活動ゴジラ・怪獣関連特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観+α

特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観

『ウルトラマン』・現想夢譚バージョン2002<1>



 それは、アフガン復興支援国際会議が東京で開かれる年であった。
だが、その年……都内で爆発事件が相次いだ。しかも、その犯人は、
杳として不明であった。いずれの事件も、路上や公園に爆発物が置
かれ、不特定多数を狙った連続テロ行為を彷彿とさせた。
 そして、国際会議開幕を迎えた2002年1月21日、東京は激
しい雨と雷鳴に見舞われた。 
空から榴弾のごとくたたきつける無数の水滴に、大地を揺るがさん
ばかりの轟音がこだまする。それは、世界各地から集結した要人に
向けて発せられた、無念の叫びのようにも聞こえた。
 この日、暗い空を見上げながら、米国多発テロに端を発したアフ
ガン攻撃の無数の犠牲者たちに思いを馳せずにはいられなかった。
戦争から復興への道のりは、これらの犠牲者の上に成り立っている
のだ。雨は、犠牲者たちの怨嗟を封じ込めるかのように、東京に降
り注いだ。その音は、私の脳裏に刻まれた、ある水の音を呼び起こ
した。
 泥だらけになりながら地面を転げ回り、激しく悶絶する醜悪な化
け物を、容赦なく打ちつける水。エレファントマンのような奇怪な
体型、ヒビ割れた皮膚、くぼんだ目は皓皓と光り、鼻はわずかに痕
跡をとどめるだけ。血のように赤い口が、赤ん坊の泣き声にも似た、
凄絶な悲鳴を放つ。苦痛にもだえる怪獣ジャミラに、ためらいもな
く冷たい水を噴射するのは、無表情な銀色の巨人、ウルトラマン。
 「故郷は地球」と題するこの物語は、青空にはためく万国旗でス
タートする。東京で国際平和会議の開催が予定されたある年に、世
界中で原因不明の航空機・船舶事故が発生。パリに本部を置く国際
警察機構は、一連の事件を国際平和会議に対する妨害工作と推測し、
その日本支部である我らが科学特捜隊に、本部隊員を派遣する。そ
の後、一連の事故が不可視飛行物体の仕業であることが判明し、科
特隊きっての発明家・イデ隊員が飛行物体を可視化する放射線銃を
開発。白日の下に姿を晒した円盤は、科特隊機によって撃墜され、
その墜落地点から巨大な怪獣が現われる。虚ろな咆哮を上げながら、
山の中に消える怪獣。科特隊はその行方を追う。

続く