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小泉ニッポン!"東アジア一人ぼっち"劇場 16

(報告:常岡千恵子)


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『トゥデイ』(シンガポール)                2006年1月20日付
        −天皇アキヒトが仲介者?
                日本の世論が中国・韓国と対立するなかでの発言
 
	  
 

  東南アジアから見ると、最近の展開は、日本が、増大する中国の脅威と、
いかにして1930年代と1940年代の軍事侵略と折り合いをつける
かについて、内在的不安を抱えていることを強く示している。
  日本では、平和憲法の改正と、将来の日本政府の国際的役割についての
議論が続いている。

  日本の天皇アキヒトは、12月23日に72歳の誕生日を迎えるにあた
って、日本が歴史を正しく理解するよう呼びかけた。
  妙なことに、この行為は、現在の日本に見られる国民と政府の意見の傾
向と相容れないようにみえるかもしれない。

  日本が、帝国主義の過去の遺産と歴史認識で苦闘しているときに発せら
れた天皇の言葉は、意義深い。

  小泉政権が中国政府と韓国政府と北朝鮮政府と外交的に衝突している
ときに出てきたこの発言は、天皇が仲介者としての役割を果たしているこ
とを示すものなのか?

  さらに重要なのは、彼の発言は、皇室が、日本で台頭するナショナリズ
ムと、政府の政策と世論の右傾化を懸念していることを表明しようとして
行われたものなのか?

  ちょうどその週末、内閣府が、不安を抱かせるような世論調査の結果を
発表した。
  10月に実施された毎年恒例の調査で、中国と韓国に親しみを感じる日
本人が、記録的に減少したのだ。
  それによれば、過去最高の63.4%が中国をネガティブに見ていると
答えた。

  韓国については、韓国に親しみを感じる日本人が、過去4年間ではじめ
て減少を記録し、(前年比)5.6%減の51.1%だった。
  これに対し、米国に親しみを感じる日本人は、1.4%増の73.2%
だった。

  この世論調査で、日本の世論が、アジア、とくに中国と韓国から離れ、
米国に向かっていることが確認できる。
  日本政府の政策も、新任の麻生外相による"米国第一、アジア第二"の
外交政策についての演説や、東アジアサミットでのみじめな役割に見られ
るように、同様にシフトしている。

  中国の脅威は、日本のメディアに広く表れている。
  反中、嫌韓のマンガ本が増えている。

  近隣諸国との関係のてこ入れを狙った天皇の発言は、小泉首相の靖国神
社参拝や、日本の歴史教科書や、日本の国連安保理常任理事国入りの問題
の議論のさなかで、より多くの日本人が中国と韓国を否定的に見るように
なったときに、発せられた。

  小泉氏が、任期満了までの9ヶ月間に政治的遺産を固めようとしている
のと同様、天皇も、日本の世論の舵取りをして、自分の遺産を固めようと
しているのだろうか?

  東アジアサミットでは、マレーシアのアブドラ首相が「われわれは、日
中関係を、東アジア共同体の支柱のひとつだと考えている。両国が関係を
うまく運営することが大切だ」と述べ、アセアンの懸念を表明した。

  東南アジア地域は、この議論がこの地域においてどのような意味と結果
をもたらすのか、気を揉みながら観察し、熟視している。

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  そーいえば、天皇は、日の丸・君が代も「強制にならないように」と発言
したり、2005年のサイパン慰霊では、韓国平和記念塔にも立ち寄った
りしてるけど、反応の鈍い日本のメディアを相手に、孤軍奮闘状態なのか
もしれない。

 "天皇万歳!"を叫びながら、実際には天皇のいうことをちっとも聴い
てなかった、あの時代の日本の指導層やメディアを彷彿とさせるような・・・

  ところで、在米日本大使館公使・北野充氏による、日本国の名誉回復を
狙った寄稿では、事実確認の重要性を強調していたが、上のシンガポール
紙の記事では、日本政府が公表した2005年の日韓関係悪化を示す数字
が引用されている。

  もし、この数字を故意に隠蔽したのでないとしたら、北野氏の事実確認
能力に問題アリ、と考えざるを得ない。

  "国際的"な外務省さんは、海外では、故意か無意識はあまり重要では
なく、行動そのものや結果で判断されることをよ〜くご存じですよねぇ?

   外務省が隠蔽した、2005年の日韓関係悪化を示す政府の世論調査↓
http://www8.cao.go.jp/survey/h17/h17-gaikou/2-1.html
http://www8.cao.go.jp/survey/h17/h17-gaikou/images/z07.gif

  せっかく、国際的に流通している英文紙で"事実確認"の大切さを訴え
たのに、シンガポールでは、当の北野氏が自国政府の活動をごまかしたこ
とが、バレちゃった!



  さて、お次は、2005年に、日本の常任理事国入りに積極的じゃなか
った、アフリカのメディアの小泉ニッポン報道の要旨をご紹介しよう。

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『ISI エマージング・マーケッツ・アフリカワイヤー』(南アフリカ)
                                                               2006年1月17日
          −安保理常任理事国になるため、米国に言い寄る
		  


  日本政府は、昨年の国連安保理常任理事国入りの失敗を払いのけ、より
能動的に国際的役割を果たすための鍵となる目標達成の手段として、米国
とその政策を支持することに賭けている。

  日本は、小泉首相のリーダーシップの下で、イラクの米軍を支援するた
めに"自衛隊"を派遣するなど、派手な国際的役割へと踏み出した。
  これは、海外での軍事的活動を制限する平和憲法改正を狙ってのことだ。

  そして今、イランの外相を招いて、核プログラムの中止を説得し、(国
際的)信用を勝ち取ろうとしている。

  日本は、イランの問題を国連に持ち込むことを支持する一方で、解決に
向けて外交的役割を果たせると信じている。

  別のレベルでは、現在米国訪問中の谷垣財相が、先週、国連のアナン事
務総長に、分担金の削減を警告した。

  日本は現在、国連の総予算の19.5%を拠出しているが、これは分担
金額が一番多い米国に僅差で2位だ。
  また、日本は米国に次いで世界第二のODAを拠出している。

  日本の政治家は、日本の高額な出費は国連安保理常任理事国に値すると
主張し、とっくにその資格があると指摘する。

  外務省のカタムラ・トシヒロ氏は、「常任理事国の枠組みをG4にだけ
拡大するという日本の戦略は失敗した。われわれは、国連安保理で重要な
役割を果たしている米国により接近することに、焦点を移した」と述べた。

  彼は、「われわれは、国連安保理で拒否権を持つということに焦点を置
いていない。日本は、この方面は容易に獲得できないと気づいた。主な目
標は、常任理事国の数を増やすことだ」とも語った。

  たとえば、日本と米国は、昨年10月、国連の予算承認に反対した。

  実に、日本のアナリストたちは、米国を無視してG4案を推進した昨年
の日本の無残な失敗を、非難した。
  米国は日本の常任理事国入りは支持したが、ほかの国については支持し
なかった。

  1月5日、ブラジルとドイツとインドは、日本抜きで、国連安保理常任
理事国の枠組み拡大案を提出した。

  5カ国の常任理事国を擁する国連安保理の改革は、日本の十数年来の重
要な外交目標だった。

  小泉氏とその過剰な米国寄りのスタンスに批判的な人たちは、靖国神社
を再三参拝し、第二次世界大戦中にアジアで行われた残虐行為の戦犯に敬
意を表するなど、日本は中国のような大国の感情にじゅうぶん気を遣って
こなかった、と警告してきた。

  中国が中心となって日本の常任理事国入りに反対したが、カタムラ氏は、
「日本は米国と緊密に連携する一方で、日本政府は、中国の支持を得るた
め、中国との対話も始めた」と語った。

  今秋、創設60周年を迎える国連が、変革を進めていることもあり、日
本では国連改革について熱い議論が交わされている。

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  結局、日本政府は、2006年1月にイランの核問題を解決できなかっ
た。

  2005年に国連安保理常任理事国入り問題で、日本を一杯食わせたア
フリカだけど、2006年はどう出る?


続く