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実機を登場させたスピットファイアの 型式が当時のものと違うってのは、僕的 には気になりませんでした。当該機がな いんだから、仕方ないですな。そもそも、 これは真珠湾奇襲の場面でもそうだけれ ど、CGを使って、しかも本当では 有り得ないメチャクチャな飛行シーンを 作ってしまった結果、現存するスピット や零戦を出演させた意義がまったくなく なってしまったように思う。 ところで、撮影中の99式艦爆役の1機 が事 故で墜落しているんですが、カメ ラマンの花井健朗さんが現地を訪ねた際、 片付けられた事故機を撮影していたのだ! その写真を見せていただいたのだが、 機体各所にある整備覚え書きの「日本語 モドキ」はなかなか微笑ましい。 とくに「零式艦爆(爆撃?)」って何? この写真は、発売中の別冊GON!・ 04号の55ページに載ってます。 |
次に例の、奇妙な作戦会議の場面で紹介される航空魚雷。雷撃機から投下後三 〇〜六〇b(以上)も沈降してしまう通常の航空魚雷は、水深一二b程度の真珠 湾では使えないってんで、沈度を抑えた91式魚雷改2型をベテラン・パイロット に使わせて戦果をあげたの は、本当。 でも映画で「この木製部品をつけて」とか言って魚雷尾部につけて見せている のは框板(きょうばん)という、空中雷道、とくにそのピッチングを制御するた めの尾部フィンである。沈降制御の要となったのは、魚雷後部両側面に付けられ た、水平用ジャイロと連動する木製の空中安定舵なのだ。 框板によって、落下中に頭部が上がったり尾部が上がったりするピッチング現 象は解決したものの、次に、空中雷道中の魚雷は無秩序にスピン(長軸方向に回 転)することが判明。スピンしながら着水すると、弾体が安定していないため舵 (尾部水中フィン)が効かず沈降度が増してしまうのである(90度回転した状態 で水中雷走を始めると横舵と縦舵が逆になって迷走したりもする)。 そのスピンを、水中安定機に被せるように取り付けた空中安定舵で制御して解 決したわけ。着水の衝撃で飛散するのは、框板と同じである。 |
次に予告編でも登場していた、水平爆撃する97式艦攻 から投下される99式80番5号(800s徹甲)爆弾。 尾部の安全装置解除用風車がちゃんと回転していて感 心したのも束の間、あの風車を時限信管装置だと勘違い しているようでガックリ。これは基地に投下された250s 爆弾もそうで、なんだかなあ。 「アリゾナ」への命中シーンでは、ドカドカッ、と艦内 を貫通して乗員の目の前で止まったので、これは「ウエ ストバージニア」への着弾場面(同艦へ命中した800s 爆弾は、二発とも不発だった。もっとも弾薬庫を貫通す る際に砲弾を誘爆させている)だと思って「ほう、やる な」と感心していたら爆発してしまった。 いくら対艦用延期信管とはいえ、延期時間は約0.2秒で、 あんな に長い“待ち時間”があるわけではない。 このように「オッ、よく出来てる」と一瞬思わせてお いて、ガッカリさせられるので疲れること甚だしいのだ。 |
執拗に海上のアメリカ軍将兵を機銃掃射するシーンもなんだかなぁ、である。 実際は、艦艇や格納庫、飛行機など割り振られた目標を攻撃するのに「忙しく て」あんな事するヒマはなかったハズ。それに貧乏性の日本軍は、人間よりも兵 器類を狙う傾向もあったし。あえて考えるなら、あの機銃掃射場面は、古い地図 で目標選定をしてしまったがゆえに、教会やビアホールを攻撃しまくった史実の 別表現なのか…なんてことはないな。 |
〈こっからは箇条書にてゴメン〉 *真珠湾攻撃隊は、水杯なんか 交わしましたっけ? カミカゼ 特攻隊と勘違いしているようだ。 *:だいたい日本の空母の中で、 ロウソク点けて遺書を書くって いったい…。 *山本五十六連合艦隊司令官が、 直々に空母部隊を率いているの も変。(それにあのド下手な日 本語を聞くたびに、心が冷える んですが) ***ちょっとおもしろいのは、 攻撃隊の発艦シ−ンで、アメリ カの空母を前後逆にして日本空 母役にしていること。 |
つまり艦尾が艦首に、艦首が艦尾になり、“後向きに前進”していることになっ て、CGの艦載機は艦尾側に向かって発進しているのだ。これで右舷が左舷に、 左舷が右舷になるので、唯一、艦橋が左舷側にあった「飛龍」か「赤城」を表現 したらしい。。 でもそれなら、右舷にあるオリジナルの艦橋をCGで“切り取って”、左舷の アングルド・デッキの上に張りつける方が、ずっと自然なのではないだろうか? もしかしたら、アメリカ海軍が「CGで“上塗り”するのはいいが、形をかえ るのはイカン」とかいったのかも。 *ハワイには白人と黒人、おまけ的な日系兵士2名しか住んでいな いのか? *ドゥリットル攻撃隊で、爆弾に日本海軍からメダルを付けて送り返すアイディ アは、ドゥリットルのものではなくて、海軍のミッチャーの発案。しかしこんな のを観せられて、アメリカ陸海軍の(史実を知る)人たちって、楽しいんだろう か? |
*アメリカ空母を発見したのは、100トン そこそこの、徴発漁船哨 戒艇なのに、 なんか駆逐艦か軽巡洋艦のように描かれて いて爆笑。結局、3〜4隻の哨戒艇が接触し ているんだが、うち1隻(やっぱり 漁船改 造、94トン)は、25ミリ機関銃でドーント レス1機を撃墜し ているんだから、立派な ものである。 *ドゥリットル攻撃隊全機発進には、1時間 かかっている。それが ほんの数十秒で16機 が空中に。 *1番機(ドゥリットル機)、2番機は茨城県 沿岸から侵入、水戸市上空で南に転進したの だが、茨城にあんな崖の海岸って、ないよう な…。 ところで、水戸市南の上空でドゥリットル機 は、水戸飛行場を視察にきた東條英機首相の 乗る輸送機とすれ違っている。これなんか映 画的におもしろいエピソードなのになぁ。 あ、「パールハーバー」は歴史を描いた作品 ではなかったな。 |
*そもそもルーズベルトが、空母から陸軍の爆撃機を発艦させて東京を爆撃する 計画を知らされたのは、空母が日本に接近しつつある時で、つまり事後承認だっ たのだ。たしかに“目に見える”反撃作戦実行を求めてはいたけれど。 *過剰なまでに凄まじい日本の対空砲火。東京を通り越して、ドイツまで行っち またんじゃないか? |
*発艦に時間がかかったため、後続機は かなりの対空砲火を浴びたのは、事実。 でも全機が日本を脱出しているのに、 なんか、ほとんどが撃墜されたと思わせ るような演出って狡い。 *不時着後、日本軍に反撃するシーンで (ここからして史実を無視したデタラメ なんだが)、日本の手榴弾はピンを抜い ただけでは爆発しませんぜ。 |
*史実では、宣伝のために帰国を急がせたドゥリットルでさえ、帰還には空母発 進から1か月を要している。それが数日で帰ってきた ような描写には大笑い。 *捕虜になった8名のうち3名は、軍事裁判で死刑に処せられている。ノベライズ 本では「宣戦布告前の攻撃に比べて、首都攻撃が**」とかいっているけれど、 裁判の罪状は民間人を殺傷したことであって国際法上、正当性はある。まあ、日 本もすでに中国の都市を無差別爆撃していたんだけどもね。とにかくノベライズ 本も可笑しいということでした。 |
〈いちばんハラがたったシーン〉 ルーズベルトが車椅子から立ってみせて 説得するところ。自分のハンデイキャップ を盾に人を動かすのってハラ立つ。本当に ああいうことしたんだろうか。 〈いちばん笑ったシーン〉 ラスト近くのヒロインのモノローグ、 「アメリカは変わった…強くなった」。 子供じゃないんだから。ま、日本も子供の 国なんだけれど、ああいう事をテレもなく 言っちゃうってのはスゴイなあ。 |
〈教えてください〉 1:ヒロインの「赤色」という色の口紅は、当時っぽくていいとは思うんです が、看護婦があんな濃い口紅をつけるもんなんでしょうか? アメリカ風俗史に くわしい方、教えてください。 2:20年代の子供が、ケンカで「ドイツ野郎!」などと言うことが、あったので しょうか? これもアメリカ風俗史にくわしい方、教えてください。 ではでは さらにドゥリットル隊の東京空襲でも、漁船改造の日本の哨戒艇が駆逐艦にな っていたり、過剰なまでに激しい日本の対空砲火など、思わず笑ってしまいまし た。やれやれ。 ドゥリットル隊の東京空襲でも、漁船改造の哨戒艇が駆逐艦のように描写され たり(100dの小舟じゃ絵にならないからだろう)、 ドイツ並みに激しい日本の 対空砲火など、内容ではなく派手さで勝負、という映画。 |