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小泉ニッポン!"東アジア一人ぼっち"劇場 22

(報告:常岡千恵子)


 お次は、カナダ紙による小泉ニッポンの論評の要約をお読みいただきた
い。

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『バンクーバー・サン』(カナダ)      2006年3月22日付
     −日本の次期首相は、中国の大いなる関心事
	  


 6年間の小泉純一郎氏の政治時代が、9月で終わる。

 多くの人々は、これが、現在生きている人々の記憶の中で、日本政治の
最もエキサイティングで革新的な時代だったというだろう。

 そして、エキサイティングすぎて、もっと受動的で控えめな後継者を歓
迎する、という人もいるだろう。

 だが、小泉氏の後継者は、1億2千7百万人の日本人にとってのみの一
大事ではない。

 日本は、米国に次ぐ世界第二の経済大国であるだけでなく、アジアで最
も強力な国であり、小泉氏の下で大いに親米だった戦略的スタンスは、近
隣諸国にとって深い懸念である。

 中国の指導者たちが、より友好的な後継者が生まれるよう影響力を及ぼ
そうとしているらしいことは、驚くにはあたらない。

 彼は、第二次世界大戦に敗北し、縛りの強い平和憲法を米国から押し付
けられた60年後に、日本は"普通の国"として世界で行動できるべきだ
という意見を、推進した。

 だが、アジアでは、小泉氏は自らを、中国を潜在的戦略的脅威と見る米
政府の人たちと、結びつけているとみなされている。

 1930年代と1940年代における日本の攻撃的な軍国主義の記憶
は、この地域では決して水面下に落ち着いていない。
 小泉氏は、毎年の靖国神社参拝で、その残り火を掻き立てた。
 靖国神社には、日本の240万人の戦没者とともに、14人のA級戦犯
が祀られている。

 国民の注意を国内問題からそらすために反日感情を煽っている中国政
府は、小泉氏の参拝を脅威的行為と受け止めることにしている。
 中国政府は、全般的に小泉氏の靖国神社参拝を嫌っている日本の経済界
を味方につけようとしてきた。

 だが、中国政府でさえも、最も後継者になる可能性のある候補は、決定
的に反中国共産党の見解を持つ、2人の保守タカ派のうちの一人だと受け
止めている。

 一人は麻生外相で、もう一人は安倍官房長官である。
 2人のうち、安倍氏は、党内や国民全般の人気が圧倒的に高い。

 小泉氏も、安倍氏を推していることを示唆し、というわけで、中国政府
と日本政府の政治的競合関係は、数年は続くだろう。

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 さて、次は、北京発のロシアの気になる動きを伝えたインドの新聞記事
の要約をお伝えする。

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『ザ・タイムズ・オブ・インディア』(インド)
                     2006年3月23日付
     −大いなる核ゲーム:ロシアが中国に接近
		  


 火曜日、ロシアのプーチン大統領が、ロシアが中国で新しい原子力発電
所の建設に参加することで、核外交で重要な役割を果たそうと決意したこ
とを示唆した。

 この動きは、ブッシュ米大統領がインド政府と原子力協力で合意し、続
いてロシアがインドにウランを供給する意向を伝えたすぐ後の、できごと
だった。

 ロシアの指導者たちは、ブッシュ米大統領の訪印後に新たに生まれた良
好な印米関係を相殺するために、インドに対してより重要な役割を果たす
よう奨励していると消息筋はいう。

 プーチン氏は、ガス・パイプラインを中国まで敷設すると表明し、また
突然、長い武術の歴史と日本からの征服者たちに抵抗したことで有名な少
林寺を訪問する計画を発表して、中国人を喜ばせた。

 これは、日本の小泉首相が靖国神社を再三参拝し、かつて日本を侵略し
た武将たちに祈りを捧げていることに反対する中国人の感情を和ませる、
シンボリックな意志表示かもしれない。

 プーチン氏側近は「少林寺訪問は、大統領のアイデアだ」とタス通信に
語った。

 両国は、「水力・火力発電所のハイテク分野の設備の生産、IT、核エ
ネルギー、航空宇宙分野での協力を拡大する」ことで合意した。

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 さすがは抜け目ないロシア、ちゃっかり靖国問題を利用して、中国に接
近中の様子。
 こうやって、他国にチャンスを与えてあげるのが、寛容な日本外交の真
骨頂なのかもしれない。
 日本は、ドイツの株を上げて、EU結成にも貢献してるし。

  ロシアの微妙な立場を伝えた、インド紙掲載の論評のおさらい↓
    >>小泉ニッポン!"東アジア一人ぼっち"劇場 7


 次は、台湾に接近する日本を伝える米紙報道の要約をご紹介する。

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『ワシントン・ポスト』(米)        2006年3月24日付
     −地域の対抗意識が増すにつれ、日台関係が花咲く;
             中国を警戒する日本政府が、台湾政府に傾く



 早起きの老人たちが、この島の首都に広がる蒋介石記念公園に集った。
 そして地元市民が、450本の桜の木の植樹によって大きく変わった風
景の中で、緩やかな太極拳の動きとともに四肢を伸ばす。
 桜は、日本のシンボルである。

 第二次世界大戦中に日本と戦った指導者を記念する公園に植えられた
桜は、台湾じゅうに桜の木1万本を植えることを目標に掲げる、日本人と
台湾人の団体の最初の成果だ。

 これらの桜は、新たに花咲く太平洋の隣国同士の関係のエンブレムとみ
なされているが、この絆は、もっぱら東アジアの二大国、日本と中国によ
る地域での影響力競争を際立たせるものである。

 半世紀の平和主義を捨て、再び世界で強腰になろうとしている日本と、
大きな経済力と軍事力を獲得している中国の関係は、第二次世界大戦以降
の間で最高レベルの緊張を帯びている。

 そして台湾ほど、この競合が目に見える場所はない。
 ここ数ヶ月、日本は1895年から1945年まで日本の植民地だった
台湾に、一連の前代未聞のアプローチを仕掛けている。
 東京では、中国が台湾を侵攻したら日本が助けに行かなくてはならない、
と考える主要な政治家たちが増えた。

 多くのアナリストが、日本の台湾への傾斜が、地域の力の均衡を傾ける
かもしれないと信じている。

 多くの国がそうであるように、日本は1970年代に台湾と国交を断っ
た。

 だが最近、日本は慎重に距離を保つというルールに、こだわらなくなっ
てきた。
 麻生外相は、過去2ヶ月で2度、台湾を"国"と公言した。
 昨年、日本政府は、台湾人の入国ビザを免除した。
 そして、日本と米国の指導者たちが、初めて、台湾海峡の防衛は"共通
の戦略目標"だと共同宣言した。

 これより目立たないところでは、元陸将補の長野陽一氏が、事実上の台
北の日本大使館である交流協会で、駐在武官として勤務している。
 長野氏は、台湾政府と軍人と会談し、東京に公電を送っている。

 2004年11月、中国の潜水艦が台湾付近の日本の領海を侵犯した際、
日本の軍艦がこれを追跡した。
 この事件は、この戦略的に微妙な海域の防衛に日本がどれほどの決意で
いるかの中国によるテストだった、と広く理解されている。

 小泉政権は、米政府と共同でミサイル防衛に投資しているが、一部のア
ナリストは、台湾も最終的にこれに参加して、中国のミサイルに対す3カ
国共同防衛システムになるかもしれない、と語る。

 日本の平和憲法は、日本の軍隊の海外派遣を制限している。
 だが、日本と台湾の政治リーダーたちは、1999年の周辺事態法の拡
大解釈で、近海の脅威に対応できると考えている。
 彼らは、日本が米国とともに中国侵攻に対応するための、法的根拠とな
るだろうという。

 米政府筋は、日本の強腰のスタンスを、慎重に歓迎してきた。
 だが同時に、急激すぎる変化で、台湾の陳総統が正式な独立に向けて大
胆になり、海峡紛争を勃発させる可能性を懸念している。

 中国と日本の関係は、小泉氏が首相に就任し直ちに毎年の靖国神社参拝
を始めて以来、急降下した。
 靖国神社には、第二次世界大戦の戦犯を含む250万人の日本の戦没者
が祀られている。
 日本と中国は、東シナ海の境界や石油・ガスの採掘権をめぐり、争って
いる。

 中国人や韓国人や北朝鮮人とは対照的に、多くの台湾人は、日本の植民
地支配に好意的だ。
 高齢者は、しばしば若かった時代の公用語である日本語を、喜んで話す。

 だが、すべての台湾人がこの感情を共有しているわけではない。
 とくに、野党の国民党員は、中国との関係を重視している。

 今年、日本人と台湾人の団体が、台北郊外に、日本帝国陸軍のために東
南アジアで戦って死んだ数千人の先住民を慰霊する記念碑を建てた。
 その数週間後、地元の国民党県長が、この記念碑の大部分を撤去するよ
う命じた。

 世論調査で2008年の次期総統選挙での当選が示されている、国民党
主席の馬英九氏は、この事件を、行き過ぎた日本寄りが噴出させるかもし
れない感情のよい例だと表現した。

 馬氏は、日本の植民地時代を謳歌した台湾人は、「いまだに洗脳されて
いる」と述べた。
 そして、あの時代を懐かしむ人々抜きで、「台湾はもっとうまくやって
来れた」と言った。

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 そして、海外メディアにとっては、靖国問題と並ぶ目玉の日本トピック
である、教科書問題についての報道の要旨をご紹介したい。

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『ジ・オーストラリアン』(オーストラリア) 2006年3月31日付
     −イラクに戦争はない、と日本人はいう

		  


イラクに戦争はない、と日本の教科書検定は主張する。


 社会科の教科書の編集者が、文科省によって、日本の兵隊は2003年
末のイラク戦争中にイラク南部に派遣されたことを示す表現を削除する
よう、指導された。

 昨日、文科省は、米国主導の多国籍軍が2003年5月にフセインを倒
した時点で戦争は終結した、というのが日本政府の公式見解だと説明した。

 文科省は、申請された原稿を詳細にチェックし、削除して、歴史・地理・
公民・科学・外国語などの記述が、政府の公式基準に確実に従うようにす
る。

 そして、イラク侵略の修正について、深刻な点があげられる。
 日本の平和憲法は、戦闘地域への兵士派遣を禁止しているのだ。

 教科書編集者に課された他の公式見解は、激しい論争を呼んでいる。

 文科省は、韓国の論争の的のドクトを、日本の島根県所有の竹島と表記
するよう主張した。

 ある教科書の日韓間で交渉中だという記述は、削除された。

 1945年に日本の併合からドクトを回復した韓国人は、再び激怒した。

 日本政府は、日本の主権を主張している尖閣諸島について、中国政府か
ら同様の抗議を受けることも予想される。
 尖閣諸島は日本が管理しているものの、中国と台湾も領有権を主張して
いる。

 今年も、南京大虐殺や、帝国陸軍による朝鮮人、中国人、東南アジア人
の"慰安婦"の使用など、いつもの"歴史問題"についてのごまかしもあ
った。

 文科省は、女性たちが兵士のために性の奴隷にされたと記すのはよいが、
彼女らが軍に強制されてそのような状態に陥ったと書くのはよくない、と
規定する。

 小泉首相が、論争の的の戦争記念施設である靖国神社を参拝する写真を
掲載したある現代史の教科書は、その写真のキャプションから"公式"と
いう文字を削除された。(注:"公式参拝"から"参拝"に変更)

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『ザ・ストレーツ・タイムズ』(シンガポール)
                     2006年3月31日付
     −日本の教科書修正に、新たな抗議




韓国政府が、自国の管理下にある島への日本政府の主張に異議を唱える


 昨日、韓国が日本の新版の歴史教科書を攻撃し、教科書論争が再燃した。

 今回の問題は、日本海の両国のおよそ中間に位置し、日本の領土とされ
る竹島についての記述である。
 韓国はこの島をドクトと呼んで領有権を主張し、これを実効支配してい
る。

 韓国の外務省は、日本政府の竹島についての主張を、小泉首相の靖国戦
争神社参拝とともに、過去の歴史を「糊塗し、歪曲し、美化する」日本の「明
白な表明」だとした。

  靖国神社には、250万人の日本の戦没者とともにA級戦犯14人が祀
られ、他のアジア諸国から日本の過去の軍国主義の記念碑とみなされてい
る。

 この韓国政府の最新の抗議は、水曜日に日本の文科省が教科書検定の結
果を発表したあとに行われた。

  中国が領有権を主張する尖閣諸島についての記述も、その多くが不適切
とされた。

  検定者たちは、これらの表現は、尖閣諸島が日本の固有の領土であるこ
とを明示していない、と述べた。

  また、彼らは、南京大虐殺や慰安婦の表記についても、反対した。

  (南京大虐殺で)20万人以上の中国人が殺されたと記したある出版社
は、この被害者推定数は、多くの学説のひとつにすぎないと追記するよう
求められた。

  また、慰安婦については、日本軍が強制連行したような表記は回避する
よう、求められた。

  昨日北京で、中国の外相が、日本政府は「中国の厳粛なスタンスに真正
面から向き合う」べきだと述べた。

  一般的に、今回、新しく検定に合格した教科書は、去年、修正主義者の
執筆者たちが提出した、歴史教科書ほどの論争は呼んでいない。

  批判者たちが歴史を糊塗しているというこの歴史教科書は、日本の検定
を監視する草の根運動者たちが激しく非難しただけではなく、中国政府や
韓国政府の強い反応を喚起した。

  中国では暴力的なデモが行われ、北京と上海の日本の外交施設が被害を
受けた。

  この問題の教科書は、日本の朝鮮半島併合後の韓国人の苦しみをうまく
言い抜け、日本の中国への侵略戦争は、中国人自身のせいで起きたとさえ
申し立てた。

続く