なんとなく感想文 |送られてきたグッズ(書籍) homehome

「不肖・宮嶋のビビリアン・ナイト 上」


(加藤健二郎 2007.8)

「不肖・宮嶋のビビリアン・ナイト 上」宮島茂樹 都築事務所

不肖・宮嶋のビビリアン・ナイト 上 イラク戦争開戦直後から自衛隊イラク派遣、そして撤収まで、イラク戦争取材 をしつづけてきた不肖・宮島茂樹氏による、イラク報道ビザ取り作戦から、イラ ク突入、空爆の瞬間激写のころの体験が詳しく書かれている。ビザ取り物語が、 約140ページにもなっているところが、戦場に行きたくてしょうがない戦争屋と しては、最高にいい。同業カメラマンたちは、なんらかの方法ですでにイラク入 りしているのに宮嶋氏だけが、まだビザをゲットできていないで隣国ヨルダンに 足止めを食っていたときの心境描写、これは、戦争屋同士でないと、なかなか本 当のところを理解しあえないだろう。宮嶋氏が、私に、この本を送ってくれた気 持ちの中に、この「ビザ取り物語」の中での苦労イライラを共有できる相手と見 込んでくれたかもしれない。

 戦争取材の中で、自分はどこに身を置くかについて、つねに他の同業者の行動 が気になるものである。基本的には、「みんなのいる場所に混じろうか、それと も、自分独自取材のために単独行動すべきか」の迷いだ。宮嶋氏の、ホテルの選 び方や、その他いろいろな動き方には、そのときのリアルな描写がある。あの大 統領宮殿空爆間ショットをモノにした宮嶋氏の動きに、「なるほど、そういう理 由で、その位置を選んだのか」と、これは、なかなか勉強になる本だ。

 カトケンの「イラク戦争最前線」は、バグパッド南方のヒッラという町周辺の 戦況や、バグダッド南の浄水場における、人間の盾としての行動がかかれている のに対して、宮嶋氏の「ビビリアンナイト」では、人間の盾チームとは対立関係 にあったジャーナリストチームの位置からの描写。

カトケン本のほうでは、対立チームとなってしまった宮嶋氏との現場での会話の シーンも入れてあります、このシーン宮嶋本「ビビリアン・ナイト」のほうで は・・・・。 同じ町での同じ戦争でも、こんなに違うのかという場面もあれば、こんなところ が共通感覚だというところもある。宮嶋氏の本の魅力は、彼自身がなにを考えど う行動したかが克明であること。これは、似たような現場にいて似たようなもの を求めていたカトケンのような人間からすると、当時のバグダッドの状況が立体 的に組み立てあげられるような価値ある補完情報になる。お互いが対立チームに 身を置いていたことが、また状況描写を多角的なものにしている。

 あのバグダッド陥落戦から4年4ヶ月がたった2007年8月なのに、あのときの焦 りと興奮、そして首都陥落という青春の思い出が再燃した。

                         (加藤健二郎)