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映画「チェ 39歳 別れの手紙」

(2009.2 加藤健二郎)

映画「チェ 39歳 別れの手紙」
監督:スティーブン・ソダーバーグ 出演:ベニチオ・デル・トロ他

 分断され殲滅されていくゲリラ部隊を、ゲリラ部隊の内側から克明に描いた映 画は珍しいかもしれない。組織化できないゲリラの中で起こっていること、夢と 希望を見出せない苦しい戦いの現実、思想も理想もうまく伝えられず広げられな い。火力兵力で劣勢なゲリラ部隊が政府軍に打ち勝つために必要な要素とはなに だったのかを1つ1つわからせる映画だ。

 組織が崩壊してゆく過程を1つ1つ観察し勉強の材料としておくと、組織の作 り方がわかり、その手の組織にとって重要なものってなんなのかがわかる。特 に、第1部「チェ28歳の革命」と見比べてみると、ボリビアの戦いではなにが 足りなかったのかがわかりやすい。私の個人的興味としては、コンゴでゲバラが どのような失望を体感してボリビアへ転戦したのかも見たかったが、アフリカま で入ってきちゃうと、映画制作としては大変だよね。

 チェ・ゲバラを描いた映画でありながら、ゲバラを特別視せず、淡々と、現実 を描いてゲバラが滅んでゆく過程を描いている、その淡々さが、日本人の映画制 作者たちの能力ではできないであろうクールさだ。日本人が作ると、感情移入の 方向性をある一方向に強要するような作りになるような不信感が拭い去れない。

 最後に、一応、1部、2部を通して、銃器関係のことも書いておこう、東長崎 機関だし。全体的にM−1カービンが多い中、ピンポイント的に目立たせる異種 兵器がせ出てきていた。第1部では、たった1丁のベルギー製FAL自動小銃が あるのが、ゲリラ部隊の武器が充実してゆくさまを現していて印象に残った。第 2部では、イスラエル製ミニ・ウジSMGを連射しているのなどは、ゲバラ・ゲ リラ部隊の戦い方が粗雑になってきている雰囲気を出している。あの戦況でサブ マシンガンかよって。終盤戦でのM−2カービンでのいいかげんなフルオート射 撃は、もう末期症状だ。感情描写を銃の扱い方で表現するところがさすがだ。