ジャワ海に浮かぶ千の島々。JAL(日本航空)がリゾート開発を
し、一時注目された時期があった。アンチョールの港から高速艇で島ま
で行って一日遊んでくるというものだった。
そのオプション・ツアーに私も申しこんだ。当時私は20才代前半
で、その頃、友人がモルディヴの海の蒼さを私に熱心に語ってくれたも
のだから、一度海外の”あおい海”なるものを見てみたかったのだ。
ツアーデスクで申しこみ、出発の時刻・出発の桟橋の番号を確認す
る。No.は21。一日遊んでくるだけの簡単な荷物をバッグに詰め、
翌朝はやくにTAXIで港にむかった。安心のブルーバード・TAX
I.ジャカルタで1番信頼度が高いと聞いていた。そのウワサどうり運
転手のお兄さんは礼儀正しく好青年だった。港についてNo.21の波
止場はどこかと通がかりの人に訪ねると、指をさした方向に大きな船
が。「あ〜、アレかぁ」、”立派な船やわぁ”と感心する間もなく、私
は自分の目を疑った。数十m先に浮かぶ高速艇は、既に波止場からはな
れているじゃあないか!わたしの立っている場所から見ると波止場と船
の間には2cmほどのスキ間があいていたのだった。あれほど確かめた
出発時刻、時計をみるとちょうどその時刻だけれど、ずいぶん早いじゃ
あない。
私はがく然としてしまった。ずっと期待していた”あおい海”なの
だ。またホテルに戻っても何をすればいいか思いもつかない。また明日
に、と言ってももう旅行の日程に余裕がなかったのだ。しばらくボーゼ
ンとしている私に声をかける人がいた。しばらく気づかなかったけれ
ど、
−あぁ私に話しかけているのか、この人。−
我に帰りよく聴いてみると片言の日本語で、私に ”どうしたんです
か?” と聞いている。”どちらに泊まっているんですか?オシゴトで
こちらへ?” 紳士的な態度だったが私は警戒していた。
船に乗り損ねたことを話し、TAXIをよぶにはどうすればいいかを
聞こうとした時、そのお腹の出た紳士が ”よかったら私の島に来ませ
んか?” と言った。眼をまるくしている私に”日本の方もいます。私
は行きませんが女性のガイドが行きますから” と。私は決して冒険し
たいワケではないが、”この先に行ける、この話の先には何があるんだ
ろう?”好奇心のほうが不安感より勝った。 見てみたい、聞いてみた
い、この先の感触はどんなだろう、、、、。
せいぜい10人も乗ればいっぱいになってしまう漁船のような船に日
本人男性とジャワ人女性のカップルがいた。申しこんだハズのツアーは
JALのリゾート島に行く豪華高速艇。それで行っていれば、島から張
り出された桟橋にまず最初の一歩をふみだすはずだった。クルーに手を
とられ、観光客として丁重に扱われたにちがいない。でも私が実際にふ
みだしたのは、藻がうちよせる海で最初の一歩はなまぬるい海水、波が
ひくと海草が足にからまりつき、バシャバシャと砂辺に上陸していった
のだ。
|