ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

東名高速VS中央高速 7



【所要時間】
 7月中旬の平日午前10時に東京を出発したと想定してJHのWEBサイト「ハイ 
ウエイナビゲータ」で所要時間を測定すると、東京から小牧ICまでに東名ルートは 
4時間20分、中央ルートは4時間23分かかると表示された。わずか3分しか差が 
なかった。(◆表2)
 中央ルートが4.5キロ長いので、まさにその分だけが差になっている。本当だろ 
うか。

 東名ルートは制限速度が100キロの区間が多いが、中央ルートは80キロであ 
る。道路の規格は明らかに東名ルートの方が高いにもかかわらず、平均走行速度はい 
ずれも80キロ程度である。これは、中央ルートはほぼ全区間が制限速度で走行でき 
るが、東名ルートはそうではないということである。つまり、交通集中に起因する渋 
滞が影響している。

◆地図3
東名ルートと中央ルートの区間交通量

◆グラフ1
東名ルートと中央ルートの通過交通量の比較グラフ。
東名ルートは、全区間スルー交通の通行可能性の高い区間が存在しないので、ほぼ中 
間地点の日本坂トンネルを挟む静岡ICと焼津ICの間の交通量を抽出した。
中央ルートは、岡谷JCTの本線区間の交通量を抽出した。
東名ルートは静岡県内の短区間利用も多いので、抽出した交通量のすべてが東名全線 
を通過する交通とは言えない。中央ルートは全線通過交通の確率が高いが、決してす 
べてがスルーとは言えない。このグラフは、東名ルートと中央ルートの交通量そのも 
のを絶対的に比較するのではなく、経年変化を比較してほしい。いずれも同じような 
傾向の推移をしていることがわかる。
 東名ルートの交通量は、全区間において中央ルートのほぼ2倍である。道路の規格 
は高いが、決して2倍の交通容量があるわけではないので、やはり東名ルートの負担 
は大きい。

 交通量の多さは道路改良箇所数でも明確である。東名ルートは、多数のインターチ 
ェンジでブース増設、ランプ拡幅、立体化が実施されている。また、厚木ICと御殿 
場ICの間の本線拡幅、静岡ICと焼津ICの間の本線拡幅(日本坂トンネルの拡 
幅)、音羽蒲郡ICと春日井ICの間で断続的な拡幅が実施されている。中央ルート 
は、高井戸ICと八王子ICの間の均一料金化、八王子ICのランプ改良、それに上 
野原ICと大月JCTの間の本線拡幅が実施されている。東名ルートはほぼ全区間に 
おいて何らかの改良が施されているのに対して、中央ルートは東京寄りの一部区間の 
改良のみである。

中央自動車道上り線、談合坂サービスエリア。
(2002年12月26日、著者撮影。)

中央自動車道、大月IC、JCT。
(Artery No.49から引用。)
 東名ルートの本線改良は、ほとんどが交通量増大に起因している。地形に起因した 
脆弱構造の改良は大井松田ICと御殿場ICの間だけである。この区間は東名ルート 
で唯一の山岳ルートである。平日の定期利用車に多大なる影響を与えたため早期に改 
良されている。

 中央ルートは八王子IC以西に多くの山岳ルートが存在している。いずれも設計交 
通量をやや上回った程度で渋滞する可能性を秘めている。ところが、渋滞は休日に集 
中している。休日だけの渋滞ではなかなか改良には着手してもらえない。それでも上 
野原ICと大月JCTの間は深刻なので拡幅されたが、ほかの区間の着手は未定であ 
る。実は、行楽シーズンの短期間での交通集中起因の渋滞は中央ルートの方が深刻で 
ある。高井戸ICから大月JCTまでに渋滞することも珍しくない。

 距離だけでなく 
通過時間も極めて長い。ピーク時の交通量は通常時の2倍以上になるため交通容量の 
少ない中央ルートは閉塞状態に陥る。東名ルートの交通量は絶対数では中央ルートを 
上回るが、ピーク率が低いので同じ距離の渋滞でも通過時間は短い。

 ピーク時だけに着目すれば、中央ルートは高井戸ICと勝沼ICの間で拡幅が施さ 
れてもおかしくはないが、年間で数日だけのために莫大な建設費が投入されることは 
ないだろう。

 総じて、東名ルートの渋滞は平日、中央ルートは休日に集中していると言える。た 
だし、中央ルートの高井戸ICと八王子ICの間は平日の主として通勤ラッシュが慢 
性化している。先述の所要時間算定は、午前10時の下り線を想定しているが、午前 
9時の上り線の想定ならば八王子ICから高井戸ICまでで1時間程度加算しなけれ 
ばならない曜日もある。

 平日の東名ルートはほぼ全区間が一触即発状態だが、中央ルートは八王子以西では 
おおむね順調ということである。

続く