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恋するアズィーザ/唄うクレオパトラ2




【愛しい弟よ】

もしも今 一番会いたい人は誰かと聞かれたら
迷うことなく君の名をあげるでしょう
あの人によく似た君と出会った
柔らかく優しい君のまなざし
ゆっくりと瞬きをして話す声が心地よくて
しっとりと私の心に沁み込んでいった
長い年月の間 離れ離れになった君の父に
そういうとこよく似てるんだってね

戯れる羊たちを追いかけて
はしゃぐ私に君は微笑んだ
雪の積もる庭で子どものように
走り回る私を見つめていた
何にでも真剣に取り組む君の
将来が楽しみだった 応援してた
君のような子が荒れ果てた祖国を
建て直す日がくるんだって いつの日か

(チェチェン・首都グロズヌイ:2008年6月)
君が語るイスラーム 響き渡る君の祈り
私の心が癒された 
真夜中に二人 暖炉の前で 
初めて唱えた告白
ラー・イラーハ・イッラッラー
あの瞬間 時が止まった
見つめ合う瞳を大きく開いて
君は戸惑いながら 心躍らせた

あの日から 涙が止まらなかった
君は「泣いてるほうが好きだ」って
私に語りかけた 優しくそっと
姉弟の誓いを交わした私たち
君のことは僕が守るって
「お姉ちゃん」と呼ぶ君が愛おしくて
ずっとそばにいたいと思った
君の隣にずっといたいと思った

私の愛するあの人と喧嘩すると
いつも君は私をかばってくれたよね
クールな彼よりも君は
ずっと大らかで優しいんだね
毎日のようにおしゃべりしたね
かわいくて仕方がなかった 弟よ
君が私を想う気持ち 気づいていたよ
君の淡い恋心 愛おしかったよ

今日が誕生日だってこと
恥ずかしくて言えなかった君に
歌をプレゼントした 君だけのために歌った
今でも覚えてるかな? 私の歌声を
君が去ってしまったあの家はなんだかとても寂しくて
暖炉の前で込みあげてきた あの夜のこと
私を待つ君のいないあの家は切なくて
君との思い出が目の前に溢れだした
アズィーザ・クレオパトラ(AzizA=菊池由希子)のブログ

続く