戦争・軍事 > 海外メディア視線

英米有力メディアが見た"日本の大手メディアの北朝鮮報道 4

(報告:常岡千恵子)


『ロサンゼルス・タイムズ』  2005年5月30日付
     −一時にひとつの敵に注目する日本
        公敵ナンバー1として北朝鮮に執着しているが、
         もっと大きな脅威は中国かもしれない
 今春、2010年に経済的社会的崩壊を迎えた日本を描く、村上龍の
『半島を出よ』がベストセラー本のひとつになっている。

 この小説のメインの悪役は、北朝鮮のコマンドーたちだ。
 今の日本にとって、北朝鮮人は最も邪悪な悪者である。

 最近、日中間で激しい応酬があったにもかかわらず、日本の民衆にと
っては、北朝鮮とキム・ジョンイルが公敵ナンバー1であり続ける。

 北朝鮮の核兵器テストの可能性に対する、大きな不安が存在するのだ。
北朝鮮の主たる敵は米国かもしれないが、日本ははるかに近い標的に
なる。

 この敵意は、日本を戦後の平和主義の殻から引き出す触媒となり、ま
すます安全保障上のタカ派路線に進む日本政府に拍車をかけてきた。

 北朝鮮への嫌悪が渦巻く中、日米同盟は、かつてなく必要不可欠なも
のと見られ、日本国民は、自衛隊のイラク派遣や米国のミサイル防衛へ
の参加を受け入れている。

 しかしながら、北朝鮮と中国のどちらが、日本にとってより深刻な脅
威であるかについては、意見が分かれている。

 メディアと国民は北朝鮮に執着しているが、一部の政治家や官僚、軍
のリーダーたちは、北朝鮮の非常識な行動を、彼らが日本の長期的安全
保障上の最大の問題とする、中国の台頭に備えるための隠れ蓑として利
用しているのかもしれない。

 東京在住のワシントンのハドソン研究所の北東アジア専門家、ロバー
ト・デュジャリック氏は、「明らかに北朝鮮のミサイルに対する懸念は
あるが、専門家の間には、長期的に中国がどうなるかという大きな恐れ
がある。日本政府関係者は、中国の脅威を公言したがらない一方で、北
朝鮮の脅威を語ることは、政治的に正しいのだ」と語る。

 日本のリーダーたちのミサイル防衛参加への熱意は、中国の脅威がな
ければ、これほど性急なものではなかっただろう。
 北朝鮮は相手にしづらいかもしれないが、日本政府関係者の大半は、
キム氏の核兵器プログラム問題は、最終的には外交的解決を見るだろう
と信じている。

 日本政府にとって、本当に防御が必要なのは、中国の核ミサイルだ。
 だが、少なくとも、先月、中国各都市で反日デモが行われるまで、日
本国民は巨大なライバルとの衝突との可能性をほとんど考えなかった。

 冷戦時代に、少なくとも十数人の日本人を拉致した問題は、未曾有の
憎悪を駆り立てている。
 
 日本のティーンエイジャーを自宅付近で拉致するような政権は、核攻
撃をしでかすような国だと認識される。

 日本国際問題研究所のタマモト・マサル氏は、「日本は階級社会で、
何に対しても階級を欲します。外交上の関係にさえも。しかし、歴史の
問題から、どの国も見下すことを許されなかった。北朝鮮以外は。あの
国は、誰の目にも明らかに常軌を逸しているので、日本が見下すことが
許される唯一の国なのです」と語った。

。。。。。。。。。。。。。

 なるほど、歴史問題を抱える日本人が安心して見下せる唯一の国が北
朝鮮だ、という指摘はなかなか鋭い。

 個人の存在感が薄く、集団行動に走る日本人の特性も手伝って、DN
A鑑定結果の科学的根拠も何のその、思いっきりうっぷん晴らしに励ん
でいる、というところだろうか。

 しかも日本の為政者たちは、その集団心理を利用して、おおっぴらに
蔑視できない隣国、中国に対抗する準備を進めているらしい。

 このへんの事情も、日本政府に密着している日本の大手メディアの記
者一同のほうが、米紙特派員などより遥かに詳しいはずだが、なぜか日
本ではあまり報道されない。
 こんな大切なことを、海を超えた米国の一般市民が知っているのに、
当の日本国民がほとんど知らされないとは、あまりにも不公平ではない
か!!
 しかも、この内外情報格差は、わが日本の大手メディアが、もたらし
ているのだ!

 いずれにせよ、北朝鮮は、説明責任に対する意識の希薄な日本の為政
者たちにとって、欠くべからざる存在なのかもしれない。

 とどのつまり、北朝鮮は、6者協議参加国をつなぎとめる、極東地域
の平和の守護神だったりして。
 そういえば、キム・ジョンイルって、ゴジラのファンだったよなぁ・・・・・・

 ちなみに、ゴジラ=平和の守護神説はこちら↓
       ゴジラと自衛隊・50年目の決別 1
       ゴジラと自衛隊・50年目の決別 2
       ゴジラと自衛隊・50年目の決別 3

続く