単行本も出たし、連日、講演ツアーだし、そろそろここで東長崎機関からの
インタビューの季節かな。

(安田純平は語る その１)

現場で本当は何が起こっているのか？
誰も教えてくれないなら自分が確かめるしかない。
伝えるのが仕事なんだから、生きて帰ってきてこその商売だ。
見せたがらないものを調べまわっていれば拘束されるのはし
かたない。でも、生きていればなんとかなるのだ。
な〜んちゃって。

帰国してから約１ヶ月たった５月１９日深夜から朝にかけて
安田純平が、新刊「囚われのイラク」に書けなかった
こぼれ話を披露した。

拘束の３日間の詳細は、著書と講演でどうぞ。　

 [東長崎機関]まず、本のウリは？

 [安田純平]「拘束からの帰り方がわかります！」

    拘束されていちばんの収穫は、あれだけ感情的に
    なったところを見れたこと。
    感情的になってるときって本音を言うじゃないで
    すか。だから、ほんとに米軍を憎んだるんだなと
    わかった。
	
    僕は英語がよくしゃべれないイラク人とよく一緒
    にいるので、言葉ができない状態は大丈夫なんです。
    だいたいそんなイラク人たちと激安ホテルにいたり
    するもんだから、ホテルの主人も面白がって遊びに
    来たりする。
	
    拘束された場合でも、すぐに殺されなければ、とに
    かく仲良くなってこんなヤツ殺してもしょうがない
    という気にさせなければ。他に身を守る術はないし。

    逆に、いつも流暢な通訳と一緒に行動している人は、
    僕みたいな拘束にあったとき困ったと思う。

   また、４月になって自衛隊取材にはプレスパスが必要になった。もし、その
   パスを持ってたらスパイだと思われたに違いない。だって、字は読めなくて
   あの自衛隊のマークだけ見れば勘違いされますよ。スパイだったら殺される
   と思う。

   あと武器を持っているとダメ。だから警備員はダメ。群集や武装勢力に囲ま
   れた時それに対抗できる数の警備員を連れて回るなんて非現実的だし、まず
   対抗できない。欧米メディアは警備員を連れて行くから大丈夫なんだとコメ
   ントしている人がいるがバグダッドの街中に限る話だろう。それでも、捕まっ
   たりしてる。


   拘束といえば、渡辺さんが日本へ帰ってきてからだんだん勇ましくなっていっ
   てるのが興味深いんです。僕もぜんぜん知らなかったいい話がいっぱい出て
   くる。いつの間にそんなことがあったんだろう、と。僕寝てたのかな。


[東] 高遠さんたちを捕まえた人たちと接触しようとしたの？

[安]いやー、それはあきらめていた。やっぱり行きたい場所にコネ持ってる人
   がいないと。現地に受けれてもらえないと、それこそ群集に取り囲まれて危
   険だし取材どころじゃないです。

   実は、バグダッドは３月まではバックパッカーがいっぱいいた。それで、
  「バックパッカーがいっぱい」という記事を書こうと思ったら３人が捕まっ
   ちゃった。今回はまだ取材がぱっとしてなかったのに。
   

[東] 拘束は初めてではないよね。

[安]拘束は３回目です。ヒマでやることないのは辛かった。まだ人がいれば
   いいんですけどね。ヒマで昼寝してたら夜眠れなくて困ったこともあり
   ます。
   ただ、怖かったんだということも、もっと表現しないといけないなと思っ
   てるんです。いろいろ喋ったり書いたりしてて、ついそれを忘れてる。


[東] 今回、拘束されたニュースを聞いて、「安田君はまじめだから捕まっ
   たんだよ」  という声があった。理由は、長野でこつこつ丹念に取材し
   ていたノリで、イラクでも  何度も現場に行ってまじめにやってたから、
   拘束される機会も多い。これが、立派な有名人の場合、現地には行かな
   いから大丈夫、と。

[安]あたってます。行かなければ拘束されないのは当たり前。

   今回の人質・拘束騒ぎで、メディアは現場に行かなくていい体制を作る
   のに成功しましたね。
   日本の秩序というのは、こうやって守られているものなのかなあ。
   取材しないで、どうして報道として成り立つんだろう？


[東] スピーチやインタビューは慣れた？
       (安田くん、どっちかというとしゃべるの苦手だったからね)

[安]飽きたところもあるが、講演はよいアルバイト。また、自己責任論に
   ついては最初は自分でも考えがまとまらなかったが、だんだんわかって
   くるものがあった。最近は笑いもとれるようになったと思う。


[東] 自己責任について盛り上がっているのはいつ知ったのか。

[安]いちおう、拘束される前に知っていた。


[東] いきなり全国紙の１面を飾る有名人になってしまった感想は？

[安]びっくりした。でも、あのFlashの記事はひどいなあと思った。
   バグダッドの大使館で「イラクに残りたい」なんて一言も言ってないのに、
   そう報道されちゃったのもひどいなと思った。
   
   

[東] アイドルのギャルたちとの合コンは？

[安]面白かった。アイドルの女の子はＴＶで見たまんま。
   いい人だったけど緊張してしまいました。


[東] 帰国してから１ヶ月たって感じることは？

[安]やっぱり書くことが自分の本業なんだと
   いうこと。
   こんなに書いたのは始めてです。

   激励の手紙やファンレターが届くようになった。
   １ヶ月たった今でも。中には、娘を嫁にどうか、
   なんていう話も。考えてみれば、こんな稼げなく
   て、帰ってくるのかわからないような職業という
   条件を知ってて言ってくれるんだから有難いこと
   ですよね。


[東] イラクの話をしなかった日はあるの？

[安] 一昨日の１日だけ。