調査チームが同じ会社の人間という仲間意識からか、犯罪のキーパーソンが意
外にもスラスラと事実を暴露してゆき、極秘書類も難なく提出されている。これ
は、人生を会社に預けた会社人間だったからこそ、会社の陥落とともに、簡単に
全面降伏してくれたようにみえる。愛社精神とか、会社名に対するプライドは、
こういうところにも表れるんだ、ということを新発見したのは、カトケンがフ
リーランスの戦場野郎→バグパイパーだからで、日本人としては多数派の普通の
価値観なのだろうか。その愛社精神や社内の義理人情が、山一證券を倒産させる
組織的犯罪行為の根源ともなったわけだが。
消滅が決まっている山一の最後の調査という仕事。カトケン的には、山一證券
史上で最もおもしろい仕事の1つだと感じるが、逃げ出したい社員が多かったと
いう。こういう感覚の差異も、将来安定や給料のために働く人か、プロジェクト
の魅力に対して動く人かの違いを感じた。
本書を読んでみた動機は、山一敗残兵がメリルリンチに拾われる際の取引で、
山一側のお人よしによって、山一の最後の命綱ともいえる大切なデータベースを
ほぼ代償なしに持っていかれた件が書かれているかも、というところだったが、
それには触れられてなかった。本書では「人の山一」が良いこととして描かれて
いるが「人の山一」=「つまり、お人よし」が甘さを放任し、メリルに一方的に
食われることに。この経緯については、山一情報システム社が詳しいはず。
メリル側からすると、「山一の人間はお育ちが良いので、メリル向きではな
かった」との声もある。メリルが欲しかったのは、要はデーターベースだったの
か、それとも山一マンの性格を知らずに大量採用しちゃったのか。いずれにして
も、ハゲタカといわれ山一を食った側のメリルも楽な商売やっているわけではない。 |