活動ゴジラ・怪獣関連特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観+α

特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観

『スター・ウォーズ』サーガの変節と米帝国主義の肥大 1-4



 そして、旧三部作の完結編『ジェダイの復讐』(1983年)では、ルークとレ
イアが双子の兄妹であったことが判明し、戦いはいよいよ最終局面へと向かう。

 帝国軍は、第1作にも登場した最終兵器”デス・スター”の改良型を、新た
に建造していた。建造中のデス・スターは、惑星エンドアの衛星から発射され
るシールドで防御され、帝国の皇帝自らが、現場に赴いて指揮を取っていた。
 以上の情報を入手した反乱軍は、エンドアの衛星上のシールド発生装置を破
壊し、デス・スターを攻撃して、一気に勝負に出る作戦を立てた。
 
 だが、すべては、ルークをおびきよせるために皇帝が仕掛けた罠だった。皇
帝は、ずば抜けて強力なフォースを持つルークを、自分の配下に置きたいと望
んでいたのだ。
 一方、ルークは、父のダース・ヴェイダーを暗黒面から救い出そうと決意し、
自らヴェイダーの元へ投降するが、皇帝の前に連行され、親子対決を迫られる。

 皇帝は、罠にはまって窮地に陥る反乱軍の戦況をルークに見せつけ、怒りを
誘った。だがルークは皇帝の誘惑に抵抗し、ヴェイダーに改心を説く。しかし
ヴェイダーもルークの心を読みながら、激しく息子を揺さぶった。ヴェイダ
ーの挑発に乗ったルークは、ついにライトセイバーで彼をねじ伏せる。皇帝は、
ヴェイダーを倒して後釜に座れ、とそそのかすが、ルークはこれを拒む。しび
れを切らした皇帝は、ルークの命を断とうとするが、傍らで息子の悲鳴を聞い
ていたヴェイダーが、自らの命と引き替えに皇帝を倒す。アナキン・スカイ
ウォーカーに戻ったヴェイダーは、ルークに礼を述べて、絶命する。

 ルークとヴェイダーの凄絶な綱引きは、父子の絆の深さと宿命を表すシーン
だが、同時に二人の葛藤は、新しい世代が古い価値観を打ち破る課程をも連想
させた。そこには、次々と新しいものを生み出すアメリカが、重複する。また、
決して権力者に屈しない、誇り高き反骨精神もうかがうことができた。
 一方、エンドアの衛星に着陸したレイアとハン・ソロらは、原住民のイウォ
ーク族の助けを借りて、シールド発生装置を破壊し、反乱軍のデス・スター攻
撃を成功に導いた。イウォーク族は、クマの縫いぐるみのような、愛敬のある
小柄な種族で、森林の中で原始的な生活を営んでいる。いわゆる”未開の原住
民”を利用した、アメリカお得意のご都合主義的な戦術ではあるが、非力でロ
ウテクなイウォークたちが、ハイテク帝国軍を圧倒する様は愉快だった。

 特撮の目玉は、森の中でのチェースや、数々のユーモラスで異様な宇宙生物。
日本の文楽にヒントを得て操作した怪獣ランカーは、出色の出来ばえだった。
また、宇宙の空中戦も、さらに複雑な合成でグレードアップされた。

 ルーカスは、本作でもリチャード・マーカンドを監督に迎え、自らは製作総
指揮を務めた。前2作と比較すると、役者も老けてマンネリの嫌いもあるが、
すべてが納まるところに納まり、冒険活劇の完結編としては一応合格点だろう。
 
 ルーカスの若々しい感性がスクリーン一杯に弾けた旧三部作は、日本でも熱
狂的に迎えられた。
 日本では、1976年から1983年まで、特撮の横綱「ゴジラ」シリーズの製作が
中断されており、『スターウォーズ』サーガの、シンプルでわかりやすいスト
ーリーと驚異的な映像は、ちょうど国内特撮不毛の時代を迎えていた日本の特
撮ファンの飢えを満たした。

つづく