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都市部における既存高速道路の有効活用の一手段として、併走する準高速道路 と連携する方法がある。欧米の高速道路は基本的には本線と側線が一体になって いる。本線は高速で通過する車線で、側線は一般道路への出入りのための加減速 車線である。高速道路本線と一般道路との出入り区間には必ず設置されているも のだが、この車線が延々と続いているかたちである。国内の高速道路にはほとん ど見られないが、長野自動車道北行きの更埴ICと更埴JCTの分合流車線、伊 勢湾岸自動車道双方向の名古屋南IC、JCTと大府ICの分合流車線などがこ のかたちになっている。 たとえ ば、伊勢湾岸自動車道を豊田方面から大府ICまで利用する場合、大 府ICの一つ手前の名古屋南JCT分流車線から分岐しなければならない。分岐 後に大府IC出口の手前で四日市方面への本線に復帰することもできる。この区 間は本線6車線、側線4車線と合わせて10車線になっている。しかし、これら はあくまでも構造上の都合で側線のかたちになっているだけで、分合流が交錯す る織り込み区間になるため理想的ではない。決して本線が渋滞しているときの迂 回には利用してもらいたくないものである。中央自動車道の大月ICと隣接する 大月JCTの間もかつてはこの構造だった が、現在は改良されて側線は消滅し ている。 |
◆写真S2 名古屋南JCT付近 伊勢湾岸自動車道、大府ICから名古屋南IC、JCTをのぞむ。 本線の左側に名古屋南IC、JCTへの側線が存在している。 (2004年8月13日、著者撮影。) |
つまり、国内には側線を生かした高速道路は存在していないのである。欧米で も側線の存在はあくまでも理想であり、全区間に適用されているわけではない。 道路用地の確保が容易で、しかも側線の需要のある区間に適用しているのだ。開 通後に交通需要が多くなり側線の追加が強いられても沿道の市街化が進行してな かなかうまくいかないケースが多い。このようなケースには、高速道路の両サイ ドではなく、つかず離れず併走する別の高規格道路を側道に流用することもあ る。ジョージア州アトランタ郊外の例(1)をあげる。また、国内にも運用に よっては高速道路の側道機能を果たせる可能性のある例として名古屋市南部の伊 勢湾岸自動車道の例(2)をあげる。 (1)アトランタ アトランタ市はアメリカ東南部の中核都市で、地場産業だけでなくアメリカ東 部の 輸送拠点として機能している。(◆地図1を参照。) アトランタ都市圏において、東北方向の交通需要の増加が著しい。通勤時間帯 にはリングロードと都心の間に車列がつながる。この渋滞はリングロードの外側 やリングロードにも及ぶことがある。そのためこの区間の高速道路I85の改良 が強いられた。北部から都心につながる準高速道路US19の都心延長にともな いI85との併 走区間において交通容量を大きくすることになった。 I85の沿道は国内に比べれば 余裕があるように見えるが、大規模施設が隣 接しているため拡幅用地の確保は容易ではない。そのため併走するGA13を準 高速道路に格上げして都心北部に接続することになった。既存のI85の都心接 続箇所は、その手前で北西方向に伸びるI75と分合流しているため出入口(特 に都心への出口)の渋滞が慢性的だった。今回のGA13の都心北部への接続 ルートにI85も接続できれば都心の出入口の渋滞はある程 度緩和できるだろう。 |
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