ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

日本〜フランス・ジャンクション比較16



 アジアの諸都市がなぜ日本に倣ったのかはわからないが(日本の建設コンサル
タン トに依頼したせいとも言えるが、そうだとしてもなぜ日本に依頼したのか
その本意が わからない)、機能重視という合理性はアジア人共通の性向なのだ
ろうか。アメリカ 人が個人主義の合理主義者の代表のように言われているが、
都市高速道路の現状を見 ると、アジア人の方がはるかに合理的である。

 ペリフェリックのような公園の機能を 残す景観はアジア人には思い浮かばな
いのだろうか。現場の需要に応じた設計は、道 路の機能だけでなく、公園など
の沿道環境を維持する機能にも適用されるのが、本当 の合理的な考えではない
だろうか。杓子定規に同じ規格を連続させて美観を保つの と、各区間で個性を
持たせて美観を保つ。前者はいかにも設計者、施工者の主観で、 後者は沿道住
民の主観である。

 当方は、行政を全否定する左翼的な考えはもっていな い。道路は利用者の快
適をめざすべきである。どこまで走っても4車線の道路が連続 する道路と、交
通量の多い区間は6車線、8車線と広がり、それでも処理できない都 市部は迂
回ルートが設置されている道路のどちらが利用しやすいだろうか。また、 トー
タルのドアートゥードアの所要時間が満足できるならば、全区間で高速性を保つ
必要もない。無理に都心に進入しなくても、手前で一般道路に下してから程なく
目的 地に到達すれば問題はないだろう。

 フランスの新幹線(TGV)、ドイツの新幹線(ICE)は、日本の新幹線と
は根 本的に線路構造が異なる。いずれも在来線とは独立した新線区間を必要な
区間や、整 備しやすい区間だけに整備しているのだ。新たな鉄道用地確保の難
しい都市部は在来 線の線路を利用して、郊外に直線的な新線区間を整備した。

 もちろん、新線区間だけ がトップスピードに至る。新線の配置が異なるが、
構造上は秋田新幹線や山形新幹線 のようなものである。建設費は全線独立新線
とは比較ならないほど安価で済む。この システムでもトップスピードが速いの
で、都市間の所要時間で致命的な不利にはならない。日本の新幹線の川崎市と大
宮駅の間は果たしてフル規格の新線が必要だっただろうか。おそらく将来におい
てもこの区間でトップスピードに達する運用はあり得ないだろう。この区間の在
来線はパンク状態なので入り込めないのは確かだが、あれほど高規格の構造にす
る必要はないだろう。また、京都駅と新神戸駅の間も新幹線にし ては徐行運転
である。

 鉄道事情には詳しくないが、それなりに本は読んでいる。熱海新線案を本で読
んだ ことがある。小田原から三島まで熱海に停車しない列車が通過する短絡ト
ンネルを建 設するという案である。「のぞみルート」と仮称していたと思う。
ほかにもこのよう な短絡ルートをいくつか整備すれば、「のぞみ」の所要時間
はさらに短縮できる。東 京と大阪の間で2時間も夢ではない。莫大な投資が予
測されている中央リニアに頼ら なくても、既存の東海道新幹線の運用で十分で
ある。もし、構造物の耐用年数に達し たとしても複数の短絡線が暫定ルートに
利用できる。また、在来線のゲージを標準規 格にすれば東海道線も暫定ルート
になる。その気になれば、いくらでも既存の社会資 本で将来の需要にも対応で
きるのだ。

続く