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波乱万丈の亥年の様相を呈している2007年も、いよいよ夏休みの季 節に突入! 米議会で従軍慰安婦が取り沙汰され、南京大虐殺70周年でもある今年 は、戦争というものをじっくり考えてみるいい機会なのかもしれない。 というわけで、今回は、夏休みの推薦図書をご紹介したい。 かつての石原莞爾のような自意識過剰気味の国際論が横行している今 だからこそ、とくに、集団的自衛権の行使カウントダウンが始まった自衛 隊の諸君に、お勧めしたい名著ばかりである。 表層的な『戦史叢書』では学べぬ、真に国際的な深い思索との出会いは、 必ずや諸君の糧となることと信ずる。 >> "自衛官の教科書"こと『戦史叢書』 |
『失敗の本質―日本軍の組織的研究』 戸部良一・寺本義也・鎌田伸一・杉之尾孝生・村井友秀・野中郁次郎/著 中公文庫/800円 |
まずは、本連載でも何度かご紹介した、『失敗の本質』。 日本経済の頂点の直前である1980年代前半に出版された本書を読 むと、当時の日本社会がこのように謙虚で深い視点を受け入れる環境にあ ったからこそ、1980年代後半に日本が大成功を成し遂げることができ たのだ、と納得してしまう。 自らを客観的に分析すると、すぐ"自虐!"呼ばわりされる昨今のご時 勢では、近い将来の成功は望むべくもないのかもしれない。 旧日本軍の組織的特性は、現在も日本の官僚組織や大企業に引き継がれ ている。おそらく自衛隊も例外ではあるまい。 とくに自衛隊は今後国際活動が増えるのであるから、今一度日本人の特
性を自覚し、その特殊性を調整しながら海外での活動に臨んでもらいたい
ものだ。 ところで、この本は軍事的に正しくないところがある、と重箱の隅をつ つくような批判を発するオタクもいるようだが、そのように細部のみにこ だわり全体像を見失うことこそ、今の日本の時流に毒された思考である。 本書は、まさにこの"木を見て森を見ず"感情・情緒に引きずられる日本人の特性を浮き彫りにしているのだ。 まずは、己を知ることである。 |