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『イラク チグリスに浮かぶ平和』試写会

(加藤健二郎 2014.9)


 2003年のイラク戦争開戦時から2013年まで、イラクの一般庶民に密着したドキュメント映画。日本のドキュメント映画というと、重苦しくて長いというイメージあるが、この映画には、うまくストーリー性やサプライズも盛りこめられていて、特にイラク対する問題意識をもっていない人でも興味をもてるシーンがありそうだ。軍事屋カトケンが関心を寄せたシーンはたとえば以下だ。

 登場するイラク人の中に、湾岸戦争時にはクウェートのイラク軍部隊から脱走し、自宅でブラブラしていて、12年後のイラク戦争時にも召集されたものの再び脱走したという人がいる。軍隊からの脱走がそれほど罪ではない点、サダム・フセイン独裁下イラク軍のゆるい面が新鮮だった。独裁政権の維持は、どこかに チョーゆるい面が必要なのかもしれない。

 2005年以降のイラクは、外国人と接点があるというだけでイラク庶民には危険が及んでいたため、なかなか取材を受け入れてくれる人を見つけるのが難しかったらしい。撮影者の綿井氏は、たまたま、イラク戦争中の病院取材で出会った家族に密着したのであり、わざわざ探したわけではなく自然な流れ で密着継続取材まのでもっていけたのは貴重。

 当時のバグダッド取材は、イラク人にとっての危険が大きく、ジャーナリストを宿泊させたことで治安警察に逮捕拷問され家族で国外退去するハメになった人もいる。つまり、この映画も、撮影者ではなく、イラク人たちが命を賭けてくれて出来上がった映画という見方もできる。


映画『イラク チグリスに浮かぶ平和』公式サイト
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続く