閑話休題、バリ島の話しをひとつ。
コック・ファイティング −闘鶏−
バリ島に行ったことのある人なら、闘鶏−とうけい−名前くらいは聞いたことがあるとおもう。
道端に逆さにふせた籠の中に、ニワトリが入れられているのを見たことがあるはずだ。
二羽のニワトリを闘わせてどちらが勝つか金をかけるギャンブルである。
ニワトリの片足に小さなナイフを糸でまきつけて闘わせる。
竹籠にニワトリを入れて大事そうに村の集会所に運ぶ男たち。籠から出して愛おしそうに
撫でている。ニワトリ自慢をしながら、男衆はおしゃべりしている。
みな、よく喋る。「男はだまってタバコをふかす」そんな日本的男性からすると
「ちょっと、こいつらなんやねん」とおもうが、南国の男は素直だ。
コピ(バリ・コーヒー)や、エス・チャンプル(氷菓子)を出す屋台があり、そこにだけ
女の姿がある。ギャンブルは男のものなのだ。
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バリ島 村の人はみな和やか
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私にニコニコと話しかけてきたおじさんはバリ舞踊の先生をしているという。
村の人は農業の傍ら、バリ舞踊や絵画、ガムラン隊(青銅の楽器)の一員を担っている。
バンジャールという村組織があり、(町内会みたいなものだろうか)ゴトン・ヨロン
相互扶助の精神で成り立っている。
舞踊の先生はバリ・コピのグラスを手にもっていた。
コーヒーの粉と砂糖をグラスに入れ、お湯を注ぐ。インスタント・コーヒーと同じ
要領だ。簡単である。エス・チャンプルも、エスはアイス、チャンプルは混ぜるの
意味どおり、小さく切ったマンゴーや、着色料たっぷりの寒天と氷をまぜたもの。
日本式に言えば、「フルーツ入りかき氷」
その舞踏先生は、暑い中、熱いコピを飲んでいる。
チラっとグラスを見ると、ほとんど黒色に近いコピの中にまっ黄色のまあるい物が
うかんでいる。
私は驚いて
”Apa?ini. 何これ?”と聞くと ”たまご”っとにっこり返事がかえってきた。
”私は舞踏を教えていて、とても体を使う。たまごは栄養があっていいんだ。”
コーヒーに生たまご。こんな飲み物が存在していいんだろうか、、、
昔、オロナミンCドリンクに玉子をまぜて飲む、大村昆のテレビ・CMがあった気が
するが、、、。
そういえば、はるか昔うちの父親も生卵をのんでいたことがあった。
日本の高度成長期、遠い記憶だ。
バリに来て昔の古きよき時代の日本を思い出す という話しはよく聞くが、私も
バリでの出来事を思い出すと日本での古い記憶に直結してしまうことが多い。
ライス・フィールドの風景はヤシの木がなければ、日本の稲作地帯の風景に
重ならないこともない。日本人にはホッとする風景だ。
バリが好き、バリにはまるのはこんなことも理由の一つかとおもう。
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闘鶏の元締め
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わたしが昔の記憶にひたっていると、闘鶏の土俵のまわりに大勢男たちが
集まってきて、どちらが勝つかペチャクチャしゃべりはじめた。
太陽はちょうど真上を過ぎたあたりで、ジリジリと照りつけている。
闘うニワトリの持ち主は、自分の鶏がいかに強いか をわめいて、観衆に高々と
鶏を見せたりしている。元締めらしい男が、誰がどちらにいくらかけるか、
云々を 仕切っている。
この大勢のかけ人数を1人で仕切るのだ。すごい。
普段、あらゆることにルーズなバリニーズとは思えない。
それにしても、熱い。ジリジリ−−−−
と、突然、空気が変わった。急に大声が押し寄せテンションが高くなる。
ちょっと、ギョっとする。あたりの空気が熱気を帯びる。
鶏は飛びあがって、羽をひろげ攻撃をしかけている。
あっさり勝負がつくこともあるが、5分くらいバタバタとやっている。
勝負がつくと一気にテンションも下がる。
負けたニワトリはそこでおしまい。食べてもおいしくないから捨てられてしまう。
割と非情なのね、、とわたしはつぶやいた。
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repabulic INDONESIA国旗
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この闘鶏はバリ島のある村で見たのだけれど、あれから数年。
バリは今、観光開発の直中にいる。バリ・フリークだった人のなかには
”もう、私の中ではバリは終わった”と次ぎの楽園を探している人も少なくない。
でも、私はこれからもバリを見つづけようとおもっている。
たしかにイヤになるくらい観光客は増えたし、車の量もふえた。
行く度に新しい店が増え、つぶれては新しくでき、、、。
でも、「それが、何?」って言っているのがバリ人。
人の物質的欲望には切りがない。
バリではバリの楽しみ方をすればいい。
インドネシアは赤道にかかる真珠の首かざり。
その中でも群を抜いているのが、一粒のエメラルド・バリ島。
まだまだ他の真珠もたくさんあるじゃあないか。
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