ヒマヒマなんとなく感想文|

迷惑な6人が生んだ芸術作品  映画『アルゴ』

(加藤健二郎 2013.2)


映画「アルゴ」 作品としては楽しめるが、ストーリーとしては余計なことしたことへの後始末、 日本人文化的には「迷惑な6人」の話。

 イランイスラム革命直後、テヘランの米国大使館員が人質になったとき、大使 館員の中の6人が逃げ出して、カナダ大使の私邸に匿われた。その6人を救出 する作戦をモチーフにした、実話に基づいた映画。
結果から言ってしまえば、この6人が大使館から逃げ出したのは間違いだった。 逃げ出したからといって、イラン国内で大事な情報を取れたわけでもなく、米国 になにか有利な材料を引き出したわけでもない。

逆に、マイナスは大きい。
救出に向かった工作員が命を危険に曝しただけでなく、
6人を匿ったカナダ大使は危険に曝された上に強制退去となり、
カナダ大使私邸で働いていたイラン人は亡命出国するハメになった。
映画の中で、最も被害を蒙ったのは、このイラン人だ。

そして1年後に、米大使館で人質になっていた全員が問題なく解放されることに なるというオチ。6人は大人しく大使館にいればそれで済んだわけだ。つまり外 交官としては、初歩的な判断ミス。しかも、命懸けの逃走劇を覚悟したカッコイ イ行動ではなく、なんとなく逃げちゃっただけ。

大使館から逃げ出したからといって、検問の多いイラン国内を不審外国人が自由 に動けないことは、イランを2日間も旅行すれば体得できること。イラン滞在の 基本のき。
イランでは 「アメリカのスパイを捕まえた」という記念切手も出てる

まあ、プラスといえる結果としては、工作員が手柄を上げれたこと。
そして、この映画「アルゴ」が作品として生まれたこと、かな。
やはり、映画のような娯楽や芸術は、無駄な間違った行動があってこそ、マッチポンプ的に生まれるものかもね。

だが、もう1つのCIA映画「ゼロ・ダーク・サーティ」に比べると、CIAの 組織力を活かした感じに乏しく、主演の個人スキルに頼りすぎなところがハリ ウッド映画みたいでイマイチ。まあ、事実に基づいているならイマイチでも仕方ないが。


(加藤健二郎:イランは日本の次に長期間滞在した国)

続く