活動ゴジラ・怪獣関連特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観+α

特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観

『スター・ウォーズ』サーガの変節と米帝国主義の肥大 3-2



 さて、この作品のテーマは、アナキンとパドメの”禁じられた愛”である。
ジェダイに恋愛は御法度だが、アナキンは、10年ぶりに再会した美しいパドメ
への恋心を抑えることができない。パドメも、成長したアナキンに次第に引か
れていく……。

 アナキンは、非凡なフォースの持ち主ではあったが、自信過剰で攻撃的な青
年だった。
 前作で殺されたクワイ=ガンの遺言に従い、アナキンを弟子にしたオビ=ワ
ンだったが、彼はアナキンの性格を憂慮していた。アナキンは、ジェダイの教
えや掟を軽視しがちだった。
 
 ジェダイ評議会は、オビ=ワンにパドメ暗殺計画の首謀者の捜査を、また、
アナキンにパドメの警護を指示する。まだ修行の浅い弟子に、単独行動を命じ
る評議会も評議会なのだが。
 とにかく、こうして二人がともに時を過ごす機会を与えられ、お互いの気持
ちを深めていく。
 若い二人が戒律を破り、恋に落ちるストーリーは、映画として格好のテーマ
だ。ところが、ここでも製作者は、耽美主義的な視覚の快楽ばかりに気を取ら
れ、基本を見失っているようだ。

 まず、二人の演技が、救い難い。とくに、パドメは前作から引き続いて同じ
役者が演じているのだが、以前にも増してダイコンである。
 アナキンも、これまたひどく、二人が演じるラブ・シーンは、素人芝居を通
り越して、学芸会以下である。
 二人とも、まったくセリフに感情が込もらず、真剣に愛を語るシーンでも、
吹き出してしまうどころか、もう呆れ返るばかりだ。
 とくに、セリフの録音は、特撮や合成とは、何の関係もない。合成が複雑だ
から、芝居が不自然になったという言い訳は成り立たない。監督のルーカスは、
いったいどういう感性をしているのだろう?
 また、パドメの相変わらずの着せ替え人形ぶりには、ウンザリしてしまう。
女王の位を退いたので、さすがにバカ殿ファッションは卒業したが、それにし
ても、次から次へと派手なお召し物を見せびらかし、落ちつきのない女である。
 アナキンとともに故郷ナブーに帰還したパドメは、湖水地方に逃れるが、こ
れはもう、避難生活というより、贅沢なバカンスだ。二人は、CGで描かれた
美しく牧歌的な大自然の中で、甘い時を過ごす。

 パドメは、アナキンが自分に想いを寄せていることを知りながら、大きく背
中の開いたドレスを纏って、アナキンとともに湖畔に出かける。これでは、ア
ナキンを誘惑しているとしか考えられない。当然、アナキンはキスを求め、パ
ドメはこれに応じる。
 しかし、その後、アナキンが、暖炉に火のともった、欧風貴族趣味の部屋で、
胸元露わなドレス姿の彼女に愛を告白すると、今度は拒絶されてしまう。
 アナキンはジェダイの修行者であり、自分は政治家であり、二人の未来を一
時的な感情で棒に振ることはできない、と。

 ところが、映画では、パドメの政治家としての優秀さがまったく描かれてい
ないのである。せいぜい、アナキンとの甘い会話の中で、民主主義の非効率を
批判するアナキンに対し、サラリと民主主義を擁護する程度なのだ。
 どう見ても、命を狙われるほど気骨のある政治家とは、思えないのだが。

つづく