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「TONIC」MEDESKI MATRTIN & WOOD


(森川 晃 2005.10)

「TONIC」 MEDESKI MATRTIN & WOOD  Blue Note Records

 2000年の作品。いわゆるアンプラグドで、構成はピアノ、ベース、ドラムスである。もちろんベースはウッドである。楽器構成がいかにもスタンダードジャズだが、演奏はポップで、ほかの電子音楽作品と変わらない印象を与える。
 さて、MEDESKIは一体どのジャンルの音楽なのだろうか。店頭ではジャズのコーナーに置かれていたが、果たしてこれで正解だろうか。このアルバムを聴いた感じでは、モダンジャズそのもののセクションもあるが、初期のキングクリムゾンのような感じもする。ジャズをベースにした近代音楽にプログレッシブロックが注入されたような感じだ。MEDESKIを紹介してくれた友人は「プログレッシブロックだがら当方に合うはず」と言っていた。彼は音楽広範に精通していて、ときどき当方を試すようなことをする。MEDESKIは当方が頼んでもいなにのに、ほかの聴きたいとお願いした音源に黙って混ぜてきたのだ。つまり、餌である。当方はまんまとその餌に食いついてしまったのだ。先述の「プログレッシブロックだから」という発言は、当方がMEDESKIはすごいという感想に対する返事なのだ。因みに当方が聴きたいとお願いしたのはオールマンブラザースバンドである。
 ところで、坂本龍一は、クラシック、近代音楽、ジャズ、ポップス、ロック、民族音楽など多岐に渡って作品を発表しているが、すべてひっくるめて「JーPOP」のコーナーに置かれていることが多い。そもそも店頭の分類が大雑把なのだ。多くは、クラシック、ジャズ、ロック、JーPOPをベースに分けている。大型店だと、さらに民族音楽、ファンク、ハウス、ラップなどに細分化されるが、複数の分野にまたがるアーチストを捜すのは案外難しい。
 くだんの坂本龍一はYMOで著名になったため、その流れでYMOと同じジャンルとして扱われてきた。これはジェフベックにも言える。ヤードバーズからジェフベックグループ、BBAくらいまではボーカルを擁するロックだが、ソロは演奏のみである。かつて、初めてジェフベックを聴いたクラシック畑の友人に感想を聞いたら、「すばらしいジャズだ。ファンになった」と、興奮している。当方はジャズではなくリズムはロックだと説明したが、決して譲ろうとはしなかった。当方も言われてみれば、確かにジャズかもしれないと思えてきた。ロックだったころを知っていたからその流れで疑いもしなかったし、店頭でもロックのコーナーに陳列してあったのだ。
 MEDESKIは当方の中ではメジャーだが、世間ではそうではないらしい。店頭で見つけるのは希である。確実に見つかるのは「TOWER RECORD」くらいだ。ここではジャズのコーナーに陳列している。

 当方は音楽をよく聴いている方であると自負しているが、欲しい音源がなかなか店頭で見つからない。MEDESKIはなんとか店頭で見つけられるが、ハリケーンで被災したニューオーリンズ※の(現地ではメジャーな)バンドのCDを探しているが、今のところ見つからない。探している期間に上京する機会があり、いくつかめぼしいところをのぞいたが無理だった。一応、ネット販売のルートは押さえているので、その気になれば入手できるが、できれば店頭で見つけたい。これまでもどうにも見つからなくてネット販売で入手したことはあるが、何となく味気ない。単に頭が固いだけなのかもしれないが、やはり音楽はそれなりの雰囲気のある店頭で購入したい。これはある程度の歯止めになるような気がするのだ。レジで現物を見せるときに店員に「どうだ、渋いだろう」「なかなかやるじゃないか」という無言の会話をしたいのだ。「いい歳してそんなガキのCD買うのか?」という視線を受けたくない。だから、常に良いモノを選ぶ。この抑制が好きなのだ。

※ニューオーリンズ
バブル絶好調・番外編「カトリーナの被災範囲」を参照願います。