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「福岡北九州高速道路10年史」1

福岡高速道路

「福岡北九州高速道路10年史」福岡北九州高速道路10年史編集委員会 福岡北九州高速道路公社

 本書は、1971年11月1日に立ち上げた福岡北九州高速道路公社の最初の10年の公式記録で、1982年に発行された。

福岡北九州道路公社は、東京圏の首都高速道路、大阪圏の阪神高速道路に続き、名古屋とほぼ同時期に着手の決まった都市高速道路の施工を司った。首都、阪神の国家プロジェクトを意味する「公団」というかたちに対し、地方自治体が主体となる「公社」というかたちになった。


これは、名古屋も同様である。2005年秋、国策により首都高速道路公団、阪神高速道路公団が同時に民営化されたとき、ユーザには同じように見える都市高速道路の福岡北九州高速道路公社、名古屋高速道路公社はそのままである。


その後の主としてETC絡みの料金割引についても独自の対応をしている。2009年の大きな割引にもかからなかったので、ほかの高速道路に比べて割高な感じがするかもしれない。

たとえば、青森から名古屋市内まで高速道路を利用すると、条件がそろえば(たとえば、ETC利用の普通車で、2009年5月の連休以外の土曜日に)青森ICから東北道、磐越道、北陸道、上信越道、長野道、中央道、東名高速を経て、小牧ICから名古屋高速11号小牧線、1号楠線で名古屋都心の東新町出口で降りると、NEXCO区間の青森ICから小牧ICまでが1000円、名古屋高速区間の小牧ICから楠JCTまでが350円、楠JCTから東新町出口までが750円になる。NEXCO区間は1055キロ、名古屋高速区間は14キロである。名古屋高速の1キロあたりの通行料金は、NEXCOの約83倍になる。これは極端な例だが、NEXCOの割引も、名古屋高速の通常料金も尋常ではないということである。

ところで、このような著しい料金格差があるにもかかわらず、交通量にはあまり影響していない。名古屋高速は、都市高速道路という一般道路通過に比べて時短効果が大きい特性により、高い料金でも交通量は漸増傾向にあり、渋滞頻発区間の道路改造も行われている。

実は、首都高速や阪神高速が国策による料金割引を実施しているにも関わらず交通量は割引率の逆数分は増えていないことを見れば、名古屋高速の実力がわかるかと思う。総交通量を延長距離で割った単位距離あたりの交通量でも名古屋高速が勝っている。(◆表1を参照。)


◆表1
2009年2月の各都市高速の単位距離あたりの1日交通量一覧。
名古屋高速、首都高速、阪神高速、福岡高速の順に効率のよい利用状況であることがわかる。

福岡北九州高速は先述のように名古屋高速と同じような成り立ちである。その後の建設経緯、交通量、通行料金の変遷など、さまざまな点で両者には似たところがある。本レポートでは両者をいくつかの視点で比較する。

【路線】

 福岡北九州高速道路公社は、北九州都市圏の北九州高速道路と、福岡都市圏の福岡高速道路の双方を施工、管理している。双方は接続していないし、将来においても接続する計画はない。路線は、独自の配置で計画されている。都心と都市間高速道路の接続方法も異なる。本項では、別の路線として整理した。ちなみに、双方とも現地では単に「都市高速」と呼ばれている。特に、都市名を冠することはない。北九州市と福岡市の中間あたりで、「都市高速」の案内板を設置すれば、北九州なのか福岡なのか迷うかもしれないが、それを必要とする場所はないようだ。北九州高速4号西端の八幡ICと福岡高速2号東端の福岡ICの間は35キロほど離れている。飯塚市からは、それぞれの端までほぼ等距離だが、20キロ手前で「都市高速」の案内は不要ということである。「北九州」「福岡」でよい。

 福岡高速道路は、公社立ち上げ当時は、博多湾岸の1号を基幹として、都心へのアクセスを経て、空港、および九州自動車道に連絡する2号を分岐させるかたちで計画された。(空港アクセスは3号だが、空港出入口の先に延長計画がないので、2号の出入口と考え、3号については触れない。)  最初の開通は、1980年10月20日、1号の東浜出入口と香椎出入口の間である。

 1号、2号が全通の目処が立ったころ、九州自動車道との2番目の接点である福岡ICまでの4号に着手した。

 ここまでが当初計画である。どの路線も交通結節点を合理的に通過する配置であり、交通量は開通延長の伸びに併せて増加していった。


◆地図1
福岡北九州高速道路公社立ち上げ時の福岡高速道路の計画路線図。
海岸線の高速1号から着工し、1980年10月20日に公社初開通区間として、
香椎Rと東浜Rの間5.9キロが開通した。

◆写真1
福岡高速1号香椎東R
(2007年4月30日、著者撮影。)

◆写真2
福岡高速1号(南行き)箱崎R、東浜R
(2007年4月30日、著者撮影。)

◆写真3
福岡高速1号(北行き)東浜R
(2005年3月21日、著者撮影。)

 福岡市の交通主軸は北九州から久留米に抜ける南北方向である。通過は九州自動車道が担い、都市高速は主軸と福岡市街を連絡するものである。

ところで、福岡市は九州最大の都市で、都市圏の広がりは南北だけでなく東西にも及ぶ。高速1号の千鳥橋JCT以西と4号は東西の都市圏端部と都心を連絡する機能を果たすようになった。特に西側は、西九州自動車道が高速1号に接続して、1号は都市間高速道路をつなぐ機能が付加された。

西九州自動車道は、唐津、伊万里を経て、佐世保に至る高速道路である。(さらに、武雄佐世保道路を経て、長崎道の武雄JCTに至るが、遠回りなので福岡市からこのルートで武雄に至る交通は発生しないと考えられる。)九州自動車道のような大交通量を担うことはないが、高速ネットワーク構成上、九州自動車道とのスムースな接続は有効である。

現在は、不完全なかたちで唐津までつながっている。交通量は多くないが、漸増傾向にある。完全なかたちでつながれば唐津までの開通でも交通量は大幅に増大すると考えられる。そのため、建設主体未定で構想のあった福岡外環状道路の自動車専用部を福岡高速5号として取り込んだ。渋滞多発区間の千鳥橋JCT前後の都心区間を通過することなく、西九州自動車道と九州自動車道を連絡する。正確には2号を経て大宰府ICに至るのだが、5号との接点である月隈JCTから大宰府ICまでは比較的流れがよいので、十分に機能を果たせる。九州自動車道の北九州方面とは、福岡IC利用に比べて遠回りになる。交通状況を見て、流れのよい時間帯ならば福岡ICを利用すればよい。

このように複数ルートを選択できるリダンダンシーはスムースなネットワーク運用には必要不可欠である。


◆地図2
福岡高速道路の2008年11月時点の路線図。
(赤は開通区間、青は工事区間である。)
残区間の高速5号野芥Rと福重JCTの間は2010年度の完工をめざして鋭意工事が進行している。
この区間の開通で、計画区間はすべて開通することになる。

◆写真4
福岡高速5号(東行き)堤R
(2007年5月2日、著者撮影。)

◆写真5
福岡高速5号(西行き)堤R
(2007年4月30日、著者撮影。)

◆写真6
福岡高速5号福重JCT
(2007年4月30日、著者撮影。)

続く