ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

観光路線高速道路化の条件04



【検証】

 横浜横須賀道路の東京湾岸道路区間は、湾岸規格を踏襲しているのだろうか。
 最初に回答を記すと、並木ICから佐原ICまでの区間は踏襲している。先述
のように4車線で十分ということで施工された横浜横須賀道路の当該区間は6車
線への拡幅を視野に入れた構造になっているのだ。複数の枝線を持つ横浜横須賀
道路の交通量は狩場ICに近づくほど多くなる。それにもかかわらず、交通量の
少ない釜利谷JCT以南や、枝線の一つである金沢支線は6車線なのだ。まあ、
金沢支線は、東京湾岸道路に組み込まれたため整備されたのだが、現在は首都高
速湾岸線へ迂回させる交通 分散機能を果たしている。タナボタ需要である。

 ちなみに橋梁部は特に6車線を見込んだ構造にはなっていない。後の拡幅が困
難な長大橋が存在しないせいだろう。もし、横浜ベイブリッジクラスの橋が含ま
れていれ ば6車線で供用させていたはずである。

 当該区間は4車線で供用されている。しかし、道路用地は6車線分を確保して
いる。また、後から拡幅の難しいトンネル区間は3車線分の大断面トンネルが2
本ずつ並んでいる。狩場ICから釜利谷JCTまでの交通量の多い区間にくらべ
て、走りやすいのは交通量の差異だけでなく暗いトンネル区間の路肩が広いせい
でもある。

◆写真1
釜利谷JCT以南の東京湾岸道路区間のトンネル例。
釜利谷JCTと逗子ICの間の下り線、東逗子トンネル。
走行車線左路肩の白線の壁側に広い空間があることがわかる。容易に3車線に拡
幅す ることができる。
(2009年4月29日、著者撮影。)

◆写真2
釜利谷JCT以北のトンネル例。
港南台ICと釜利谷JCTの間の下り線、円海山トンネル。
走行車線左路肩の白線の壁側に空間のないことがわかる。3車線に拡幅すること
は容 易ではない。
(2009年4月29日、著者撮影。)
 建設費用については、4車線区間の釜利谷JCT以北が安価に思えるかもしれ
ないが、住宅密集地を貫通するための用地確保費用、環境対策費用が嵩むため、
6車線区間の釜利谷JCT以南よりも高価になっている。それでも、釜利谷
JCT以南を4車線にすれば、公共投資はずいぶん抑えられたはずである。しか
し、国家プロジェクト である東京湾岸道路は、神奈川県における些細な費用の
増減を駆逐する。

 ここで、今回のレポートに着手したきっかけになった検証について記す。
 東京湾岸道路全通可能性について今後どう判断すべきかということである。

 佐原ICから馬堀海岸ICまでの区間は、高速道路を整備するほどの交通量が
期待できるとは思えない。交通量は、地方における無料開放前提の直轄区間ほど
ではないが、用地買収に莫大な費用がかかり、丘陵区間を貫通するトンネルや、
谷を跨ぐ高架橋などの構造物が連続する。佐原ICまでは6車線の用地を確保し
て4車線で供用させても、それに見合う程度の交通需要があるかもしれないが、
馬堀海岸にはそれは考 えにくい。せいぜい夏季午前の終点特有の出口渋滞くら
いだろう。

続く