ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

高速道路9路線・月ごと交通量4




◆写真4
 東北自動車道、下り線仙台宮城ICをのぞむ。
(2004年11月4日、著者撮影。)

◆写真5
 松山自動車道、石鎚山SAをのぞむ。
(2004年4月29日、著者撮影。)

◆写真6
 長野自動車道、下り線岡谷JCT(中央自動車道下り線からの渡り線)から岡
谷IC方向をのぞむ。
(2005年6月6日、著者撮影。)

◆写真7
 那覇空港自動車道(南風原道路)、西原JCTから南風原北IC方向をのぞむ。
(2005年2月11日、著者撮影。)
 逆に、交通量の少ない区間をピックアップする。(地図3、表2を参照。)
 交通量の絶対値が小さいため、交通量の月ごとの変化にも大きな影響がある。
基準値を決めるのは難しい。当初は、多い方基準である1日30000台の10
分の1でピックアップしてみた。すると、1月を選んだせいもあるが、該当区間
が多すぎて、突出がわかりにくい。そこで、さらに少ない1日2000台に設定
してみた。

◆地図3
 2009年1月の1日あたりの平均交通量が2000台未満の区間。

◆表2
 2009年1月の1日あたりの平均交通量が2000台未満の区間一覧。
 1年で最も交通量の少ない1月における1日2000台未満の交通量の少ない
区間は、いろいろなパターンに分けられる。
(1)本線とはつながっているが、交通需要のある目的地に到達していないため
利用しにくい。
 道東自動車道 千歳恵庭JCT−夕張IC
 釜石自動車道 花巻JCT−東和IC
 日本海東北自動車道 河辺JCT−岩城IC
 東北中央自動車道 山形上山IC−山形中央IC
 山形自動車道 鶴岡IC−酒田みなとIC
 中部横断自動車道 南アルプスIC−増穂IC
 舞鶴若狭自動車道 舞鶴東IC−小浜西IC
 播磨自動車道 播磨JCT−播磨新宮IC
 中国横断自動車道 宍道IC−三刀屋木次IC
(2)本線とはつながらない部分開通のため利用しにくい。
 道東自動車道 トマムIC−本別IC、本別JCT−足寄IC
(3)本線の末端部で、交通需要が少ない。
 道央自動車道 八雲IC−伊達IC、和寒IC−士別剣淵IC
 青森自動車道 青森東IC−青森中央IC

◆写真8
 道東自動車道、下り線本別JCTをのぞむ。
(2006年5月22日、著者撮影。)

◆写真9
 日本海東北自動車道、河辺JCTをのぞむ。
(2005年7月18日、著者撮影。)
 パターンに分けたが、今後それぞれが同じような交通量の変化を遂げるとは言
えない。(1)は目的地に到達すれば、ある程度交通量が増えるのは間違いない
が、1日2000台未満を脱するかどうか微妙な区間も含まれている。(2)の
道東自動車道は、特にマスコミに叩かれた曰く付きの区間である。

 いずれは、(1)に含まれる夕張ICまでの区間と合わせて、札幌と帯広、釧
路がつながることになる。推進派が完成後の交通量を提示しても、マスコミはな
かなか額面通りには受け取らない。しかし、道央自動車道から分岐して現在の終
点である夕張ICは、北海道では珍しい渋滞が発生している。交通量は数倍には
増えると考えているが、それでも基準交通量には遠くおよばないだろう。ちなみ
にピックアップされた区間はすべて、上下2車線の対面通行で、基準交通量は1
日10000台から14000台である。

 ここでピックアップされた路線は、多くがその先(本線との接続箇所から遠い
方)の延伸区間を新直轄というかたちでの無料解放を予定している。NEXCO
が管理、運用する高速自動車国道ではなく、国土交通省の各地方事務所が管轄す
る一般国道における自動車専用区間になる。さらに、現在はNEXCO管轄の
ピックアップ区間も、今後は無料開放される可能性がある。このあたりは、採算
の取れているNEXCO管轄区間を含めて、全区間が無料開放になれば特に区別
する必要はないのだが、現時点では新直轄は、不採算路線の明確なキーワードに
なっている。



【さいごに】

 高速道路の管理、運用が民営化されて3年半を経た。一民間会社の商品が政治
の道具にされるのはどうにも納得できない。しかし、利用者の多くは、料金の値
下げや無料化には反対するはずもない。反対派は、一民間会社の運営資金を税金
で補填することによる増税を懸念しているようだ。いずれもカネだけに着目して
いて、高速道路の社会資本としての意義に迫ることはない。また、これまで長き
に渡り無料開放していた高速道路を有料化しつつある世界情勢にも着目していない。

 相変わらず、「日本の高速道路は世界一通行料金が高い」「欧米では無料なの
に、なぜ日本は有料なのか」「揮発油税を徴収して、さらに通行料金を徴収する
のは二重取りではないのか」という攻撃をしている。交通量の少ない区間はムダ
と言い、大都市近郊区間の渋滞を何とかしろと言う。料金所で働く人の仕事がな
くなるので、通行料金を無料化してはいけないという左翼的意見も聞えてくる。
料金所を設置するために広大な用地を買収し、複雑な線形のインターチェンジを
建設していることに比べたら、料金徴収の運用は極めて些少なことである。

 当方は道路に関心を持つようになり、入手できる限りのすべての情報から道路
に関するものを切り出している。この作業を継続してきて、ふと気づいたのは、
道路に関して気の利いた意見を発するマスメディアには出会ったことがないとい
うことである。道路管理自治体や、高速道路会社の発信する純粋データにバイア
スをかけて、やや批判的なかたちにまとめてしまう。書店で、ビジネス本コーナ
を見ると、特定の企業を礼賛する本と批判する本が並んでいる。

 前者はいわゆる提灯記事をまとめたもので、おそらくその企業と何らかの関係
のある作者の作品で、後者はあげあし取りである。いずれも得るものの少ない本
ばかりだが、この対立を楽しみにしている読者が存在するのでなんとか成立して
いる。道路に関しては、あげあし取りしか見あたらない。

 一般的にあげあし取りは、少ない情報から批判に都合のよいものを抜き出すこ
とで成立する。全体を理解する必要はないので、決して難しくない。4年くらい
前の道路公団民営化前には、多数のあげあし取りが登場した。ところで、不思議
なことに、この中の誰一人、当方の道路スクラップの中で名前を見つけられな
い。道路に詳しい人ではなかったのだ。そして、民営化後、彼らは「道路」から
あっさり退却した。今回の政権交代による高速道路への影響についても、また刹
那の道路の有識者が登場するのだろうか。

 当方は、政治にもマスメディアにも関心がない。高速道路の交通量に関心があ
るだけである。
一連の通行料金割引による交通量への影響は大きい。先日届いた2009年6月
の統計資料を見ると、軽く眺めただけで下記のことがわかる。

(1)地方の高速道路の交通量が前年比で20%程度増えている。
 釜石自動車道全線、山形自動車道(村田JCT−月山IC)、磐越自動車道全
線、道東自動車道全線、上信越自動車道(須坂長野東IC−上越JCT)、中国
自動車道(広島北JCT−下関IC)、高松自動車道全線、高知自動車道全線、
宮崎自動車道(えびのJCT−都城IC)、大分自動車道全線、神戸淡路鳴門自
動車道全線、瀬戸中央自動車道全線、西瀬戸自動車道全線

(2)都市高速道路の交通量が若干減っている。
 首都高速(99.3%)、阪神高速(99.3%)、名古屋高速(98.
3%)、北九州高速(97.6%)

 名古屋高速の交通量は長きに渡り右肩上がりで、減少は珍しい。名古屋市街を
取り巻くかたちで、NEXCO管轄の高速道路が整備されているので、料金の安
いこれらの路線へのシフトが見られたと考えられる。また、首都高速では神奈川
地区の減少(98.1%)が目立つ。これも名古屋と同様に、NEXCOへのシ
フトだろう。
 
 着手要因の是非はともかく、今回のドラスティックな料金変更は、交通量に多
大なる影響を与える。蓄積した常識では計り知れない変化が起こりつつある。交
通量の統計資料をチェックする作業は、決して冗長だったわけではないが、今後
の変化はとても興味深い。30年に渡り交通量を眺めていて、新規路線の開通
や、各種イベントでの交通量変化はかなりの確度で予測できるようになってい
る。しかし、今度は簡単には予測できないだろう。料金問題が落ち着くまで、し
ばらくは毎月統計資料が届くのが待ち遠しい。


(2009年9月6日、脱稿。)

続く