ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

アトランタ・名古屋・ニュージャージー3

 高速道路は最初から渋滞を想定して計画しているわけではない。計画時に、需
要の多い区間は車線を多くしたり、迂回ルートを設けたりしている。それでも計
画通りにはいかないので、後付で対策するのである。これは、道路先進国の欧米
でも各地で見られる。道路計画から実現までには数十年を経るので、社会情勢が
変わるのは常である。開通しても利用されない区間に比べれば、過剰利用で渋滞
するのは嬉しい悲鳴と 捉えるべきだろう。

 このあたりが、冒頭の「高速道路は渋滞するようになって一人 前」につなが
る。渋滞対策は対策後、利用される確率が極めて高い幸せなプロジェクトなの
だ。しかし、なかなかこの考えに賛同してもらえない。新規建設に比べて、渋滞
対策は地味で、制限の多い困難なプロジェクトに陥っている。そのため、先述の
積極的な対策(3)はなかなか承認されない。欧米でもあまり例を知らない。イ
ギリスのロンドンとマンチェスターの間の2本の高速道路が好例として取り上げ
られること が多いが、果たしてそうだろうか。

 通過ルートが離れているので、東京と愛知の間の 東名高速道路と中央自動車
道の関係に似ていると思う。これらも広域で見れば別線の機能を果たしている
が、全区間ではなく、各路線内だけの利用が多すぎる。東京と郡山の間の常磐自
動車道と磐越自動車道とは異なる。特に磐越自動車道は当初は全区間暫定2車線
の対面通行だった。福島県の浜通りと中通りの交通量だけならばこれで十分であ
る。ところが、これでは需要に耐えられなくなってきた。順次、4車線のフル規
格化が進んでいる。明らかに東京と福島以北の長距離利用車両のシフトによるも
の である。
 韓国には既存路線とほぼ並行する別線があるが、欧米では既存道路をフルに利
用す る方法をとることが多い。


【高速道路と準高速道路の組み合わせ】

 欧米では、高速道路の位置付けが日本とは異なる。あくまでも一般道路の延長
上に高速道路は置かれている。日本の高速道路は一般道路とは完全に隔離された
別のステージである。もちろん、欧米の高速道路も構造上は一般道路と隔離され
ているが、接点である出入口は多いし、道路構造も郊外では一般道路と変わらな
い。地形や沿道の状況により無理のない設計をしている。全区間が同じ構造の方
が通して利用する場 合は利便性が高い。

 鉄道の場合は、たとえば新幹線は、乗客の多い区間も閑散区間も 同じ構造で
なければ運用できない。しかし、自動車の場合は長距離、短距離などさまざまな
ニーズに対応しなければならない。東名高速道路は、開通当初から東京ICと厚
木ICの間は大きな需要に対応するために6車線だったが、厚木以西は連続する
名神高速道路の終点まで4車線である。いかにも簡単な対応である。設計当時は
自動車よりも鉄道が重視された時代だったので、需要予測が甘かったかもしれな
い。その後、需要に耐えられなり複数の区間で6車線以上への拡幅が施された。
それでも供給不足で交通集中起因の渋滞が多発している。各区間でもっと細かい
分析をして構造を変えていれば、長期間満足してもらえるサービスが提供できた
はずである。

単純に交通量だけから全区間の交通密度を一定にするためには、東京ICと横浜
町田ICの間は10車線、厚木ICまでは12車線、大井松田ICまでは8車
線、御殿場ICと静岡ICの間は6車線、焼津ICまでは8車線、豊川ICまで
は6車線、豊田ICまでは8車線、名古屋ICまでは10車線、岐阜羽島ICま
では8車線、栗東ICまでは6車線、瀬田東ICから大津ICまでは6車線、吹
田ICまでは10車線、 豊中ICまでは8車線、西宮ICまでは6車線が理想
的である。

 現実には沿道の市街 化が進行しているので、ほとんどの区間では道路用地が
確保できそうにない。そのため第二東名、名神という大プロジェクトが実施され
たのだが、開通が見込まれている御殿場と三ヶ日の間に6車線の別線は必要だろ
うか。この区間における現東名の交通量は6車線(日本坂トンネル前後区間の静
岡ICと焼津ICの間は8車線)で十分で ある。東名高速と第二東名高速を合
わせて10車線は過剰供給である。

 6車線の別線 を必要としているのは、(1)東京ICと大井松田ICの間、
(2)豊川ICと岐阜羽島ICの間、(3)瀬田東ICと豊中ICの間である。
(1)はルート未定で、おそらく東京ICへの到達可能性は低い。第二東名は海
老名から圏央道(および横浜湘南道路)経由で横浜横須賀道路の釜利谷JCTで
首都高速湾岸線に接続するのが精一杯である。このルートでも長い都市トンネル
を含む難工事区間なので、開通までには相当な年月が必要である。(2)は伊勢
湾岸自動車道の全通で要求は解消すると思われる。(3)は第二京阪自動車道で
十分だが、大阪市内に到達するには年月がかかりそうだ。(1)の区間ほどはか
からないと思われるが、果たして2015年までに到 達するだろうか。

続く