ロシア語通訳協会の主催による上映会だったので字幕ナシ。
カトケン以外はほぼ全員、ロシア語通訳のスキル集団。
それでも、現場リアルを重視した戦争映画だから、
カトケンにもほぼ全てが理解できた。
実際に、外国の戦場取材へ行くと、言語の理解なんかできないまま、自分の見 た事物や現象、体験から判断していて、そう大きな誤りはない。それが戦場というもの。部隊配備を距離や数などを正確に見て、兵器の種類や数、使用状況を 見て、 戦闘の行方を見て兵士たちの動きを見ていると、慣れぬ外国語の会話な んかに注視している余裕がないのが戦場というもの。見て判断しなければならないものに 溢れていて、それが時々刻々と変化してゆく。
さて、この≪9-я рота≫。戦場と軍隊のリアルを伝えるという点ではかなり凄 い。対空ミサイルが発射されて友軍機に命中する直前から、命中して緊急着陸するまでの緊迫シーンを地上の歩兵たちが眺めた視線で描けているところが、映像 描写力として素晴らしい。アメリカ映画だったら、飛行機内部の派手ドタバタな シーンで描くのだろう。しかし、ロシア芸術のセンスでは、歩兵視線からこの緊迫を描けていた。さすが陸戦の王国。
その他の点も軍事マニア・戦場マニアには見応えたくさん。
12,7ミリ弾の装弾べると。銃の握り箇所を不注意にして火傷する。部隊の混 乱を表す戦闘車両の隊列。ソ連兵の訓練シーンからは、負け戦のあとに強くなれるソ連軍式の兵士の作り方が描かれている。ボロ負けしても戦意喪失しない兵隊 はこのようにして作り上げる。射撃する迫撃砲弾にはちゃんと重みがある。規律 の乱れと、見て見ぬ振りもロシア軍らしい。
字幕がないので、映像に全神経を注入して観れた。言葉がわからないのが外国の戦場のリアル。そして、言葉わからない人にも伝えられるのは、映像の力。
ちゃんと、映像の力で勝負できる映画。無声映画としても成り立つね。
ラストの派手すぎる戦闘シーンの非現実性が気になる人もいるでしょうけど、 本当の戦場を知ってる人の多いロシアでは、このシーンは、ロシア兵の心情描写 ということで問題ない。これを「非現実的だとかなんたら」と議論したがるのは、戦争を中途半端に知った気になってる人たちかも。それまでのシーンの出来の良さとのギャップを考えれば、ラストのところはエンディングロールと捉えるほうがいい。BGMがアメージンググレースか、リリーマルレーンだったら、そう捉えやすかったか。
観客として来ていたロシア語通訳の人たちは、「戦争映画だから専門用語が多 くて理解が難しかった」とのこと。言葉から見ようとする人と映像から見ようと する人の違いかもね。「専門用語なんかわかんなくても、画面に映ってるじゃん」って思えちゃうのは、カトケンが戦場マニアだからだけど。
(加藤健二郎) |