ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

アトランタ・名古屋・ニュージャージー4


◆写真S1
門真JCT(モンタージュ)
近畿自動車道と第二京阪自動車道の接続地点。
(広報誌「緑立つ道」Vol.46(2004年12月発行)から引用。)
日本の高速道路は、あくまでも高速道路に拘ったサービスを提供しようとしてい
る。果たして、これはすべての需要が要求していることなのだろうか。全国各地
で社会実験と称する高速度路の利用促進実験が行われている。おおむね交通容量
に余裕のある高速道路の特定区間の通行料金を割り引いて一般道路からシフトさ
せるものである。木曽街道のように長い距離における大型車限定のシフト(長野
自動車道の塩尻ICなど松本南部、諏訪湖周辺と中央自動車道の中津川ICの
間)以外は、比較的短距離での高速道路利用促進である。また、首都高速などで
も交通量の少ない夜間に限定した 割引もある。

 いずれにしても、「高速道路を利用するほどではない需要」にアピールするも
のである。高速道路の通行料金は100キロ、200キロ以上と2段階で割り引
いている。また、ターミナルチャージという基本料金が設定されているので、長
距離利用ほど1キロあたりの通行料金は安くなる。短距離利用は割高である。首
都高速などの均一料金区間においても短距離利用は割高感がある。この需要に対
してスムースに高価な料金を支払わせることはできるのだろうか。社会実験は、
割高分を割り引いている。国土交通省のWEBサイトに実験結果は掲載されてい
るが、ほとんどの実験は思惑通りの効果をあげている。しかし、実験終了後は元
に戻ってしまう。元に戻せなくなって、本四連絡橋やアクアラインのように割引
期間が継続している区間もある。これらの区間では建設費償却の見込みが立たな
いまま交通量だけを維持させているのだ。

 ところで、すべての需要(リンク)が最速性を要求しているのだろうか。例え
ば、東京と小田原の間は東海道線や小田急線で70分から90分くらいである。
新幹線はこだまで40分くらいである。もし、のぞみが停車すれば最速で30分
を切るはずである。すべてののぞみが小田原を通過するのは、そんな需要が存在
しないからではないだろうか。のぞみは、名古屋以西への需要に設定された高速
アクセスで、それ以外の短距離利用には需要はないのだ。また、東海道新幹線は
のぞみの本数が多いので、東京と名古屋以西のリンクが多いとも言える。東北新
幹線は仙台までは停車駅の少ない最速列車が多いが、仙台以北は盛岡までノンス
トップの設定は少ない。東京と盛岡のピンポイントリンクは少ないのだ。鉄道の
ダイヤは需要に応じてきめ細かい設定が 施されている。

 道路も同じではないだろうか。富士市と静岡市の間は、東名高速道路ではおお
むね25分くらいである。国道1号経由では閑散時ならば50分、混雑時は90
分くらいかかるかもしれない。清水IC付近、静清BPのほぼ全線がネックにな
り確実性が低くなる。この区間の東名高速道路はすでに交通容量一杯なので単純
に高速道路にシフトさせるわけにはいかないが、シフトにより所要時間は半分に
なり確実性も高くなる。しかし、割引したとしても有料道路へのシフトはスムー
スだろうか。時間に関しては問題ないが、料金負担との兼ね合いで国道1号の渋
滞が解消するほどシフトするとは思えない。もし、時間が問題になるリンクなら
ば、すでに東名ルートを利用して いるはずである。それなのに国道1号の渋滞
は慢性的である。

 富士市と静岡市の所要時間は25分ではなく、40分くらいで十分なのではな
いだろうか。距離は約40キロである。平均時速60キロで良いのだ。それなら
ば無理なく対応できる。国道1号の旧清水市東部までは富士由比BP区間は現状
でクリアしている。清水IC付近の平面区間は立体化の計画がある。静清BP区
間は暫定2車線対面区間を解消してフル規格化すればよい。これで全区間の制限
速度は60キロになる。道路構造も富士市内、および由比地内の一部を除き立体
交差である。東名高速へのシフトでもなく、ましてや第二東名高速の新設ではな
く、一般国道の改良で十分な のだ。これが要求に忠実に応えたかたちになると
思う。

 高井戸から八王子までは中央自動車道経由ならば20分で、新宿からでも首都
高速経由ならば40分以内である。この間を国道20号経由ならば深夜でも60
分でも絶対間に合うとは言い切れない。さすがに八王子のような大都市(東京)
に依存したエリアでは高速道路の需要はある。小牧以西から東京までは東名ルー
トでも中央ルートでも距離は4キロしか変わらない。中央ルートは坂路が多いの
で大型車は敬遠することがあるが、やはり東名ルートのリンクが圧倒的に多い。
これは中央ルートの東京と八 王子の間の交通渋滞が致命的であるせいもある。

 東名ルートも渋滞は少なくないが、 車線数の少ない中央ルートの通過時間の
方が長い。また、首都高速3号と4号の通過時間の差異も中央ルートの敬遠因子
である。
どのみち、大都市近郊の高速道路においては、静岡区間以上にきめの細かい需要
に応えていかなければ、効率の良い運用は難しい。静岡区間は国道1号の改良よ
りも第二東名の開通が早そうである。大胆な対策により簡単に問題は解消してし
まう。大都市近郊区間では、このような大プロジェクトも遅々として進行しな
い。既存のインフラ において最大効果を発揮する方策をひねり出さなければな
らないのだ。

続く