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ところで、共和国から派遣された二人のジェダイ騎士は、ナブーの水中に棲 むグンガン族のジャー・ジャー・ビンクスと遭遇する。グンガン族は、ナブー の地上に棲むアミダラらナブー人とは、文化的対立関係にあった。 このグンガン族は、その手足のヒョロ長い体型や動作、顔の特徴や楽天的な 性格、独特のブロークン英語からして、黒人のステレオタイプをベースに考案 されたと推察できる。ジャー・ジャー・ビンクスは、マヌケでお人好しの、行 儀の悪いキャラクターとして描かれている。 さらにグンガン族の長は、これまた肥満した黒人男性を彷彿とさせるキャラ クター。種族の長だというのに、頬を揺らして唾液を飛ばしながら興奮する様 子は、コミカルを越えて侮辱的でさえある。 『スター・ウォーズ』サーガは、その誕生時から、様々な宇宙人に対して、 民族・人種差別的表現が見受けられると指摘されてきたが、これほど露骨な例 は初めてで、事実、グンガン族の描写は米国内で物議を醸した。 |
一方、故郷を脱出して元老院でナブーの窮状を訴えたもの、即解決は無理だ と判断したアミダラは、ナブーに帰還し、グンガン族の長に軍事的支援を乞う。 アミダラは、例によって無感情な平坦な口調で同盟を提案し、グンガン族の 長の前にひざまづいて、ナブー人はグンガン族を軽蔑していない、「私たちは あなたのしもべです」と殺し文句を吐く。 それまで敵対していたなずなのに、グンガン族の長はこれだけで歓喜し、有 頂天になって、唾液を飛ばしながらアミダラの要求を承諾するのだ。 しかも、アミダラのいう同盟とは、グンガン族が通商連合のドロイド部隊と 地上戦を交えるという、不平等きわまりない内容。それでも、グンガン族の長 は、わが種族は勇猛なのだと、その場の勢いで同意してしまうのである。 その結果、ナブー人のレジスタンスが、ドロイド部隊を制御する通商連合の 司令船を空から攻撃し、グンガン軍が多大な犠牲を伴う地上戦を敢行する。 アミダラの策と交渉術が効を奏したともいえるが、あれだけ精巧な水中都市 を建設し、強力な兵器を保有するグンガン族の長が、こうも単細胞に描かれて いるのは、腑に落ちない。 |
ちなみに、グンガン族は、すべてCGで処理されているが、これも彼らの尊 厳をわい小化する要因になっていると思う。 CGは豊かな表情をスムーズに表現できるが、どうも欧米のアニメーターは、 伝統的なセル・アニメのノリで、演出過剰に陥る嫌いがある。こうしたCGキ ャラクターを、実写の人間と組み合わせると、落ちつきのない異様な生物に見 えてしまう。 しかも、実写の人間と合成する場合、まだCGは、温もりのあるキャラクタ ーを作れるレベルに達していない。完全なCGアニメ作品の世界では、愛くる しいキャラクターが生まれているが、実写をベースにした作品でのCG合成キ ャラクターは、現時点では、やはり何か異質で血の通わぬ存在という印象を拭 いきれない。 グンガン族に関しては、いわゆる”政治的な正しさ(political correct- ness)”が横行している現在の米国の、しかも超人気娯楽大作で、こんな描写 が許されるのかと、驚きの連続だった。米国も変わったものだと、妙な感心を してしまった。 |
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