軽すぎる舞である。 ああ、あの崇高なジェダイの師は、いったいどこへ行ってしまったのだろう! |
前作までは、パペットという手段で表現されていたヨーダは、この作品から CGアニメに変わった。 『帝国の逆襲』以来サーガに連続出演してきた、人間の操作によるヨーダは、 多少動きにぎごちなさが見受けられたものの、温もりのある血の通ったキャラ クターだった。パペットとはいえ、顔の表情も豊かで、人間臭く、強烈な存在 感を放っていた。 今回、ヨーダをCG化するにあたり、製作者たちは旧作のヨーダを徹底的に 観察・分析し、髪の毛はもちろん、彼がしゃべる時に揺れるトンがった耳の動 きまで忠実に再現したという。 しかしながら、前にも触れたとおり、表情やしぐさが、どうしてもセル・ア ニメのように不自然に大げさになりがちだ。一方、人間がパペットを操作する ことで得られた、偶発的な微妙な動きは排除される。 しかも、やはりそこにものが実在することで発せられる、手ごたえのある存 在感が失われた。 さらに、新三部作では、ヨーダの人格も大きく変わった。 旧三部作のヨーダは、厳しいながらも、ひょうきんな師であった。どことな くやんちゃな妖精のような、好好爺といった風情をたたえていた。厳格な師匠 でありながら、おちゃめな老人という対極の特性が融合し、彼の深さと寛さを 表していた。 偉大な師とされる人物は、えてしてこのふたつの相反する特性を持ち合わせ、 人間的な魅力で弟子を導いていくものである。 そこへいくと、新三部作のヨーダは、ずいぶんエラそうで尊大だ。旧三部作 でみられた、くだけた印象はなく、人間的な厚みが失われている。 まさか、そのぶん、あの滑稽きわまる決闘シーンで、穴埋めしたわけではあ るまいが。 ルーカスは、ヨーダのCG化にあたって、パペットにはできないことをやら せよう、と意気込んだに違いない。だが、CGの魔法に目が眩みすぎて、これ まで丹精込めて積み上げてきたものを、すべてぶち壊しにしてしまったのだ。 仏作って魂入れず。ルーカスの魂は、遠く天外の彼方へと飛んで行ってしま ったのだろうか。 |
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