活動ゴジラ・怪獣関連特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観+α

特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観

『スター・ウォーズ』サーガの変節と米帝国主義の肥大 3-4



 さて、刑場では、凶暴な怪獣たちが、オビ=ワンとアナキンとパドメを襲っ
た。三人が怪獣たちの攻撃をかわすと、今度は彼らにドロイド部隊が向けられ
た。
 その時、ジェダイ騎士団がスタジアムに現れ、三人に加勢する。

 本来ならば、胸のすくような山場なのだが、失笑を禁じえない。集団で応援
に駆けつけたジェダイ騎士たちが、えらく滑稽なのである。さまざまな種族の
ジェダイ騎士たちが、思い思いにライトセーバーを振り回し、中にはカンフー
風に戦うジェダイ騎士までいて、荘厳な静のイメージにはほど遠い。ジェダイ
の剣法には型などないらしく、てんでんバラバラだ。
 これでは、崇高な騎士団というよりは、まとまりのない粗暴なチャンバラ軍
団といったほうが正しかろう。
 ジェダイ騎士たちとパドメは健闘するものの、ドロイド部隊の圧倒的数量に
はかなわず、追い詰められてしまう。
 そこへ、ヨーダがカミーノ星で製造されたクローン軍を率いて、さっそうと
登場。クローン軍は圧倒的な強さを示し、ドゥークー伯爵は逃亡する。
 オビ=ワンとアナキンは、伯爵を追うが、二人とも元ジェダイ騎士の伯爵に
太刀打ちできず、ピンチに陥る。

 すると、ヨーダが姿を現し、伯爵と対決。伯爵は、ヨーダの元弟子で、二人
の力は拮抗していた。
 先述したとおり、ここでヨーダが大活躍するのだが、あまりに突拍子もなく
て、腹の皮がよじれてしまう。
 大げさな表情で、伯爵とのフォース合戦に臨むが、決着がつかない。そこで、
ライトセイバーで勝負することになるのだが、ヨーダはこともあろうに、ディ
ズニー・アニメのキャラクターよろしく、めまぐるしく回転しながら宙を舞い、
小さなライトセイバーを目いっぱい振り回すのだ!
 まるで、この映画を象徴するかのような、軽やかな、否、軽すぎる舞である。
 ああ、あの崇高なジェダイの師は、いったいどこへ行ってしまったのだろう!
 前作までは、パペットという手段で表現されていたヨーダは、この作品から
CGアニメに変わった。
 『帝国の逆襲』以来サーガに連続出演してきた、人間の操作によるヨーダは、
多少動きにぎごちなさが見受けられたものの、温もりのある血の通ったキャラ
クターだった。パペットとはいえ、顔の表情も豊かで、人間臭く、強烈な存在
感を放っていた。

 今回、ヨーダをCG化するにあたり、製作者たちは旧作のヨーダを徹底的に
観察・分析し、髪の毛はもちろん、彼がしゃべる時に揺れるトンがった耳の動
きまで忠実に再現したという。
 しかしながら、前にも触れたとおり、表情やしぐさが、どうしてもセル・ア
ニメのように不自然に大げさになりがちだ。一方、人間がパペットを操作する
ことで得られた、偶発的な微妙な動きは排除される。
 しかも、やはりそこにものが実在することで発せられる、手ごたえのある存
在感が失われた。

 さらに、新三部作では、ヨーダの人格も大きく変わった。
 旧三部作のヨーダは、厳しいながらも、ひょうきんな師であった。どことな
くやんちゃな妖精のような、好好爺といった風情をたたえていた。厳格な師匠
でありながら、おちゃめな老人という対極の特性が融合し、彼の深さと寛さを
表していた。
 偉大な師とされる人物は、えてしてこのふたつの相反する特性を持ち合わせ、
人間的な魅力で弟子を導いていくものである。
 そこへいくと、新三部作のヨーダは、ずいぶんエラそうで尊大だ。旧三部作
でみられた、くだけた印象はなく、人間的な厚みが失われている。
 まさか、そのぶん、あの滑稽きわまる決闘シーンで、穴埋めしたわけではあ
るまいが。

 ルーカスは、ヨーダのCG化にあたって、パペットにはできないことをやら
せよう、と意気込んだに違いない。だが、CGの魔法に目が眩みすぎて、これ
まで丹精込めて積み上げてきたものを、すべてぶち壊しにしてしまったのだ。
 仏作って魂入れず。ルーカスの魂は、遠く天外の彼方へと飛んで行ってしま
ったのだろうか。

つづく