この破損では、ボディーは丸ごと交換するしかないだろう。
この事故が発生した時、新聞社の記者クラブでは事故発生の急報
の無線を素早く傍受したのだが、記者連中は行くか、行かないか?
で、迷っていた。何故なら、事故現場は新聞社の在る中心街からだいぶ
はなれていて、車で飛ばしても30分近くかかる場所だった。
それより負傷者が出ているので、中心街に在る救急センターに行ったほうが良い
のではないか?と、考えていた。
しかし、救急センターに行っても中には入れさせてくれない事は過去の
経験で分かっていたので、とりあえず事故現場に行こうと言う事になった。しかし、
僕ら取材チームが出発したのは、事故発生から40分も経っていた。悪い予感が
していた。「何処かの新聞社はもう既に到着していて、血まみれの負傷者を撮っ
ているにちがいない」と、僕は予感してた。
そして現場に到着した時にその悪い予感は的中した。負傷者は既に救急セン
ターに搬送されていて、先に到着した別の新聞社は、血まみれの女性を撮影して
引き上げた後だったと、現場に居た野次馬から聞いた。その新聞社は当然なが
ら、次の日、紙面一面に堂々と血まみれの女性の写真を掲載した。僕らのチーム
は完全に敗北し、デスクの部長から大目玉を食らう羽目になった。 |