ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

環状整備と交通分散5



【さいごに】

 八戸の環状道路は理想的な配置で、市街地の既存渋滞のほとんどを解消する大
きな 効果を発揮しそうである。また、環状線の整備順も需要に応じた適切なも
のと考えら れる。内環状線が1970年代後半に整備され、それから30年を
経て、2000年 代に入り外環状線の整備が進められている。高速環状線の青
森道区間は八戸道から三 沢方面への迂回ルートとして2002年に開通した
が、2005年に三陸道区間の一 部が開通して、利用形態が変わりつつある。
 内環状線を開通させて30年間に渡り様子を見て、外環状線を必要な区間から
やは り様子を見て開通させ、高速環状線も無理のないかたちで運用を変えてい
る。「様子 を見ながら」というのが理想型なのである。どの時代にも最適であ
る完璧な都市計画 が存在するはずがない。大都市における都市計画は計画から
準備、着工、開通までに 莫大は投資が必要で、用地買収もむつかしい。そのた
め数十年を経て開通させること が常である。しかし、計画から開通までの数十
年を経ても十分な需要があるのは偶然 だったとしか思えない。やはり計画は臨
機応変に時代のニーズに合わせて流動的に変 遷していくべきものである。青函
トンネルのように工事そのものの難易度が高く、開 通したときには鉄道で北海
道に行く時代は過ぎていたという結末には同情の余地があ る。それに比べて市
街地の道路計画ならば当初計画にこだわる必然性はないだろう。

 八戸の環状道路のうち外環状線の西北部区間の進行が遅い。この区間の内側に
ある 内環状線は高規格で流れは良いし、高速環状線にも近接している。果たし
て本当に必 要な道路なのだろうか。環状線という名称にこだわり無理に周回さ
せる必要はない。 必要な区間だけを整備すれば良いのだ。当該区間は近接する
高速環状線にインターチ ェンジを追加すれば、それで十分ではないだろか。八
戸JCTと八戸北ICの間の1 3.2キロはいかにも長すぎる。都市間高速道
路の運用そのものである。都市を迂回 する環状道路ならば、少なくとも三陸道
区間くらいのピッチでインターチェンジを設 置すべきである。国道104号、
454号との交差地点への設置が適当と思われる。 もちろん、これは当該区間
が無料開放されることを前提としている。

 東京都港区の虎ノ門から汐留を経て晴海に向かう環状2号線の整備が進行して
いる ようだ。シオサイトの開発に伴い幹線道路を設置するのは仕方がないが、
それは晴海 方向だけである。高度に市街化された虎ノ門までの区間は不要だ。
この道路は環状2 号線という名称からわかるように皇居を中心にした周回道路
の内側から2番目の道路 である。おおむね外堀通りなのだが、なぜか虎ノ門か
ら外堀通りの南側を併走して汐 留に至る。この計画区間はマッカーサー道路と
も呼ばれていた。それほど古い計画な のだ。既存の外堀通りではどうしていけ
ないのだろうか。わずか2キロの一般道路建 設に1兆円かかると言われている。
 東京の道路交通は極めて複雑である。体系的には放射環状型の都市計画なのだ
が、 ほとんど整備されていない。整備されていないことにより致命的な渋滞が
発生してい る区間も多いが、それなりに合理的に治まっている区間もある。当
初計画にこだわる のはいかにも時代錯誤で無駄な行政である。
 環状道路の効果はなかなか見極めにくい。八戸のような理想的なかたちの都市
でも 「様子を見る」のだ。十分な予算が確保できないという理由が大きいとい
うのが本音 だろう。しかし、これが社会資本整備には大切な考える時間になる
のだ。いくら予算 が潤沢でも60年以上も昔の道路計画を臆面もなく着工させ
るのは果たして正しいこ となのだろうか。たとえ誰もが必要とする道路と認識
されていたとしても、古い計画 を見直す良識を持ってほしい。少なくとも環状
道路の整備計画は、八戸の交通状況の 変遷をもっと分析すれば、より効果の大
きい計画へ修正するための貴重なデータにな るはずである。

(2005年10月8日脱稿。)