さて、交通量の傾向を判断する基準となる量はどのくらいにすべきだろうか。
高速道路の基準交通量は、おおむね下記のようになっている。
1車線あたりの1日で通行できる交通量は、9000台から12000台。
山間部で少なくなる傾向があるが、登坂車線を追加するなどの対策により、幹線
ではほとんどの区間が12000台を保持できる水準に達している。ここでは、
1車線あたり12000台と考える。上下線合わせて4車線で1日48000
台、6車線で72000台になる。
ところで、上下線合わせて2車線の対面通行区間では、この計算は成立しない。
片側1車線では追越しができないし、路肩も狭い。1日の基準交通量は2車線合
わせて、10000台から14000台くらいである。1日18000台から
24000台というわけにはいかない。
基準交通量とは、設計交通量のことで、この量におさまっていれば設計速度で
スムーズに走行できることを意味する。実際の交通量が基準交通量を上回ると、
車線増や、別路線の迂回ルートの追加などの対策が検討される。このときの目安
になる。また、それ以前の高速道路新設時の道路構造や建設手順(当初は暫定2
車線で開通させ、時期が来たら4車線のフル規格に改良するなど)を決めるとき
にも使われる数値である。
前項でピックアップした9箇所の車線数は、4車線または6車線である。基準
交通量は48000台から72000台になる。交通量の多いグループ※1は基
準交通量を上回り、少ないグループでは山陽自動車道(広島付近)だけが、なん
とか基準交通量に達する。ほかは、基準交通量を下回る。下回る箇所でも、当該
路線では最も交通量の多い区間に含まれているので、ほかの区間が基準交通量を
下回ることになる。
※1 基準交通量を上回る区間
ここで選ばれた4箇所のうち名神高速道路(瀬田東付近)は、現在は8車線
で、基準交通量は1日96000台である。このレポートで取り扱う時期はまだ
6車線だったので、1日72000台で、実際の交通量(100000台前後)
は基準交通量を上回っていた。現在は、1年のうち6ヶ月くらいは基準交通量以
内におさまっている。
しかし、基準交通量を判断基準にすると、このレベルより上は、交通量が極め
て多い渋滞多発区間にあたる。すぐになんらかの対策を施さなければならない。
このレポートでは基準交通量の6割くらいの1日30000台を交通量の多い方
の基準にした。先述のように、1年のうち最も交通量の少ない1月を選んでいる
ので、最も多い8月でも10%程度の増量なので、基準交通量を上回らない。
2009年1月における1日あたりの交通量が30000台を越える高速道路
の区間をピックアップした。(地図2、表1を参照。)
これを見て案外少ないと考えるか、多いと考えるか判断が分かれるところだろう。
大都市近郊区間は別にすると、いくら交通量の少ない月を選んだとはいえ、東
京から福岡までつながらないのは意外だ。ほかにつぎのようなことがわかった。
(1)北海道には基準交通量を上回る区間はない。
(2)東北は仙台付近のわずかな区間を除き、基準交通量を上回る区間はない。
(3)日本海側は新潟付近のわずかな区間を除き、基準交通量を上回る区間はない。
(4)四国には基準交通量を上回る区間はない。
(5)長野、松本あたりの交通量は案外多い。(長野県では、東名高速の迂回
ルートである中央自動車道よりも長野自動車道の交通量が多い。)
(6)沖縄自動車道の交通量は案外多い。 |