ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

本四連絡橋のルート選択 10



 高速道路の通行料金にはターミナルチャージという基本料金に距離分 の料金
が加算される。3区間をそれぞれに利用すればターミナルチャージは3回課金
されるが、連続区間ならば1回で済む。しかも、均一料金区間を介することによ
り前 後の普通区間に適用されていた長距離逓減制が破棄されてしまう。名阪間
だけの通行 ならば名阪ルートは半額程度になるが、四国までの長距離になると
話は違う。

 先述の ように長距離逓減制により400キロを連続利用した場合は、200
キロを2回利用 した場合に比べて35キロ分と1回分のターミナルチャージが
減額される。名阪ルー トで四国に向かう場合は、大阪ゾーンで近畿自動車道か
阪神高速道路の利用料金が加 算されるので、これと合わせると名阪国道の
73.3キロの無料区間の減額の効果は かなり少なくなる。

 それでも結果として名阪ルートの方が安かったが、名神ルートと の差異は微
妙であることが理解できるだろう。◆表2に名神ルートなどほかのルート の料金
も示しているので参照していただきたい。名古屋ICと松山ICの名神ルート
(一覧の左端の9番における京滋ルート、瀬戸大橋ルート)と、名阪ルート
(18番 における近畿ルート、瀬戸大橋ルート)との差異は、わずかに200
円である。高知 ICまでは250円、後戻りのある高松中央ICでは400円
である。なお、73. 3キロの名阪国道の無料区間が、もし有料の普通区間な
らば1950円である。

 松山 ICまでの場合、名阪ルートで1950円節約したつもりでも200円
しか節約した ことにならない。名阪ルートの所要時間が早ければ200円でも
節約したことに意味 があるかもしれないが、後述するがやはり一般国道である
名阪国道や大阪ゾーンの負 荷による遅延により200円以上の損失を感じると
思う。

 明石海峡ルートは徳島自動車道、高知自動車道の全線で通行料金が安くなる。
おお むね四国の南半分が有利なエリアである。大阪ゾーンの通過は大阪市街地
を貫通する 阪神高速道路を経由し(阪高ルート)、そのまま神戸線で神戸市街
地を貫通して(須 磨ルート)、垂水JCTで神戸淡路鳴門自動車道に接続す
る。大阪ゾーン、神戸ゾー ンともに最も交通集中起因の渋滞が発生する可能性
が高いルートなので、これらの ゾーンがスムースに通過できる時間帯に合わせ
てスケジュールを組まなければならない。

 瀬戸大橋ルートは、松原JCTから近畿自動車道を経由して(近畿ルート)、
吹田 JCTで中国自動車道に接続する。阪高ルートよりはスムースに通行でき
る可能性が 高いが、中国自動車道の宝塚ICと西宮北ICの間がスムースに通
過できる時間帯に 合わせた方が無難である。

 ところで、すべてのルートの高速道路が同じ管轄で、同じシステムで通行料金
が決 められていたら、(1)の走行距離で示した有効ルートと一致するはずで
ある。つま り、四国のほぼ全域が明石海峡ルートの有効エリアになるのだ。し
かし、◆地図6を 見ると、高松自動車道、松山自動車道沿線の四国の北半分は、
瀬戸大橋ルートが安く なる。高松自動車道の徳島県内まで瀬戸大橋ルートが安
いことには違和感を覚えるか もしれない。

 これは、おおむね本四公団管轄区間の通行料金が日本道路公団管轄区間よりも
割高 であることに起因している。日本道路公団管轄区間は、一部に特別料金区
間はある が、普通区間は1キロあたり24.6円である。本四公団管轄区間
は、長大橋区間と それ以外の区間(淡路島島内区間など)で単位料金が異な
る。また、長大橋は、橋に よって異なる。複雑なシステムである。しかも
2003年7月1日から1年間は、基 本料金の28%割引の新特別料金が適用
されている。◆表2ー1に各区間の新特別料 金適用期間の通行料金を記す。

◆表2ー1
本四区間の通行料金一覧。
 明石海峡ルート、瀬戸大橋ルートのいずれも日本道路公団管轄区間に想定した
換算 料金よりも3000円高い。いずれのルートもできるだけ本四公団管轄区
間が短い方 が本四ルートの通行料金総額が安くなることになる。もちろん、日
本道路公団管轄区 間がいくら割安とは言っても、大回りしすぎればそれなりに
高くなる。本四ルートの 通行料金総額で四国の北半分において瀬戸大橋ルート
の方が安くなるあたりが境目に なる。

 ところで、日本道路公団管轄区間の走行距離は本四公団管轄区間を挟んだ総計
が、 通行料金計算対象になる。本州で200キロ走行して、本四架橋を通過し
て四国で2 00キロ走行すれば、400キロ走行したとして計算される。ま
た、日本道路公団管 轄区間の走行距離は、複数ルートがあればどのルートを走
行しても最短ルートを通行 したとして課金される。つまり、本州区間で名古屋
ICから神戸西ICまで走行し て、神戸淡路鳴門自動車道を通過して、鳴門
ICから四国区間を走行した場合は、こ のルートが最短ルートになる。

 例えば高松中央ICまで走行する場合は、明石海峡ルート(◆表2の左端の5
番にお ける名神ルート、神戸西ルート)の走行距離は390.5キロで通行料
金は1255 0円だが、瀬戸大橋ルート(左端の9番における名神ルート、瀬
戸大橋ルート)は4 36.2キロで通行料金は11200円である。明石海峡
ルートの方が距離は35. 7キロ短いのに350円高くなっている。通行料金
の内訳は、明石海峡ルートは、日 本道路公団管轄区間が301.2キロで
7100円、本四公団管轄区間が89キロで 5450円になる。瀬戸大橋ルー
トは、日本道路公団管轄区間が398.9キロで7 100円である。本四公団
管轄区間の相違は走行距離が異なるので理解できるだろ う。ところが、日本道
路公団管轄区間は、瀬戸大橋ルートが97.7キロも長いのに 通行料金は同じ
7100円である。これが、複数ルートがあれば最短ルートの通行料 金が適用
されるということである。理解できるだろうか。

 本四架橋もすべて日本道路 公団管轄区間だと想定すれば、名古屋ICから高
松中央ICまで徳島県経由と岡山県 経由の2ルートがあることがわかると思
う。岡山県ルートが大回りなのは明確だが、 どんなに大回りしても最短ルート
である明石海峡ルートをたどったと見なされるの だ。日本道路公団管轄区間は
本四架橋を挟んで一体として考えて良いのである。名古 屋ICから高松中央
ICに向かう場合は鳴門TBで、逆方向は神戸西TBで、日本道 路公団のカー
ドを手渡して神戸淡路鳴門自動車道の通行料金を精算し、改めて日本道 路公団
のカードが手渡される。

 しかし、このカードには最初のカードに記されていた インターチェンジの情
報だけが記されているので、最後に出口でカードを手渡したと きには最初の入
口しか認識しない。この間、どのルートをたどっても最短ルートの通 行料金が
請求される。本四架橋は高速自動車国道の途中にある有料のサービスエリア の
ようなもので、高速道路内の一施設と考えれば納得できるだろうか。高速道路を
利 用するとき、途中のどのサービスエリアに立ち寄っても、何度立ち寄って
も、たとえ 立ち寄らなくても通行料金は変わらない。

 つまり、高松自動車道の各インターチェンジまでの通行料金のうち日本道路公
団管 轄分は、瀬戸大橋ルートを通過しても最短距離である明石海峡ルートを通
過したもの として計算されるのである。ただし、先述のように瀬戸大橋ルート
には連絡していな いハーフインターチェンジのさぬき三木ICと高松檀紙IC
は本当に明石海峡ルート をたどることしかできない。また、逆に瀬戸大橋ルー
トしか連絡していない高松西I Cや高松東ICは瀬戸大橋ルートしかたどるこ
とができない。このように道路構造上 最短ルートをたどることができないイン
ターチェンジまでの通行料金は果たしてどの ように計算されるのだろうか。

 機会があれば、日本道路公団のWEBサイト (http:
//search.jhnet.go.jp/route/index.html)で確認してみてほしい。本四間の 通
行料金は微妙で、本報告では名古屋ICを基点に想定していて、名古屋IC以東
の 東名高速道路にも適合するはずだが、何しろ差異が微妙なので、少し基点を
ずらすと 有効ルートの順位が変動する。名古屋IC以外を基点とする場合に
は、本報告はあく までも目安として、独自に確認してほしい。

 名古屋ICから高知ICまでは、名阪ルートで松原JCTに至り、そのまま道
なり に直進して阪神高速道路を利用して垂水JCTで神戸淡路鳴門自動車道に
接続して (阪高ルート、須磨ルート)、鳴門ICで降りて一般国道11号を経
て徳島ICから 徳島自動車道、高知自動車道を経由するルート(徳島ルート)
が最も安い。2番目 は、名神ルート(または京滋ルート)から中国自動車道、
山陽自動車道を経由して瀬 戸中央自動車道に接続して(瀬戸大橋ルート)、松
山自動車道、高知自動車道を経由 するルートが続く。差額は250円である。
本四区間で異なるルートをたどってもほ とんど料金格差はない。

 松山ICまでは、名阪ルートで松原JCTに至り、ここから近畿自動車道を北
上し て(近畿ルート)、吹田JCTからは瀬戸大橋ルートをたどるルートが最
も安い。2 番目は、大阪ゾーンで阪高ルート、須磨ルートに分岐して、徳島
ルートをたどるルー トが続く。差額はわずか100円である。高知ICまでの
ケースと同様に異なる本四 区間でも料金格差はない。

 高松中央ICまでは高知、松山に比べて四国内の走行距離が短いので若干傾向
が異 なる。先述のように日本道路公団管轄区間は最短ルートで料金が決まるた
め、最も安 いのは大回りの近畿ルート、瀬戸大橋ルートである。2番目は本当
に最短ルートをた どる阪高ルート、須磨ルートで鳴門ICから道なりに高松自
動車道を西進するルート である。料金格差は400円
である。本四公団管轄区間の通行料金の差異が効いている。

 総じて、通行料金では、東海以東と四国のメインルートは名阪ルートで関西に
到達 してから、徳島、高知方面は明石海峡ルートがお得で、香川、愛媛方面へ
は瀬戸大橋 ルートがお得である。ただし、瀬戸大橋ルートは、名神ルートをた
どったとしても差 額はわずかである。

続く