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日没後も、探索は続けられた。照明の光が、暗闇に立ちこめた霧 に反射し、白くにじむ。そのぼんやりと薄白い空間に集合した科特 隊員に、パリ本部隊員が打ち明ける。 「諸君、あれは怪獣ではありません。あれは、いや彼は、我々と 同じ人間なのです」 |
かつて大国間で熾烈な宇宙開発競争が繰り広げられていた頃、某 国の有人衛星が行方不明になった。だが、某国は、人間を犠牲にし たことが明るみに出るのを恐れ、この事件をひた隠しにした。有人 衛星に搭乗していた宇宙飛行士ジャミラは、水のない星に漂着し、 変わり果てた姿となって生き延び、地球の全人類に対する恨みと呪 いの心だけを持って、宇宙船を建造し帰還したのである! |
真実を告げられた科特隊員たちは、驚きのあまり、息を飲む。ア ンニュイなBGMが、逆光でとらえた隊員たちの沈痛な表情を、さ らに深い闇へと引きずり込む。とりわけ、新兵器を開発したイデは、 激しく動揺した。「よく考えてみりゃ、ジャミラはオレたちの先輩 じゃないか!その人と戦えるか!」 彼はまくしたてる。「オレた ちだってなぁ、オレたちだってなぁ、いつジャミラと同じ運命にな るかもしれないんだぞ!」 しかし、パリ本部隊員は、冷徹に命令を下す。「ジャミラの正体 を明かすことなく、秘密裡に葬り去れ。宇宙から来た一匹の怪獣と して、葬り去れ。それが国際平和会議を成功させるただ一つの道だ」 |
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