2010年春、首都高速渋谷線と中央環状線の接続する大橋JCT(ジャンク
ション)が開通する。首都高速同士が接続するジャンクションでは唯一の4枝全
方向連絡のフルジャンクションである。このタイプのジャンクションは、都市高
速道路単独では国内でも数少ない。北九州高速道路の紫川JCTくらいである
※1。
北九州高速1号と4号が全方向連絡し、一般道路との出入口も併設する複雑な
構造になっている。ところで、北九州高速4号は元々一般有料道路の北九州道路
である。付近が市街化する前に建設された北九州道路の紫川IC(インターチェ
ンジ)のうち、一般道路と全方向連絡するハーフクローバーに北九州高速1号が
3枝直結で接続したものである。つまり、当初は北九州高速から見れば、一般有
料道路に接続する出入口にすぎなかった。接続先には北九州道路の料金所があ
り、ノンストップで高速道路同士が接続するジャンクションとはほど遠いかたち
である。
1991年3月31日、北九州道路が北九州高速に譲渡され、北九州道路の通
行料金は、北九州高速の均一料金に含まれるようになった。北九州道路の紫川
IC料金所は撤去され、紫川JCTに変わった。これまでは料金所のせいで走行
速度低下が強いられていて、短い距離で織り込み区間を制御できたが、ジャンク
ション化されてからはこの制御が難しくなった。
一般道路への出口の閉鎖、4号本線への分岐部の立体化、路面のカラー舗装な
ど、さまざまな対策により、北九州高速唯一の渋滞多発箇所を解消した。最初か
ら都市高速道路同士のフルジャンクションとして計画されていたら、これらの対
策が不要なかたちになっていたはずである。 |
◆写真1
北九州市小倉北区篠崎1
紫川JCT
北九州高速4号から1号への接続ランプから1号分岐部をのぞむ。
左から、紫川出口、高速1号小倉駅方面、2号横代方面へ分岐する。
(2009年10月15日、著者撮影。) |
◆航空写真1
紫川JCT
北九州高速4号八幡方面の接続するランプ部が2本ある。(写真下側)
高速1号から4号への分流と、紫川入口から4号への分流で織り込みが発生しな
いように立体化されている。
(Google Earth Webサイトから引用。)
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さて、大橋JCTだが、1965年以前の首都高速開通黎明期ならともかく、
首都高速の初開通からそろそろ50年になろうとしている現在において、高度に
市街化した都心にこれほど大規模な道路構造物が建設されるのは珍しい。
2007年12月22日に開通した首都高速新宿線と中央環状線の接続する西
新宿JCTは、新宿線都心方向への接続はないし、接続ランプの幅員が狭く、初
台交差点上空に収めるためコンパクトな構造になっている。大橋JCTとは一見
して規模が小さいことがわかるだろう。
しかし、西新宿JCTと大橋JCTの違いはそれだけではない。建設に至る経
緯が異なる。西新宿JCTは、中央環状(新宿)線と同時に施工開始している
が、大橋JCTは、中央環状線施工のはるか以前、渋谷線開通時にすでに施工が
始まっていたのだ。実に38年前のことである。
※1 4枝全方向連絡ジャンクション
阪神高速5号湾岸線と2号淀川左岸線が接続する北港JCTは、構造上は完璧
な直結型ジャンクションだが、西側は一般道路に接続する北港西Rなので除外した。
今後は、4枝全方向連絡ジャンクションとしては、首都高速横羽線と川崎線が
接続する大師JCT、横羽線、大黒線、横浜環状北線が接続する生麦JCTが追
加される。
「成す」ことの表現にはいろいろな語彙がある。
「小成」小事を成すこと。わずかばかりの成功。
「大成」りっぱに作り上げること。完全に成し遂げること。
「成就」成し遂げること。
「大成」と「成就」はほぼ同じで、後者は物質よりも非物質に使われることが
多い。これらは計画に対する実績の割合により使い分けられる。
ほかに、成す時期が計画よりも遅い場合には「晩成」という言い方もある。これ
も結果だけに着目すれば「成就」に含まれる。
道路は社会資本であり、ニーズに裏打ちされて計画、施工される。特に都市高
速道路にように高価で、合理性だけでなく都市環境への影響の大きいものは、計
画から施工、開通までに時間がかかる。この期間に、ニーズだけでなく、経済、
都市機能の戦略などさまざまな状況変化により計画変更が強いられる。むしろ、
開通まですべて当初計画通りであることの方がめずらしい。
ジャンクションは高速道路同士の結節点である。複数の路線が接続するので、
一気に完成することは希である。1路線目の開通時にジャンクション予定箇所を
想定した何らかの準備をして、後日、2路線目以降がそこに接続するのだ。ドラ
スティックな計画変更により、当初計画にはなかった箇所にジャンクションが付
加されることもある。また、準備箇所には永遠に接続しなくなることもある。
ジャンクションの接続経緯は、その都市の変化そのものを表しているとも言える。
ところで、ジャンクション接続準備にはさまざまなかたちがある。都市高速道
路の構造は、多くが高架構造物で、それ以外でも半地下、地下など、いずれも構
造物で構成されている。平面または盛り土の土工箇所は少ない。土工箇所は、構
造変更が容易で、ほかの路線との接続の着手と同時に既存本線に手を加えればよ
い。しかし、構造物の場合は容易ではない。やはり、当初から何らかの準備をし
ておいた方が付加しやすい。また、用地確保もしておかなければならない。
これらの準備の程度が難しい。先述のように、計画変更はめずらしくないので、
施工目処がたたなくなった場合に準備しすぎていると、ムダな投資になってしま
う。かといって、予定通り施工されることになったときに準備が足らないと、構
造物の変更だけでなく、用地確保もできなくなっていることもある。
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