インフラ海外拠点イラク

大手英米メディアの自衛隊報道9-2

(報告:常岡千恵子)


  というわけで、欧米メディアが、とくに日本政府にだけ厳しく、つらく
あたっているわけではないことをご理解いただいたうえで、いよいよ本題
に入りたいと思う。


  今ここに、手元にある問題の大野防衛庁長官の記者会見のテープより、
日本の大手メディアが"黙殺"した重大発言を公開する。

 2005年1月7日、日本外国特派員協会で開催された記者会見には、
もちろん日本の大手メディア各社もズラリ出席していた。
  そして、東大卒・大蔵省出身で、米国留学経験もある大野長官は、1時
間以上の長丁場を、ユーモアを交えながら通訳抜きでこなした。
  以下は、英語での重大発言部分の全訳である。

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大野防衛庁長官の記者会見
          2005年1月7日、日本外国特派員協会にて


大野長官の冒頭スピーチより

 「(自衛隊のサマワ派遣)延長は、非常に、非常に不人気です。なぜか?
それは、日本国民の目には、サマワを含むイラクの状況がとても悪く、と
ても危険に映るからです。
 まあ、広報の問題を考えなければなりませんね。
 まず、広報の状況を考えなければならない。現在、日本の宿営地への記
者の立ち入りが禁止されています。
  たぶん、これから、記者の日本の宿営地への立ち入りを許可する可能性
を探らなければならないでしょう。もちろん、あなたがたに、勇気がおあ
りなら。
 以上が、サマワの宿営地に関する問題についての所感です。」


質疑応答より(質問は要約)

 Q:サマワ視察に記者を同行させなかったが、今後海外活動が増える自衛
隊の報道がこのような状態であるのは問題ではないか。 具体的に、いつ、
どのようにして日本人記者のサマワ取材を解禁するのか?

 大野「端的に言えば、日本人記者を日本の宿営地に送る可能性を模索す
る、ということです。とはいえ、サマワに行こうと思った当初は、日本人
記者を同行させるべきかと考えましたが、多くの人々が、サマワの治安状
態がとても悪いみたいなことを言うので、私にとっても初めての体験でし
たし、私でさえ、少しは(治安状態を)疑っていたので、記者の同行を諦
めました。
 今この時点で考えると、記者をサマワに同行させるべきだったと思いま
す。これは、私のサマワ視察の感想です。

 しかし、とにかく、これからは、私は記者をサマワに連れて行く可能性
を探ります。なんといっても、私自身がサマワを訪れ、この目で状況を見
てきましたので、私の分析では、(記者のサマワ取材は)可能です。

 とにかく、イラクの状況についての報道は、好ましくありません。なぜ
なら、非常に、非常に危険な県もありますから。イラクには、全部で18
の県があり、そのうちの14の県は、とても、まあ、比較的というべきか、
安全です。これらの14県は。しかし、2つの県に関しては、とても、と
ても危険です。ご存じのように。もう2つの県は、比較的危険な状況です。
 ですから、イラク全体として、安全な国のようなことがいえますが、サ
マワに関しては、確実に、状況は比較的安定し、良好といえます。」

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  日本人離れした、堂々たる記者会見だが、バグダッドなどでの紛争地取
材が当たり前の海外メディアに対し、「あなたがたに、勇気がおありなら」
サマワ取材も考慮すると言ってしまうのは、いかにも日本的なご愛敬?

  ところで、2005年3月から件のサマワには、オランダ軍に代わって
英軍が駐留することになる。
  ということは、世界屈指の激辛毒舌と目される英国のメディアが、サマ
ワを取材する可能性も高い。

  はてさて、憧れの国連安保理常任理事国の辛辣メディアが、自衛隊をど
う見るか、お楽しみはこれからだ?!


続く