ヒマヒマなんとなく感想文|

パリは燃えているか? [DVD]

(加藤健二郎 2013.12)


 時代の流れに影響力を与えられるものは、決定権ある立場の人間の決断だけで あることを示した芸術作品だ。映画の中で目立つ役にしてもらえやすい現場型 ヒーローの活躍は、歴史の大激流にはさほど影響を与えない。

 第二次世界大戦末期、ドイツ軍占領下のパリ。バリを破壊から守ったのは、勇 敢に戦ったレジスタンス闘士たちではなく「パリを破壊しない」と決断してドイ ツ軍司令官コルティッツ大将だった。パリを解放したのは、レジスタンスではな く「パリを迂回せずパリ解放にフランス部隊を向かわせる」と決めた米軍司令部 の将軍たちだ。戦闘の勝敗もほぼ決まっていた大戦末期だったからこそ、前線で 戦った英雄的兵士の活躍でパリ解放がなされたわけではなく、「部隊をパリへ送 る」と決めた将軍たちの決断で全てが決まった。ドイツ兵たちは戦意最低だっ た。レジスタンスの活躍がなくても、連合軍は難なくパリのドイツ軍を撃退した であろう。

 ドイツ軍に逮捕されていたレジスタンスリーダーの釈放作戦を失敗するシーン が映画中にはあり、個人プレイでは時代の流れを変えられないことを告げてい る。停戦に不服で戦い続ける血気盛んなレジスタンス闘士の動きが、パリ無事解 放のためには困り種になっていることを、ドイツ軍司令官と中立国領事が話し合 うシーンもある。勇敢に戦うことは自己満足でしかない。パリの歴史的瞬間の映 画なのに、出てくるフランス人がほとんど役立たずだということを正直に描ける ところが、フランスが芸術大国&外交巧妙国たるゆえんか。

 時代の大激流のベクトルが決まってしまっている激動期は、決定権のない人間 たちがいくら命を賭けてもその存在感なんてこんなものである。エンディング ロールシーンがそれをフランス芸術的に語っている。

Is Paris Burning? [DVD] [Import]


続く