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戦車兵神博行の自衛隊チェック89

(狭炸弾射撃)


『狭炸弾射撃中』


 「狭炸弾射撃(きょうさくだんしゃげき)」とは狭い射場で射撃するから狭炸
弾射撃?、確かに狭い射場ではあるが…、多分「狭炸弾」を使うからなのであろう。
この射撃は車載機関銃で行う『狭炸弾射撃』の話である。
『狭炸弾』は弾頭がプラスチックで出来ている銃弾である。

74式7,62mm車載機関銃の弾でも火薬は通常の弾薬より少なく、射撃すると一々
装填手が槓桿(こうかん)を操作して弾を装填しなければならない、通常ならば
装填不良や装填手不良?にならない限りは自動的に装弾される。
『射撃予習中』


 ここでは五的操砲(ごてきそうほう)や移動標的を使って射撃する。
装填手や操縦手の陸士も射撃訓練する機会があるので楽しみだった。
五的操砲は時間を計って正確に五つの標的を射撃するので皆真剣である。しかし
一々装填しなければならないので装填手は『装填よし!』と叫びっぱなしだっ
た、私は素早く装填するため指名されて装填手をしていたため槓桿を引いたり押
したりで掌に豆を作ってしまったこともあった。
『狭炸弾射場の射撃場幹部達』


 「移動標的』なんて聞くとどんな凄い装置があるのか興味が湧くだろう。きっ
と防衛秘密じゃないだろうから説明しておこう。
写真のように残雪の残るこの時期にしか出来ないのがこの装置の特徴だ。いや夏
装備もあるのかもしれないが、夏にこんな射撃をしたことが無いので多分この時
期にしかやらないからこんな装備になったのだろう。

 まず橇に標的を載せる、そして射場指揮官の命令で右方にロープを引っ張る隊
員が時間を数えながらゆっくりと引っ張る、端から見ると奴隷のようだ。
その間橇に載せた的を狭炸弾で射撃する、近距離からの射撃なので的は小さいが
移動している的を射撃する機会は少ないので良い経験だ。
『射撃中』


 でも雪が解けてドロドロになったロープを引っ張るのは楽しく無い。
『早い』とか『遅い』とか注文も多いし…、軍手が濡れて冷たくなって楽そうで
楽じゃない、写真を撮る気力も無くなったので写真も残っていない。左方のロー
プは射撃が終わると急いで引っ張り戻す、監的が的を取換え採点する。

 戦車砲にも12,7mm重機関銃の銃弾を使って縮射射撃する場合もある。
一時期、粘着榴弾の事故のために腔内砲(正しい字か不明)を使用していた、つ
まり実弾の代わりに閉鎖器の中にキャリバー50の銃身と縮射装置を取り付け、
12,7mmの弾を縮射装置の小さな閉鎖器に入れてから縮射装置を砲弾を込めるよう
に拳で叩き込む。
12,7mmは曳光弾を使用する場合が多い。
『戦車射撃中』


 しかし実弾と違い、射撃しても自動的に薬莢が排出されない。
閉鎖器を開けるには開閉レバーを取り付け50キロの重さの閉鎖器を開ける、こ
れが面倒くさい。
何が面倒かと言うと一々開閉レバーを取り付けるのが面倒なのだ、それと安全管
理がうるさく、力があれば閉鎖器の真後ろに座って片手で閉鎖器を開けて弾を装
填して開閉レバーを掴んだまま縮射装置を叩き込めるのに、この開閉レバーを付
けたまま開閉レバーを掴まず縮射装置を叩き込む馬鹿が居る者だから、勢い良く
開閉レバーが腕に当たり大怪我する。このため一々開閉レバーを外したり取り付
けたりする動作をしなければならない。

射撃時間も成績につながるので砲手にしてみれば早く装填して欲しいのだが、も
たもたと装填されてはせっかく命中させても次の目標や次弾を射撃できずにイラ
イラするのだ。
 最近は訓練弾が出来て停弾堤を気にしないで戦車らしい射撃も出来るように
なったとか、戦車は今も昔も初弾必中、全車快走だね。

続く