だが、アイデアとして導入したものに、左撃ち慣熟訓練がある。
小銃機関銃は、右手でトリガー、右目で照準という構造だが、遮蔽物への隠れ方
や、部隊展開したところの地形によっては、左撃ちの姿勢をとる兵士がいたほう
がよい場合がある。セーフティー解除レバーや、装填レバーが右撃ち姿勢での操
作を前提に作られているが、これら初弾発射前の操作は、ちょっとして練習で、
左手操作は可能になる。そのとき、照準は左目になる。こういうことを案として
出すと、将校たちはさっそく実験を開始。BLI(ジャングル戦戦闘専門部隊)
に左右両用のスイッチファイターを養成するために、だが、市街戦でのほうが、
スイッチファイターの有用性は大きいだろう。
まず、カトケン自身が、右撃ちの左撃ちをやってみせ、 150メートル標的
に、とりあえず、まあまあの正確さで命中させられることをやって見せる。
そして、講義も。
「右が得意、左は苦手という、得意不得意はないほうがよい。与えられた情況
が、左撃ちに適しているなら、不得意意識を持たずに左撃ちにする。無理に右撃
ちにしないほうが、遮蔽物をうまく利用できる。新兵のうちにも、右左両方を体
に馴染ませておくのがいい」と。
山岳部で岩登りを最初に習ったときに「右利きはダメだ。左利きもダメだ。右
左、どっちも得意でも苦手でもにないようにしろ」と言われたのである。得意不
得意の意識が、岸壁登攀で、悪いバランスとなる姿勢に体を動かしてしまうのだ
と。それを軍隊に導入してみたのだ。歩兵戦闘の教科として、左右均等のことは
読んだことも聞いたこともないから、もしかしたら、ここの部隊が一般徴兵部隊
としては初の試みかもしれない。さすが、革命軍、進んでるね。
2時間後、選ばれた1個小隊39人で実験開始。
射撃が開始されたあとは、操作レバーを動かすときに、下から手を回す。上から
だと、射撃で熱くなった薬室周辺に手が触れて火傷するキケンがある。マガジン
の着脱装填は、どっちの手を使っても親指シフトでできる。手の左利き右利きだ
けでなく、目の左利き右利きを部隊全員チェックしてったほうがいい、などな
ど・・・・・・・。また、ルーマニア製ハンドガード下部突起が、意外と使いや
すいことがわかった。のちの時代になって、イラク戦争の2003年ころ、米軍
特殊部隊でも、このルーマニア製の真似設計をした銃を多用しはじめることになる。 |